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日立、2025年度上期連結業績は増収増益 DX事業の拡大により国内IT事業が堅調に推移

 株式会社日立製作所(以下、日立)は30日、2025年度上期(2025年4月~9月)の連結業績を発表した。それによると、売上収益は前年同期比5.3%増の4兆7874億円、調整後営業利益は同25.5%増の5080億円、Adjusted EBITAは同21.5%増の5618億円、税引前当期利益は同54.8%増の6801億円、当期純利益は同61.8%増の4728億円と、増収増益となった。

 また、第2四半期(2025年7月~9月)の売上収益は、前年同期比8%増の2兆5290億円、Adjusted EBITAは前年同期から862億円増の3242億円、Adjusted EBITA率は12.8%、当期純利益は前年同期から1637億円増の2806億円となった。

業績ハイライト
Q2 FY2025 Highlights

 日立 執行役専務 CFOの加藤知巳氏は、「第2四半期は、継続的に好調を維持しているエナジーのパワーグリッド事業に加えて、DX事業の拡大によって国内IT事業が堅調に成長し、増収増益となった。Adjusted EBITAは、第2四半期としては過去最高を達成した」と総括した。

日立 執行役専務 CFOの加藤知巳氏

 なお、空調事業については、JCH(Johnson Controls-Hitachi Air Conditioning Holding (UK) Ltd)が持つ株式をボッシュに譲渡し、上期において1549億円の事業再編等利益を計上した。業務用空調の基幹拠点である清水事業所を取得し、冷却技術などを生かして、Lumada 3.0を体現するHMAXソリューションを創出することで、グリーンビルディングやデータセンターなどの成長市場への展開を加速するという。

 Lumada事業の第2四半期の実績は、売上収益が前年同期比47%増の1兆550億円となり、全社売上収益に占める割合は42%、Adjusted EBITA率は12.8%となっている。

 Lumadaの売上収益の内訳は、デジタルサービスが前年同期比37.4%増の4670億円、デジタライズドアセットが同54.7%増の5880億円となった。

 Lumada事業のセクター別売上収益は、デジタルシステム&サービス(DSS)が前年同期比44%増の4390億円で、Lumada事業比率が62%。コネクティブインダストリーズが同23%増の3410億円で、Lumada事業比率が42%。エナジーは前年同期比147%増の1750億円で、Lumada事業比率が23%。モビリティは前年同期比52%増の1000億円で、Lumada事業比率が33%となった。

Lumada事業の概況

 Lumadaの拡大に向けて、デジタルサービスの強化や、Physical AIの実装加速に向けた成長投資を加速し、それらをモビリティ、DSS、エナジーの各セクターで実行。デジタルとサービスに関連したケイパビリティを強化したという。

 AIエコシステムの拡大に向けては、パートナーとの連携を強化。NVIDIAとは、Physical AIソリューション開発環境向けに「NVIDIA AI Factory」を立ち上げ、HMAXのユースケースを拡大。Google Cloudとは、Gemini EnterpriseのOT領域への適用や、AIエージェントのノーコード開発によるフロントラインワーカー業務の変革に着手したほか、OpenAIとは、次世代AIインフラの構築や、OpenAI技術の活用に関する戦略的パートナーシップを結んだ。

 また、ソリューション開発では、自らを最初の顧客とする「カスタマゼロ」のアプローチを推進し、次世代AIエージェント「Naivy」を活用し、現場の安全性を高めることができる危険予知支援システムの開発や、「HMAX for Building : BuilMirai」AI Safetyソリューションの開発などの成果が出ているという。

Lumada事業の拡大に向けた施策

セクター別の業績

 第2四半期のセクター別業績は、DSSの売上収益が前年同期比4%増の7088億円、Adjusted EBITAは195億円増の1099億円となった。そのうちフロントビジネスの売上収益は同7%増の3142億円、Adjusted EBITAは147億円増の473億円。ITサービスは同5%増の2741億円、Adjusted EBITAは25億円増の361億円。サービス&プラットフォームは同3%減の2602億円、Adjusted EBITAは62億円増の283億円となった。

