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NSSOLがインフラビジネス戦略を説明、「適切なIT基盤を運用サービスまで一貫して提供」

 新日鉄住金ソリューションズ株式会社(以下、NSSOL)は15日、クラウドを軸にした同社のインフラビジネス戦略について説明。「マネージドクラウドサービスのabsonneは、2020年を目標にマルチクラウドサービスへと進化させ、これをabsonne 3.0に位置付ける」などとした。

 また、absonneを中核に据える包括的ITアウトソーシングサービス「NSFITOS(エヌエスフィットス)」の強化や、次世代運用サービス「emerald(エメラルド)」の提供を通じて、「マルチクラウドインテグレータ&サービサーとして、利用用途に応じた適切なIT基盤を、運用サービスまで一貫して提供していくことになる」(新日鉄住金ソリューションズ 取締役常務執行役員 ITインフラソリューション事業本部長の大城卓氏)としている。

NSSOL 取締役常務執行役員 ITインフラソリューション事業本部の大城卓氏
NSSOLが提供するインフラ環境

ユーザー視点を持つ“ベンダーニュートラルな企業”

 NSSOLは、1987年に発足した新日本製鐵株式会社(以下、新日鉄)のエレクトロニクス・情報通信事業本部と、1988年に設立された新日鉄情報通信システム株式会社が母体で、新日鉄の生産管理システムの構築、運用を皮切りに、ミッションクリティカル環境でのIT基盤を提供してきた実績を持つ。

 同社は、2001年に新日鉄ソリューションズ株式会社となった後、新日鐵住金株式会社(以下、新日鉄住金)の発足にあわせ、2012年からは現在の社名で事業を行ってきたが、2019年4月には親会社の新日鉄住金が日本製鉄へと社名を変更するため、それにあわせて、日鉄ソリューションズに社名を変更する予定だ。

 「新日鉄は、世界で初めてIBMのオンラインシステムを導入しており、当社は鉄鋼業界で培った先行技術を活用する企業として、約半世紀に渡ってノウハウを蓄積している。独自の研究開発部門を持つこと、独自のスタンダード技術の確立などの技術的優位性を持つことに加えて、ユーザー視点でのベンダーニュートラルな企業であることが特徴である」とした。

事業のルーツ

 ミッションクリティカル環境での構築、運用実績のほか、データセンターでは、東京・三鷹の東京リージョンと、福岡県北九州の北九州データセンターを設置。運用管理を行うITOセンターを、各データセンターから徒歩5~10分の距離に設置し、同一環境で相互に監視できるようにしており、BCPやDR、セキュリティ対応など、管理までを含めた一貫したITインフラを提供しているのが特徴だという。

 NSSOLの2017年度売上高は2442億円。そのうち、ITインフラ事業および公共公益向けITインフラは約2分の1を占め、「売り上げ規模の拡大をITインフラビジネスが下支えしている」という。

 また、研究開発に投資にも積極的で、システム研究開発センターでは、3年後の事業への貢献を目標に研究開発を継続的に行っており、「2005年に、グリッド・ユーティリティ検証センターのNSGUC(NS Grid/Utility Computing Center)を設立し、クラウドという言葉が使われる前から、計算機を所有する時代から必要な分だけを利用する時代へのシフトや、アプリケーションを作る時代から利用する時代への移行を予測していた」とする。

全社売上に占めるITインフラの割合
ITインフラビジネスの特長

absonneを中核としたサービスを提供

 マネージドクラウドサービスのabsonne(アブソンヌ)は、2007年から提供を開始し、2018年で11年目に入る。

 2010年代に入ってからは、absonne上でのサービスを拡大。2011年には仮想デスクトップサービスの「M3DaaS@absonne」、2013年には電子契約サービスの「CONTRACTHUB(コントラクトハブ)@absonne」の提供を開始している。

absonneとは

 また、金融機関向け「FINCHUB(フィンチューブ)@absonne」などのサービス型ソリューションの拡販にも力を注いでいるという。

 absonneは、2010年度以降、年平均成長率は27%と高い成長率を実現しているが、「今後も25%増での成長を維持していきたい」と、事業成長に意欲をみせた。

 現在、absonneにおける物理サーバーは2000台、仮想サーバーは5000台、ストレージ容量は5.5PB、セルフポータル・ジョブ数は年間2万1000回、運用SEは50人というシステム規模で運用している。横河電機、大東建託、YAMAHA、商船三井、ローソンなどが、統合基盤やハイブリッドクラウド環境で、absonneを活用しているという。

 ローソンでは、Amazon Web Services(AWS)を中核システムとして活用する一方で、absonneを併用。マルチクラウドを活用したITインフラの最適化により、クラウド移行コストと運用管理コストを大幅に削減することができたという。

absonneの実績
ローソンの事例

 「absonneは、クラウドの実現を目指したのではなく、企業のITインフラのあり方とテクノロジーの変化をとらえ、あるべき姿を追求したものであり、自ら実証実験の環境を持ち、顧客の声を反映しながら、数々の検証を実施してきた。その結果がクラウドであり、ミッションクリティカル環境に最適な運用サービスまでを包含したIT基盤を提供できることにつながっている。クラウドにシステムをあわせるのでなく、システムにクラウドをあわせる。その点が他社のクラウドサービスとは異なる」と、特徴を説明。

 その上で、「自社サービスにこだわっているのは、ミッションクリティカル環境にシステムを提供するIT企業としての責任を果たすため、設計から構築、運用までのITインフラの技術力を担保するためと、システムをブラックボックス化させないという狙いからである」などと述べた。

 今後も、自社サービスを拡張しながら、マルチクラウド化へのシフトを推進することになる。

クラウドにシステムをあわせるのでなく、システムにクラウドをあわせるのが特徴
自社サービスにこだわる理由

 absonneでは、Oracle Cloud at Customerのabsonne化を図る予定で、NSFITOSの中核サービスのコンポーネントとしてサービス化。Oracle Cloud MachineおよびExadata Cloud Machineをアウトソーシングサービスとして展開する計画を示した。顧客データセンターモデルとNSSOLのデータセンターモデルを提供する予定であり、現在はサービス化に向けて、日本オラクルと最終の話し合いを行っている最中という。

 またabsonneにおいては、今後、ほかのクラウドサービスの提供も検討しており、Oracle Public Cloudとの連携のほか、Microsoft Azureとの連携も検討を進めているとのこと。

 さらに、absonneの基本サービスにおいては、2018年10月にもOpenStack対応を図ることを明らかにした。2018年夏にも正式発表することになる。

Oracle Cloud at Customerのabsonne化を図る

 このほか、次世代運用サービスと位置付けるemeraldでは、運用プロセスや業務の自動化ニーズへの対応や、24時間365日の運用体制と、専門性を持つSEの配置、運用環境やメニューをサービスとして提供することに触れたほか、マルチクラウドからオンプレミスまでをトータルで運用できる特徴などを生かして、運用コストの低減、品質向上、顧客の多様なニーズに応えるとした。

 「運用管理は、各社のサービスごとにサイロ化しているのが現状。また、人に依存した運用になっているのが実態だ。emeraldでは、人に依存した運用からシステムを中心とした運用への変革を図ることができる」。

emeraldのコンセプト

 ITインフラの運用・保守を包括的に提供するITアウトソーシングサービスのNSFITOSでは、最新インフラの提供や信頼性確保、コスト削減、セキュリティ強化などにより、IT部門の付加価値化を支援する。これに関しては、IoTやビッグデータ、AIなどとの連携を進めることで、デジタルイノベーションを支援する姿勢もみせた。

NSFITOS
NSFITOSの事例