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日本マイクロソフト、ハイブリッドクラウドソリューション「Azure Stack」を国内で本格展開

クラウド未導入層へのアプローチにも利用

 日本マイクロソフト株式会社は28日、ハイブリッドクラウドソリューション「Microsoft Azure Stack」に関する記者説明会を開催した。

 Azure Stackは、自社内などにハードウェアを置きながら、クラウドサービスであるMicrosoft Azureと同様のサービスを利用できるソリューション。2017年7月、米国で開催されたMicrosoftのイベントで発表されていた。

 日本でもすでに提供は開始されていたが、今回、対応ハードウェアメーカー6社、対応ISV15社、対応マネージドサービスプロバイダ4社、対応システムインテグレータ21社がそろい、すぐに利用できる準備が整ったことをアピールしている。

 想定される利用シーンとしては、政府や官公庁、金融など、社内にサーバーを置かなければいけない規制があるユーザーでの利用や、船上のように、容易にネットワークへアクセスできないエッジでの利用などがあるという。

 さらに、「オンプレミスとクラウドをどう使い分けるかを検討中のお客さまに利用していただき、資産の棚卸しをする際に用いる、といったことも想定されている」(日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズビジネス本部 本部長の浅野智氏)としており、今後、本格的にクラウド活用を検討するようなユーザー層もターゲットとしている。

日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズビジネス本部 本部長の浅野智氏

 具体的な獲得目標ユーザー数は明らかにしていないが。「クラウド利用が増えたといっても、オンプレミスが7割、クラウド利用企業は3割といった程度。7割のクラウドを利用していないユーザー層がクラウドを利用するきっかけにしてほしい」(浅野氏)と説明している。

Azure StackはAzureの拡張機能

 Azure StackはAzureの拡張機能として、ユーザー側のデータセンター内にハードウェアを設置しながら、AzureサービスのIaaSおよびPaaS機能、ネットワークコントローラ、ロードバランサーなどのサービス群を利用できるものだ。

 特徴としては、Active Directory(AD)との共通IDであるAzure Active Directoryにより、オンプレミスからAzureをシームレスに利用できる点が挙げられるという

 管理面では、クラウドのMicrosoft Azureとオンプレミスのインフラを統合して管理できるほか、データについても、オンプレミスのSQL ServerとAzureデータサービスによって、一貫性のあるデータプラットフォームを提供する。

 最も特徴的なのは開発環境で、Azure StackとMicrosoft Azureとのハイブリッド環境で、アプリケーションの一貫性が保たれているとのこと。

 オンプレミス、クラウドのどちらでアプリケーションを実行しても、同一の方法でアプリケーションの開発、展開を行うことができる。ハイブリッドクラウドのDevOps環境を実現している。

 「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)との最大の違いが、このアプリケーション開発部分だ。クラウド、オンプレミスのどちらでも動くアプリの開発基盤として利用できるので、クラウドかオンプレミスか検討中の企業でも活用できる」(浅野氏)とした。

 こうした特長を生かした使い方として、単純な仮想化の置き換え用に利用するのではなく、オンプレミス、クラウドの一貫してハイブリッドプラットフォームとしての利用を推奨する。

真に一貫性のあるハイブリッドクラウドを提供できるという
Azure Stackの正確な位置付け

 また、インフラ構築にあたってはDIYでユーザー自身が設定するのではなく、Microsoft Azureで提供されているのと同様のIaaS、PaaSを利用することになる。Microsoft Azureとの一貫性を保つために定期的な更新も必要とされ、更新なしに使い続ける使い方は想定していない。

Azure Stack搭載システム

 想定されるユーザー層としては、まずエッジソリューションとしての利用が挙げられる。米国では、常時ネットワークに接続することができない軍艦において、状況分析などを行うために利用し、陸に上がった際にネットワークへ接続している例があるという。

 ほかにも映像、音声を扱うテレビ局など、データ容量が多い業種で導入されているとのこと。この場合は、現場で分析を行った後の必要なもののみ送信する、といった利用法になっているとした。

 次の用途としては、金融、政府/自治体など、クラウドサービスに魅力は感じるものの、サーバーを置く場所を法律などで制限されているケースがある。

 さらに、オンプレミスとクラウドのどちらを主流としていくのか、現段階では迷っているようなユーザー層も見込んでいる。マイクロソフトでは、これまではクラウドを使ってこなかった層に対して訴求することにより、Microsoft Azureの新規ユーザー獲得の機会になるとして期待しているという。

想定する利用シーン

 なお記者説明会には、すでにAzure Stack採用を表明している三菱日立パワーシステムズ、三井情報(MKI)の2社が登場し、採用を決定した理由を説明した。

 三菱日立パワーシステムズは、火力発電のガスタービンを提供し、「分析、監視といったサービスを提供することで他社との差別化を実現している」(三菱日立パワーシステムズ デジタルInnovation総括部IT戦略企画部 部長の田崎陽一氏)。

 同社はIT基盤としてクラウドのMicrosoft Azureを採用しているが、「国によっては、他国のデータセンターを利用することが認められていないケースがあるが、その国にデータセンターがない場合、オンプレミスで似たようなことができないのか?という声が上がっていた。そんな時にAzure Stackが提供されることを聞き、現在、導入に向けた検証を進めている」(三菱日立パワーシステムズ デジタルイノベーション統括部IT戦略企画部 主席の石垣博康氏)という。

左から、三菱日立パワーシステムズ デジタルInnovation総括部IT戦略企画部 部長の田崎陽一氏、デジタルイノベーション統括部IT戦略企画部 主席の石垣博康氏
三菱日立パワーシステムズのサービス概要図

 一方のMKIでは、「ビジネスを行っている世界各地の様子を、会社内から見守るソリューションのインフラとして、Microsoft Azureを採用した。画像、音声といったデータは容量が大きいことから、すべてのデータを送るのではなく、現場で分析を行って、膨大なデータの中から、必要なデータのみをクラウドにアップロードしている。今回、Azure Stackで、Microsoft Azureで動かしていたアプリをそのまま動かすことができた。また、Azureにシングルサインオンして、シームレスにAzure Stackからでもロケーションの様子を視聴できる点も利便性が高いと感じた」(MKI デジタルトランスフォーメーションセンター R&D部 研究開発室 室長 青木賢太郎氏)と話している。

MKI デジタルトランスフォーメーションセンター R&D部 研究開発室 室長 青木賢太郎氏
MKIが提供するサービスのシステム構成図