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エクイニクス、分散型クラウドサービスを利用しNVIDIAのLaunchPadを国内で本格提供開始
2022年4月14日 06:15
Equinixの日本法人となるエクイニクス・ジャパン株式会社(以下、両社合わせてエクイニクス)は13日、記者会見を行い、同社が世界各国で展開しているデータセンタープラットフォーム「Platform Equinix」上で、NVIDIAがグローバルに展開する「NVIDIA LaunchPad プログラム」(以下、LaunchPad)を、国内において本格提供開始したと明らかにした。
NVIDIAのLaunchPadは、クラウド上で手軽にAIアプリケーションの開発を試みることができるプログラムで、クラウド上に構築されたNVIDIAのDGXやEGXなどのハードウエアを利用して、AIの学習、推論環境を試用できる。オンプレミスやクラウドでDGXやEGXなどを本格展開する前に、DGXやEGXなどを試す環境として利用できるわけだ。
NVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎真孝氏は「AIの普及に向けて企業はさまざまな課題に直面している。そうした時にLaunchPadを使っていただけると、エッジからクラウドまでエンドツーエンドで開発、検証をスタートでき、確信を持って導入していただける」と述べ、AIの普及にまずPoC(概念実証)を気軽に試せるLaunchPadは、日本のエンタープライズにおけるAIの導入を促進すると強調した。
データセンター事業などに加えて、デジタルサービス事業の成長を目指すエクイニクス
エクイニクス・ジャパン株式会社 代表取締役社長 小川久仁子氏は、エクイニクスの現況や日本でのビジネスの進展といった状況を説明した。エクイニクスはグローバルにデータセンターを保有し、それをリースし、近年では直接パブリッククラウドのようなサービスを行うなど、幅広いデータセンター関連の事業を行っている企業で、日本でも複数のデータセンターを所有し、さまざまなサービスを提供している。
小川氏は「従来エクイニクスはデータセンターとインターコネクションという2つのビジネスに注力してきた。近年はそれに加えてデジタルサービスを追加して、3つのビジネスのポートフォリオを拡大している。2021年には新しいデータセンターを加え、ハイパースケーラー向けのxScaleデータセンターへの投資を継続し、2021年にFortune 500に初ランクインするなど拡大を続けている」と述べ、同社のグローバルビジネスは拡大し続けていると説明した。
そうしたエクイニクスの2021年の日本でのハイライトに関して小川氏は「国内では、APACで初となるxScaleデータセンターを東京にTY12xとして開設し、大阪で2つめのIBXデータセンターとなるOS3でサービスを開始するなど、データセンターの拡充を行った。また、オプテージやキンドリルジャパンとの戦略的パートナーシップに加えて、Equinix Precision Timeなどのデジタルインフラストラクチャサービスを開始した」と述べ、日本でもデータセンターやサービスの拡充を2021年に行ったと振り返った。
エクイニクスのハイパースケーラー向けxScaleデータセンター、アジアパシフィックで最初の拠点TY12xが完成
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1313156.html
そして2022年の目標としては「デジタルサービスの成長、サステナビリティの推進、エコシステムの強化」という3つの注力分野を挙げた。
デジタルサービスの成長に関しては「顧客のペインポイントが何かを直接聞き取り調査し、目的を明確にする。PoCを推進して、マネージドサービスを提供していく」と述べ、顧客のビジネスで何が問題になっているのかなどを丁寧に聞き取り、それを解決するようなインフラを顧客と一緒になって設計し、実際に導入する前にPoC(Proof of Concept)を行うなどして、顧客のサービス導入を促進すると説明した。
またサステナビリティ(持続的成長)の観点では、再生可能エネルギーの導入が日本では100%になっていること、データセンターの消費電力を約7%削減することをすでに実現しているとのことで、PUE(Power Usage Effectiveness:データセンター全体の消費電力を、サーバーなど機器の消費電力で割った数値。1に近づけば近づくほど高効率を意味する)を2019年の1.59から、2022年には1.517に減らす目標を掲げた。
エコシステムの強化では、NVIDIAなどの“as a Services”を提供するサービスプロバイダーと協力を推進。IoT、コネクテッドカー、AIなどの普及により、企業がそのインフラを集中型から分散相互接続型に切り替えており、エクイニクスがグローバルに提供しているサービスが必要になっていると強調した。
エクイニクスのインフラ上でNVIDIAがLaunchPadを提供、大企業がAI導入前の検証に利用可能
会見の後半では、NVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎真孝氏が、NVIDIAの提供するLaunchPadについて説明を行った。今回エクイニクスとNVIDIAは、世界各国で展開しているデータセンタープラットフォーム「Platform Equinix」上でLaunchPadを国内向けに本格展開開始したことを明らかにしており、エクイニクスにとって、同社のクラウド基盤を利用して提供するサービスの代表的な事例になると強調した。
大崎氏は「NVIDIAとはいえば半導体メーカーとして知られていると思うが、実はソフトウェア事業もたくさん行っており、半導体という基盤の上にAIのソフトウェアを提供している。各産業向けにアプリケーションフレームワークを提供し、あらゆる産業でAIを導入することを助けている」と述べ、NVIDIAは、単にAIの学習や推論を行う半導体やハードウェアを提供するだけでなく、ソフトウェアを簡単に開発できる開発環境などを含めて、プラットフォームとして提供していることを強調した。
そうしたNVIDIAから日本市場を見ると、「PoCから本番環境に行くのは2~3割程度となっており、既存のITインフラにAIを統合するのは難しいのが現状だ」と指摘。現在のように、いきなり大きな投資が必要なAIのインフラを試験段階から導入するのは、企業にとってハードルが高いと指摘した。
その点、NVIDIAのLaunchPadは、グローバルに展開されているエクイニクスのデータセンターや、その上で動いているマネージドサービス上で利用できるようになっており、企業が気軽にAIの開発・検証を行えると説明した。
すでに米国などでは、エクイニクスのデータセンターなどでLaunchPadが提供されているが、2021年の11月には、グローバルに拡大されることが発表され、今回は日本でも本格展開されることが明らかになった。
大崎氏は「LaunchPadを利用することで、自然言語処理などのAI、価格予測などのデータサイエンス、Omniverseを利用したデジタルツイン、インフラ最適化などを簡単に体験できる。一定の条件を満たしている企業は申し込むだけで、無償で利用することができる」と述べ、エクイニクスのインフラ上で動いているLaunchPadを活用すると、AIの開発に向けた本格導入前の検証が低コストで行うことができると強調した。
またエクイニクスの小川氏は、別の事例として、欧州の自動車向けティアワンサプライヤーの「コンチネンタル」についても取り上げ、エクイニクスのデータセンターインフラ上でNVIDIAのDGXサーバーなどを動かし、そこにグローバルから学習データをアップロードして活用することで、AIモデルの学習にかかる時間を70%改善したと紹介した。
エクイニクスとNVIDIAによれば、LaunchPadは要件を満たす企業であれば無償で利用することが可能になっており、NVIDIAのWebサイトから申し込むことが可能だ。