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NTT西日本、日本マイクロソフトと協業し自治体システムのクラウド化を支援

 西日本電信電話株式会社(NTT西日本)と日本マイクロソフト株式会社は8日、NTT西日本が策定した“地域創生クラウド”実現に向け、自治体向けクラウドサービス基盤の導入・展開において協業すると発表した。今後5年間の自治体向けクラウド事業で1000億円の売上を目指すという。

 2018年6月、政府情報システムを整備する際に、クラウドサービスの利用を第一候補とする「クラウド・バイ・デフォルト原則」が政府の基本方針として発表された。

 しかし「自治体では情報通信専門職員の不足、東京や大阪にデータセンターが集中していることから、地方自治体のデータ保管場所制限にまつわる問題などが課題となっている」と、NTT西日本の代表取締役社長 小林充佳氏は指摘する。

NTT西日本の代表取締役社長 小林充佳氏

 そこで自治体がクラウド活用する際、ワンストップでの相談先となるサービスをNTT西日本が提供。日本マイクロソフトと協業することで、最先端技術を提供する体制を整える。

 将来的には、有力なパートナー企業、地域の企業と連携し、クラウドを活用した新サービス提供、クラウド活用による起業の促進など、地域創生につながるクラウド活用を目指していくとした。

クラウド活用に関するワンストップの相談先を自治体に提供する
今回の協業内容

Azure StackとNTT西日本のデータセンターを活用

 地方自治体が保有するシステムの中には、戸籍情報のように、データの保管場所が県内に特定される運用が求められるものも存在するという。

 そこで今回の協業では、パブリッククラウドであるMicrosoft Azureと同様の技術をオンプレミスで利用できる「Azure Stack」環境を、NTT西日本の地域データセンターに構築。機密データの保管場所をその地域に限定するとともに、低遅延で提供する。

 NTT西日本では、西日本エリアの各都道府県に1カ所以上のデータセンターを持つ。また、各データセンターに利用されているビルは、耐震性を備えるとともに、生体認証などを活用した高いセキュリティ機能を装備している。こうした拠点にAzure Stackを設置することで、地域に根ざした運用を実現するとした。

 さらに、利用しているアプリケーションによってMicrosoft AzureとAzure Stackを使い分け、コストを最適化する。

NTT西日本の地域データセンターへAzure Stackを導入。Microsoft Azureと組み合わせたハイブリッドクラウド環境を利用する

 日本マイクロソフト 執行役員常務 パブリックセクター事業本部長の佐藤知成氏は、「これまで独自のオンプレミスシステムを運用してきた自治体が、一気にクラウドへの移行を進めるのは難しい側面もある。そこで、最新技術を活用しながら段階的にクラウド移行を進めてもらうよう、Azure Stackを提供する」と、今回のシステム構築の狙いを説明する。

日本マイクロソフト 執行役員常務 パブリックセクター事業本部長の佐藤知成氏

 なおNTT西日本の小林社長は、「今年6月の社長着任以来、地域を元気にするお手伝いをさせていただきたいと申し上げてきた。地方が抱える労働力不足、生産性の向上、売上とビジネスの拡大、快適なオフィスの実現、セキュリティや個人情報保護、安心安全な住環境の実現、環境・エネルギー対策などの課題に対し、風邪薬とまではいかないが、調子がよくなるようなサポートを行う、地域にとってのビタミンのような存在になれたらいいと考えてきた」と話す。

 今回の“地域創生クラウド”は、これを具現化するもので、「将来的には自治体、地方の企業が提供するデータを活用していくことで、地域版データ流通を実現し、地域経済の活性化や、ほかの地域の企業とデータ連携なども実現していきたい」(小林社長)と、デジタル化による新たなビジネス構築にも意欲を見せる。

地域創生クラウド構想

 これに対し日本マイクロソフトでは、海外でのハイブリッドクラウドの構築・導入・運用などのノウハウに基づいた情報提供、技術支援なども行っていく考えを示した。

地域のパートナー企業各社も参加へ

 また自治体アプリケーションは、ネットワーク、クラウド基盤、アプリケーションを含めて、すべてが安定的に運用されることはもちろん、また故障時の切り分け、復旧などを含めた、トータルかつきめ細やかな対応が求められる。

 このため、これまで地方自治体の保有するハードウェア環境で各種アプリケーションを提供してきた地域パートナー企業各社にも。積極的な参加、協力を呼び掛ける。今回の記者発表会にも、鳥取県の株式会社鳥取情報センター、愛知県のトーテックアメニティ株式会社の2社が参加した。

 鳥取情報センターでは、「2010年9月、NTT西日本のデータセンターを使った地方自治体向けクラウドの提供を行ってきた。これまでコスト、セキュリティへの配慮から思い切ったことができないジレンマがあったが、今回の協業でそれを解決することができるのではないかと期待している」(鳥取情報センター 代表取締役社長の湊正彦氏)と話す。

 一方トーテックアメニティは、「東海地域でNTT西日本と共用し、自治体の基幹システム、住民情報システム、税務システムなどを提供してきた。今回、両社の強みを生かした協業が実現できるのではないかと期待している」(トーテックアメニティ 代表取締役社長 坂井幸治氏)と、自社の強みを生かす場面にもなるとしている。

 もちろん両社でも、こうしたパートナー企業への支援を提供する。日本マイクロソフトでは、パートナー企業へのクラウド人材育成プログラムの無償提供を行うなど、自治体向けソリューション開発・提供を支援し、今後1年間に住民支援サービスなど、50のパートナーソリューション開発を目指していく。

左から、鳥取情報センターの湊正彦社長、NTT西日本の小林充佳社長、日本マイクロソフトの佐藤知成執行役員常務、トーテックアメニティの坂井幸治社長