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エンタープライズITに迫りくるエッジコンピューティングの足音―― VMwareが「Amazon RDS on VMware」「Project Dimension」などを発表

~VMworld 2018 初日キーノート

Project Concord:ブロックチェーン技術をオープンソースで

 最後に紹介するテクノロジープレビューは「Project Concord」だ。スケーラビリティにこだわった、ブロックチェーンベースの分散処理技術で、コードはCおよびC++で書かれており、「SBFT」というEthereumに近いブロックチェーン技術のアルゴリズムを実装している。

 VMwareはConcordをオープンソース(Apache License 2.0)で公開しており、四半期に一度のペースでアップデートを継続していく方針を示している。

 オープンソースのブロックチェーン技術としては「Hyperleger」が有名だが、オファレル氏は「Hyperledgerではスケールに限界があり、エンタープライズのニーズを満たせない」とインタビューでコメントしている。

 Concordに実装されているSBFTは、ブロックチェーンの合意形成時に障害となりうるビザンチン将軍問題(悪意あるノードが存在した場合の信頼性の担保)をスマートに解決する技術として開発され、その開発チームにはVMwareの研究者も含まれている。

 ゲルシンガーCEOは「Concordであればブロックチェーンの合意形成にかかる時間を80日から2.5時間に短縮できる」と強調しており、そうであるならば合意形成の計算に必要なコンピュータリソースも大幅に低減することが可能となる。

 エンタープライズのブロックチェーン活用に関しては、多くのベンダーが試行錯誤の状況にあり、決定的なものはない。オープンソースとして公開したConcordがどう成長していくのか、エンタープライズIT全体におけるブロックチェーンの動きとともに見ていく必要がある。

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 VMworld 2018で発表された内容を見ると、何度か触れたようにエッジコンピューティングというトレンドを強く意識していることが伝わってくる。ITの世界はこれまで“分散と集約”を繰り返して発展してきたが、クラウドという集約型のテクノロジーのあとに、エッジコンピューティングという分散型のテクノロジーへのニーズが出てきたと考えれば、テクノロジーカンパニーとしてそのトレンドに乗るのはごく当然だといえる。

 2035年までに出荷されるデバイスの数は、全世界で1兆を超えるといわれている。日々増え続けるデバイスとともに、そのデバイスから生成されるデータの量もまた増大の一途をたどっているが、データがビジネスのカギと呼ばれる時代に、そのデータを格納する場所をクラウドだけにこだわるのはコスト、時間、消費電力などあらゆる側面から見ても効率的ではない。

 ただし、クラウドがもたらしたUX――、スケーラビリティ、シンプルな操作性、柔軟なリソースのデプロイなどは、エッジにおいても十分に活用していきたい技術だ。そしてVMwareは今回、“仮想化”という同社のコアテクノロジーでもってエッジコンピューティングという分散技術に取り組んでいるように思える。

 AWSとの提携強化も、エッジとクラウドの連携をタイトにする内容が多い。RDS on VMwareなどはまさにその典型である。

 「VMwareのロールは業界の中でも非常にユニークだ。サーバー、ネットワーク、クラウド、デバイス――ITの世界で生じるあらゆるサイロに対してブリッジを提供し、問題を解決することでわれわれはイノベーションを起こしてきた」と、ゲルシンガーCEOは同社の20年の歩みをあらためてこう評価している。

 そのイノベーションを支えてきた技術の中心はやはり仮想化だ。例年以上に数多くのテクノロジーが発表された今回のVMworld 2018だが、エッジコンピューティングへのシフトともに、VMwareが仮想化のテクノロジーカンパニーであるということをあらためて示したカンファレンスだったといえるだろう。