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フォトシンス、キーレス社会を実現するアクセス認証基盤と新サービスを発表

新戦略推進に向けた資金調達と三井不動産との協業も

 株式会社フォトシンスは4日、新戦略となるキーレス社会を実現するためのアクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」と、新サービス「Akerun来訪管理システム」に加え、三井不動産株式会社との協業を発表した。

 また新戦略の推進に向けて、新たに総額35億円の資金調達を実施するとともに、「Akerun Access Intelligence」のイメージに合わせて、「Akerun」のサービスロゴを一新したことも発表した。

 同日に行われた記者会見では、新戦略を展開する狙いや新サービスの概要について説明した。

写真左から:フォトシンス 代表取締役社長の河瀬航大氏、三井不動産 執行役員 ビルディング本部 副本部長 兼 法人営業本部長の中村健和氏

 フォトシンスは、「つながるモノづくりで感動体験を未来に組み込む」をミッションに掲げ、2014年9月1日に創業。キーレス社会の実現を目指して、既存のドアに後付けで設置するだけで鍵をクラウド管理できる「Akerun入退室管理システム」をはじめとしたAkerunブランドのクラウド型IoTサービスを提供している。

 現在、法人向けAkerunサービスの導入企業は4500社、アカウント数は66万人を超えており、1日の鍵の開閉回数は98万回に達しているという。

 こうした実績をベースに今回、すべての鍵をクラウド化し、キーレス社会を実現するための新戦略として、アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」と新サービス「Akerun来訪管理システム」を発表。

 そして、この新戦略を推進するために、新たに総額35億円の資金調達を実施した。農林中央金庫、NTTドコモ・ベンチャーズ、三井不動産CVC(運営者:グローバル・ブレイン)、LINE Ventures、凸版印刷、BSPグループ、スクラムベンチャーズ、常陽産業研究所および既存株主であるグロービス・キャピタル・パートナーズなどを引受先とする第三者割当増資と、新生銀行、日本政策金融公庫、みずほ銀行、常陽銀行などからの融資などにより、これまで未発表だった資金調達を含めて総額35億円を調達し、これにより累計調達額は50億円となった。

 新戦略の構想について、フォトシンス 代表取締役社長の河瀬航大氏は、「現在、オフィスや自宅、車、ホテルなどの扉と鍵の関係は、N:Nになっており、一人で複数の鍵を所持・管理する必要がある。今後、ウィズコロナ/アフターコロナの新しい生活様式において、シェアリングエコノミーが加速していくなかで、鍵の数はさらに増加し、管理が煩雑になることが予想される。そこで当社では、この扉と鍵の関係をN:1に変え、ビジネスからプライベートまですべての扉を、クラウド上の1つの鍵で開けることができるキーレス社会を加速させる新戦略を展開していく。そして今回、新戦略を実現するためのアクセス認証基盤として、『Akerun Access Intelligence』をリリースする」と述べた。

フォトシンス 代表取締役社長の河瀬航大氏

 「Akerun Access Intelligence」では、ユーザーが普段使用している交通系ICカードやスマートフォン、社員証/入館証などユーザー固有の物理IDと、メールドアレスや電話番号などのデジタルIDを組み合わせた情報を「AkerunユーザーID」として登録。オフィス、ビル、ホテル、自宅など幅広い場面で活用することで、Akerunが導入されたさまざまな空間にキーレスでアクセスできる認証基盤を実現する。

「Akerun Access Intelligence」の概念図

 「具体的には、『Akerun Access Intelligence』を通じて、『AkerunユーザーID』として登録されているユーザーのメールアドレスや電話番号とひもづいたICカードに、指定のAkerunへのアクセス権限を付与できる。例えば、賃貸の申込書にメールアドレスを記載すれば『自宅の鍵』として、ホテルの予約時に電話番号を伝えれば『ホテルの鍵』として、普段持ち歩いているICカードをそのまま利用できるようになる。これにより、ユーザーは個別に物理鍵を持つ必要がなくなり、Akerunを起点とした1つのIDをさまざまな場所やシーンへのアクセス管理に活用することが可能になる」(河瀬氏)としている。

