2020年12月25日 06:00
弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2021年冬号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2020年12月22日
定価:本体2000円+税
エクイニクス・ジャパンは、10月19日に記者説明会を開催し、同社の事業実績や今後の方針について紹介した。後日、5月に新社長に就任した小川久仁子氏に話を聞くことができたので、その概要を紹介する。 text:柏木恵子
xScaleデータセンターへの投資とPlatform Equinixの進化
10月19日にオンラインで開催されたビジネスアップデート記者説明会で、5月にエクイニクス・ジャパンの代表取締役社長に就任した小川久仁子氏は以下の2つの取り組みを紹介した。
①xScaleデータセンターへの投資
Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureといった大手クラウドベンダー(ハイパースケーラー)の旺盛なデータセンター需要に対応するため、ハイパースケーラー向けのデータセンター「xScaleデータセンター」への投資を進めている。日本においても、東京に2カ所、大阪に1カ所のxScaleデータセンターを建設する予定で、このうち東京の1カ所目となる「TY12x」データセンターは2020年12月に、大阪の「OS2x」データセンターは2021年第4四半期にサービスを開始する予定。
図1に掲載されているハイパースケーラー企業を顧客ターゲットとして仕様をデザインしたということだ。
市場は何が起きるか分からない 予測するより対応力が重要
――ハイパースケーラー向けデータセンターを建設するということですが、データセンター市場全体をどのように見ていますか。
小川氏:2000年頃、インターネットが伸びるからコンピューティングノードが必要になるぞと、さまざまなIT企業がこぞってホスティングのデータセンターを建て始めましたが、そのうち余るようになったということがありましたよね。だから、今はハイパースケーラー向けデータセンターの建設ラッシュですが、そういうことが繰り返される可能性はあると思います。
といっても、いま私がそういう予測を立てられるほどの情報を持っているわけではありませんし、市場は日々変わります。特に今年は、日本ではコロナの影響でデジタル化が急激に加速した感があります。市場は何が起こるか分かりませんから、予測するより、その時の状況に合わせて、正しく投資するという対応能力の方が重要だと思います。英語のワードを使うと、“アジャイルな経営”ということですね。
ただ、アプリケーション開発からサービスインまでを早くしなければならないというのは本当に喫緊の課題で、それは今も昔も変わりません。かつてはデータセンターといえば自由のきくオウンドデータセンターがいいとされていましたが、今のお客様は、データセンターはコンピューティングのリソースをオンデマンドにもらえるところというイメージだと思います。これは、クラウドが登場したためでしょう。
――いまはハイパースケーラー向けデータセンターのニーズが多いということですね。
小川氏:そうですね。我々は少し早めにそういうポジショニングを出した企業のひとつだと思いますが、今年に入っていろいろな会社が発表されています。大口の大切なパートナーであるハイパースケーラーの方たちとしっかり会話しながら、これは必要ということで投資をし、サービスインにつなげていきます。
――コロケーション事業の方はいかがでしょう。コロナの影響などで大きな変化はありましたか。
小川氏:私どもがリテールと呼んでいる本業の部分は、二つに鮮明に分かれています。
一つ目は、やはりコロナ禍で在宅勤務が推進されていることの影響があります。家の中でオンラインショッピングをしたり動画配信を楽しむということが増えていますので、その部分は私どものビジネスにポジティブに影響しています。
二つ目は、コロナによってIT投資を来年に延期されるお客様もいらっしゃいます。さまざまな業界が影響を受けていますので、そのようなお客様に関しては、伸びが少し鈍化しているという感じです。
――エンタープライズ以外の、SMBや自治体などもクラウド利用が進んでくると思いますが、そちらに関してはいかがでしょうか。
小川氏:残念ながら国内ではまだまだエクイニクスの認知度を上げていく必要があると思っています。また並行して、パートナー、リセラーの方々と一緒にビジネスを推進し、お客様にエクイニクスの価値をご理解していただくことに注力しています。
ベアメタルサービス開発の背景 市場ニーズに真摯に耳を傾ける
――データセンターと共にクラウド接続を提供する事業者は他にも出てきましたが、競合他社との差別化についてはどのようにお考えですか。
小川氏:ビジネスモデル自体は、クラウド接続のPOPを置けば実現可能です。しかし、私どもは1998年から継続して投資し、世界63都市圏に227以上の拠点を持ち、それらがインターコネクションで相互につながっているというグローバルフットプリントがあります。これは、圧倒的な強みだと思いますし、競合になるような企業はないと考えています。さらに、これからネットワークエッジやベアメタルサーバの提供もポートフォリオに入ってきますから、そうなるとなおさら、比較対象にはなりにくいのではないでしょうか。
――「Equinix Metal」について、開発に至った背景などをもう少し詳しく教えてください。
小川氏:私どもの事業は、つなぐ場所の提供から始まり、最初はネットワーク事業者様がネットワークノードを置くために利用するケースがメインでした。その後、クラウド事業者様の接続をご支援させていただく中で、クラウド化を推進されているお客様がインフラのプラットフォームにPlatform Equinixを採用してくださるという流れになっています。
ただ、簡単にアプリケーションをリフト&シフトでクラウドに移行できるわけではなく、組織体力、期間、オンプレとクラウドでは必要なIT技術が違うので、技術者のスキルのギャップという問題もあります。そうすると、中間地点のようなものはないのかという背景の中で、こういうサービス作りになるのは自然な流れではないかと考えています。
いま私どもが力を入れているのは、DXを強力に進められているお客様が、いかに早くITのアジリティを享受できるかという点です。そのために、スペース&パワーとコネクションだけでなく、上位層であるコンピューティングリソースの部分も、弊社のサービスにアクセスすればソフトウェアスピードで利用できるようにする。コンフィギュレーション済みのITリソースが、数日で開発チームに渡せる、しかもグローバルに展開できる、という環境作りは、まさにDev/Opsそのものだと思っています。