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リコーが“脱コピー機”へ――、クラウド対応した新複合機でサブスクリプションビジネスも展開

 株式会社リコーは8日、従来は紙で行われていた業務をデジタル化したソリューション「RICOH Intelligent WorkCore」を1月23日から提供し、このソリューションを搭載した複合機「RICOH IM Cシリーズ」など、7機種16モデルを発売する。

 提供するソリューションは、グローバルの開発パートナーが開発したアプリケーションを組み合わせることで実現することから、4月にはAPIを公開してアプリ開発を推進するオープンな開発体制を実現する。

 クラウドに関してはこれまでにも複合機のクラウド対応を行ってきたが、ソフトウェアのアップデートはハードウェア買い替えで対応してきた。今回提供するRICOH IM Cシリーズでは、ユーザー自身がソフトウェアアップデートを行うことができる「RICOH Always Current Technology」を実装し、サブスクリプションで収益を獲得する。

RICOH IM C6000

 ソフトアップデートの採用でハードウェア買い替えサイクルが長期化する可能性もあるが、代表取締役 社長執行役員の山下良則氏は、「業界をあげ、一部コンサルティングも含めた新しい付加価値ビジネスを実現したい。日本では月間1万5000台、グローバルでは月間5万台の販売を目指したい」と、ビジネスモデル転換を進めることに強い意欲を見せた。

 また山下社長は、「RICOH IM Cシリーズでは、お客さまが抱える課題の壁を壊し、中小企業のお客さまのデジタル化によって業務効率向上を実現する。私自身、『コピーのリコー』という概念を乗り越えることができる製品と、自信を持ってお勧めすることができる」と述べ、“脱コピー機”となる製品だと説明した。

リコー 代表取締役 社長執行役員の山下良則氏

 会見には、テレビCMに登場している女優 吉瀬美智子さんも登場。CMではアンドロイドのLady EDWard役を演じて働き方改革を進めているが、「新CMでは招待状がキーワードとなっている。これはクラウドへの招待状と、今後開催する新製品紹介イベントへの招待という、2つの招待をキーワードとしている」と、山下社長が明らかにした。

CMに登場する女優の吉瀬美智子さん。衣装はCMで着用しているもの

RICOH IM Cシリーズとクラウドサービスを連携させて付加価値を実現

 リコーでは、RICOH IM C6000をはじめとした複合機RICOH IM Cシリーズと、リコークラウドサービスで構成されたソリューション「RICOH Intelligent WorkCore」を中核として事業を進める。

 日本の中小企業ユーザーは紙を使った社内業務が多く、それを活用する際、電子データと融合することができない。また、業務ごとにアプリケーションなどが異なっているため、連携ができないなど業務ごとに分断されている。取引先など企業間にも壁があり、作業効率が低下する原因となっている。

 リコーではクラウドを利用することで、こうした課題や壁を壊すきっかけとなり、業務効率があがると利用者にアピールしていく。そのために、従来とは異なる特徴をもった製品、ソリューションを提供する。

デジタルワークプレイスを阻害する3つの“壁”
ソリューションの中核となるRICOH Intelligent WorkCore

 国内の販売を請け負うリコージャパンの代表取締役 社長執行役員 坂主智弘氏は、「これまでファームウェアのアップデートはハードウェアの新製品販売で提供してきたが、今回から無償・有償はあるものの、ソフトウェアアップデートを提供し続ける。業界では初めてとなる特徴的なサービス」と説明した。

 さらに複合機とクラウドサービスを利用することで、FAXなど、紙を使って行われている業務のデータをデジタルデータに変換・加工し、会計などのアプリケーション、ストレージサービス、CRMなどと連携できるようにする。

リコージャパンの代表取締役 社長執行役員 坂主智弘氏
ソフトウェアアップデートにより継続的に機能の強化を図るという
複合機とさまざまなクラウドサービスをつなぎ、紙からデジタルデータへの変換・加工を可能にする

 ただし生産性向上を実現するためには、さまざまな業種や業務に利用するアプリケーションが不可欠となるが、まずリコージャパンが業種別に業務全体のフローをとらえ、製品にサービスとサポートを組み合わせた「スクラムパッケージ」を組み合わせて提供する。現段階では、製造業のケースでは合計で13の課題解決パックを提供するなど、7業種、3業務で合計92パックが用意されている。

 例えば、請求書業務効率化パックでは、複合機で請求書をスキャンし、請求データを利用する業務アプリケーションに自動入力する仕組みを提供可能だ。従来は、郵便で届いた請求書を手作業でパソコンに登録。さらに業務部門が会計システムなどに入力し、紙に出力した上でファイリングする、といった作業を行っていたが、自動化の仕組みを導入することで、かなりの生産性向上を実現するという。

スクラムパッケージを提供
請求書業務効率化パックでの省力化イメージ

 また品質管理文書保存パックでは、複合機で作業指示書と図面をスキャンすると、添付されたバーコードを読み取って自動でファイル名を作業指示書に設定し、BOXやOneDrive、Dropboxといったストレージサービスにアップロードしてくれる。これを利用することで、会社外からも作業指示書を閲覧・利用することが可能となるわけだ。

 「これまで複写機を売ってきたセールス網にRICOH Intelligent WorkCoreが加わることで、さらなる業務の自動化、省力化が実現する。こうした仕組みによって、現在、多くの企業が抱えている人材不足問題を緩和。生産性向上が実現する」(リコージャパン 坂主社長)。

 さらに顧客に合わせたアプリケーションを増やしていくために、開発パートナーとの連携を強化する。これまではパートナー自身がデバイスの動作検証などを行う必要があったが、今後はその必要がなくなるという。

 またパートナー企業は、自社アプリケーションの付加価値向上を実現できるようになるとのこと。リコージャパンでは、短納期で簡単にエッジ・デバイスが利用できるようになり、一度対応すると複合機以外のエッジデバイスでも利用可能となるなどのメリットがあると説明している。

 現段階では、会計など業務アプリケーションではOBC、OSK、PCA、応研などが、CRMではサイボウズなどが対応しているが、さらにパートナーを増やしてアプリケーションを増加させるとしており、現在83のアプリケーションを今年度中に100以上とする計画だ。

 なお、こうした新施策に対しては「デジタル化を推進することで、紙への出力機会が少なくなり、複合機の利用場面が減るのでは?」といった質問や、「ハードウェアの利用期間が長引くのではないか?」といった質問が飛んだ。

 リコーの山下社長はこうした声に対し、「これまでリコーのソリューションはオフィス内にとどまっていたが、業務が行われているのはオフィス内だけでなく、現場、さらに社会など拡大している。複合機だけでなく、THETAのようなエッジデバイスで情報をとらえていく必要がある」と、複合機以外のエッジ・デバイスの強化していく可能性を示唆した。

 買い替えサイクル長期化に対しては、「利用するアプリケーションによってCPU負荷が高まるなど、従来とは異なる買い替えニーズが出てくるのではないか」と新たなサイクルとなる見込みだと回答している。