 また同社では、新戦略の発表に合わせ、提供するAkerunのサービスロゴを一新し、サービスを紹介するWebサイトや各種資料のデザインをリニューアルする。新しいサービスロゴでは、従来のサービスロゴを基調としながら、「Akerun Access Intelligence」を基盤としたインテリジェントなサービスとしてのAkerunを想起できるよう“頭脳”のデザインを追加した。さらに、Akerunでさまざまな場所や空間、シーンにアクセスする動的なイメージを、青と緑のグラデーションで表現している。

Akerunの新サービスロゴ

 このほか河瀬氏は、「Akerun Access Intelligence」を推進するための新サービスとして「Akerun来訪管理システム」をリリースし、ビルマーケットに参入する方針も明らかにした。

 「現在、主にオフィスビルなどを中心にセキュリティゲート(フラッパーゲート)や受付対応によるアクセス制御が行われているが、ゲストは受付で記入を行い、入館証を受け取る必要がある。これに対して、『Akerun来訪管理システム』では、ゲストの交通系ICカードなどを『AkerunユーザーID』として事前に登録しておくことで、メールアドレスに入館の権限付与を行うことができる。管理者は、物理的な入館証を受け渡すことなく、ゲストのICカードによるスムーズな入館受付が可能になる」という。

「Akerun来訪管理システム」の利用イメージ

 「Akerun来訪管理システム」は、既設のセキュリティゲートに後付けで導入することが可能で、「Akerun入退室管理システム」と合わせて活用することで、利用者はビルのセキュリティゲートからオフィスのエントランスまで、複数の扉に1つのICカードでアクセスできるようになる。

 またビルやオフィスの管理者は、高度なセキュリティと来訪者/利用者の入退室管理や来訪管理のデジタル化/クラウド化を実現できる。

「Akerun来訪管理システム」を導入したセキュリティゲートのデモ

 フォトシンスでは、「Akerun来訪管理システム」について、8月4日からベータカスタマーの問い合わせ受付を開始。また、三井不動産との協業により、日本橋室町三井タワーの三井不動産の新オフィスで「Akerun来訪管理システム」を活用した実証実験を実施することを発表した。

 三井不動産 執行役員 ビルディング本部 副本部長 兼 法人営業本部長の中村健和氏は、「当社では、2018年からシェアオフィス・レンタルオフィス・サービスオフィスの『ワークスタイリング』で、フォトシンスの『Akerun入退室管理システム』を活用しているほか、自社オフィスでの入退室管理にも利用するなど幅広い用途やシーンでAkerunを導入している。今回、当社が潜在課題として抱えていた、入館受付におけるユーザーID登録の作業負荷を軽減するアプローチとして『Akerun来訪管理システム』の提案を受け、新オフィスでの実証実験を開始した。この協業を機に、将来的にはオフィスに限らず、ホテル、商業、レジデンス、ロジスティクスなど多様な生活シーンに、フォトシンスの技術を展開していきたい」と述べた。

三井不動産 執行役員 ビルディング本部 副本部長 兼 法人営業本部長の中村健和氏

 今回の実証実験では、三井不動産の新オフィスの受付とセキュリティゲートに「Akerun来訪管理システム」を導入。これにより、来訪者はAkerunユーザーIDとして登録されたICカードを利用して三井不動産の新オフィスのセキュリティゲートにアクセスできるようになる。また、いつも使っている交通系ICカードや社員証などのICカードを自社オフィスの入退室だけでなく、三井不動産の新オフィスにおけるセキュリティゲートへのアクセスにも活用できるため、利便性が大幅に向上する。

 また導入する三井不動産では、来訪者の来訪/受付履歴をクラウド上の管理画面からリアルタイムで確認、参照することが可能となる。