 「第2四半期は、国内IT事業が堅調に伸びる一方、海外事業は欧米顧客の投資抑制によって、ストレージ事業が減収だった。だが、コスト削減効果で収益性は改善している。その結果、売上収益、利益は第2四半期では過去最高を更新した」という。

 また、フロントビジネスでは、国内DXおよびモダナイゼーション案件が堅調であり、第2四半期では過去最高の売上収益とAdjusted EBITAを達成。また、ストレージ事業では、今後高い成長を遂げているブロックストレージに注力する考えを示した。

DSSセグメントの概況

 GlobalLogicの第2四半期の売上収益は、前年同期比2%増の5億300万ドルとなった。

 米国市場での投資抑制が続いているが、稼働率の向上によって収益性を改善。各セクターとのシナジー創出も続いているという。今後はAIによる高付加価値サービス事業を強化し、前年度と同等水準の利益を維持する計画だという。

 「GlobalLogicの重点施策は、AIサービスを提供するための技術力を強化するとともに、顧客と各セクター向けにAIの実装を支援し、Lumada事業の拡大に貢献することである。独synvertの買収により、データアドバイザリーや、データ基盤の設計および構築の強みを生かすことができ、データバリューチェーンのケイパビリティを強化できる。Agentic AIや、Physical AIのソリューション開発を強化し、HMAXの展開にも貢献することになる」と述べた。

 また、GlobalLogic単体の売上収益に、他セクターでのシナジー創出の成果を加えると、第2四半期の売上収益は前年同期比17%増の10億5300万ドルとなる。「シナジーを拡大することで、One Hitachiによって、『Lumada 80-20』の実現に向けた施策を推進していくことになる」と語った。

 DSS以外のセクター別の第2四半期業績、エナジーの売上収益が前年同期比27%増の7508億円、Adjusted EBITAは500億円増の942億円。モビリティの売上収益は前年同期比6%増の3002億円、Adjusted EBITAは9億円増の190億円。コネクティブインダストリーズの売上収益は前年並の8054億円、Adjusted EBITAは158億円増の999億円となった。

 第2四半期の受注状況についても説明した。DSSは前年同期比6%増の6862億円。そのうち、フロントビジネスは同13%減の2839億円、ITサービスは同3%増の2767億円、サービス&プラットフォームは同3%減の2662億円となった。また、エナジーは同13%増の1兆651億円。モビリティは同67%減の2385億円、コネクティブインダストリーズは同2%増の8343億円となった。

セグメント別受注高

2025年度通期業績見通しを上方修正

 一方、日立製作所では、2025年度(2025年4月~2026年3月)通期業績見通しを上方修正した。

 売上収益は前回見通しより2000億円増加した前年比5.3%増の10兆3000億円、Adjusted EBITAは前回見通しより1000億円増加した前年比11.7%増の1兆2100億円、当期純利益は前回見通しより400億円増加した前年比21.8%増の7500億円とした。

 「パワーグリッド事業が好調なエナジーに加えて、モビリティやコネクティブインダストリーズも上方修正した結果、日立グループ全体としても、売上収益、利益、キャッシュフロー、ROICを上方修正した。戦略投資の増額や、米国関税の影響を織り込んでも、エナジー、DSS、モビリティの成長により増収増益の見通しである」と述べた。

通期の業績見通しを上方修正

 DSSは、欧米顧客の投資抑制の継続などにより、売上収益は700億円下方修正したが、ストレージ事業の構造改革や、AIエージェントを活用したコスト削減の推進などにより、Adjusted EBITAは当初見通しを維持するという。

 また、「事業悪化リスクと関税の影響などの一部を見直した。特に、事業悪化リスクは全額を払い出した」としている。