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リコーとシスコ、次世代複合機のセキュリティ強化で戦略的提携

 株式会社リコーとシスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は26日、リコーの複合機「RICOH IM Cシリーズ」と、シスコ製セキュリティソリューションのセット提供で協業すると発表した。

 RICOH IM Cシリーズは、ユーザー自身がソフトウェアアップデートを行い、アプリケーションをインストールできるなど、複合機でありながらサーバー的機能を持つ。こうした製品を利用する上ではセキュリティ対策が不可欠となるが、ユーザー自身で必要なセキュリティを選び、搭載できるユーザーばかりではないとの観点から、シスコの製品を使いやすい形態にパッケージし、セキュリティ機能を提供する。

戦略的商品のRICOH IM Cシリーズ。「つながる」デジタルワークプレイスを実現する
RICOH IM Cシリーズの実機とシスコのアクセスポイント

 リコー 代表執行役員 社長執行役員の山下良則氏は、「もはや複合機はエッジデバイスとなっているが、従来通りコピー機と思って利用しているお客さまには、パッケージングした使いやすいセキュリティを提供する必要がある」と説明。

株式会社リコー 代表取締役 社長執行役員 CEOの山下良則氏

 一方、シスコ 代表執行役員社長のデイヴ・ウエスト氏は、「中小企業にはターンキー型のソリューションが必要。その考え方を実現するのが今回の製品」と話している。

 販売は4月から開始するが、初めての取り組みとなることから、当初は試験的な販売を行う考え。すでにユーザー自身が何らかのセキュリティ製品を利用している場合のインテグレーションなど、どんな課題が出てくるのかを精査して、9月から本格的な販売を開始する計画だ。

 「2年後には、グローバルで100億円くらいの売上まで持って行きたい」(リコーの山下社長)。

3つのケースを想定

 リコーでは2019年春から、ソフトやサービスを提供する企業と、複合機を連携するためのパートナープログラム「RICOH Smart Integrationパートナープログラム」を実施する予定で、今回のシスコとの協業はその先駆けとなる。

 セキュリティに関しては、大手企業であっても支店や支社、店舗などで人材が不足しているケースは多く、また、そもそもIT管理者がいない中小企業などのように、セキュリティ対策が必要とは理解していても、どのような対策をとっていいのかわからない、といったケースも多い。

 そこで、「リコー製品を利用されているお客さまに、さらなる安心、安全を実現するため、シスコとのクラウドセキュリティソリューション連携を実現する」(リコー 執行役員 プラットフォーム統括本部長 野水泰之氏)という。

リコー 執行役員 プラットフォーム統括本部長 野水泰之氏

 具体的には、次の3つのケースを想定している。

レイヤ1:クラウドセキュリティ「安心クラウド保管ソリューション」

個人事業主であっても機密文書を扱うことが多く、内容に応じて保存するフォルダーを変更するなどの作業に時間がかかり、間違いが多い利用者を想定したケース。

複合機から外部クラウドストレージにデータを保存し、これまで紙の資料をスキャンするためにかかっていた時間を削減するとともに、機密文書に対してキーワード検知機能を利用し、自動で共有設定を変更したり、メールアラートを行ったりすることで、人為的ミス軽減につなげる。

安心クラウド保管ソリューション
レイヤ2:ネットワークセキュリティ「簡単ネットワーク設定ソリューション」

グローバルに店舗を持つアパレル企業で、本社にはIT部門はあるものの、店舗ではサポート役のIT部門が不在であるケースを想定。店舗ごとに、開店や運用変更時に必要となるネットワーク構築に時間がかかり、設定ミスが発生。セキュリティ対策の管理・監視に時間がかかるという課題もある。

こうした場合にシスコの「Meraki Cloud」を活用し、複数拠点のネットワーク一括設定を実施。ネットワーク構築負荷の低減と設定ミス削減を実現する。また、共通ダッシュボードでさまざまな機器の管理状況を一覧で確認できるようにするなど、一元管理によって、管理にかかる時間を削減する。

簡単ネットワーク設定ソリューション
レイヤ3:デバイスセキュリティ「安全デバイス接続ソリューション」

大手建設業が複数の社内デバイスの管理に苦慮しているケースを想定。工事現場や支店では管理されていない私物のデバイスが社内ネットワークに接続されている上、企業で支給するデバイスを導入する際には手作業で情報を入力するために時間がかかることがネックとなっていた。

この環境においてシスコのIdentity Services Engineとリコーのデバイス管理システムRICOH Streamline NXを活用することにより、ネットワーク接続されるデバイスの自動検知が可能となり、不正デバイスについてはアクセス遮断を行う。自動検知された機器情報をシステムと同期し、新規機器情報の自動追加を行うことで、登録作業にかかる時間を削減する。

安全デバイス接続ソリューション

 今回例として挙がったのはこの3つだが、「セキュリティリスクは多岐にわたることから、この3つにとどまらずさらなる共同ソリューションの開発も行う」(野水氏)ことも計画している。

 また、顧客にすでに何らかのセキュリティソリューションが導入されている場合には、それらとどのように統合していくのかなど、導入現場で新たな課題が発生することが想定されるため、「当初は4月に販売を開始することを想定していたが、実際に現場でどんな課題があるのか、試験導入期間を設け、その後9月からの本格販売を想定している」(山下氏)という。

今後の予定

 なお、今回の提携以前もリコーではシスコ製品の販売を行っていたが、提携を前に、2年前に山下氏が米国のCisco本社を訪ねたことが今回の提携の発端となったとのこと。Cisco側でも、複合機1500台をリコー製品に刷新したという。

リコーの山下良則社長(左)と、米Cisco エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高財務責任者のケリー・クレイマー氏(右)
関係者による記念撮影