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日立、Lumada事業の構成比を全社売上の過半を占める規模にまで拡張へ~Hitachi Investor Dayレポート

 株式会社日立製作所(以下、日立)は6月13日、産業アナリストおよび報道関係者を対象にした「Hitachi Investor Day」を開催。デジタル、グリーン、コネクティブの3つの事業セクターにおける戦略を説明したほか、将来的には、Lumada事業の構成比を、全社売上の過半を占める規模にまで拡張し、全社の利益を創出する中心的役割を話すことになるとの見通しを明らかにした。本稿では、Hitachi Investor Dayの内容をレポートする。

過去10年間の構造改革のモードから、サステナブルな成長モードへと経営をシフト

 Hitachi Investor Dayにおいて、日立の小島啓二社長兼CEOは、「過去10年間の構造改革のモードから、サステナブルな成長モードへと経営をシフトする」と、2024中期経営計画の基本姿勢をあらためて強調。「その成長を実現するためには、ガバナンスのさらなる進化、ポートフォリオの継続的な強化、テクノロジーとビジネスモデルの革新、たゆまぬ企業価値の向上への努力の4点が重要であると考えている。4つを回転させることで、社会イノベーション事業のサステナブルな成長を実現することができる」と語り、それぞれの観点から事業方針を説明した。

日立のサステナブルな成長を実現するために
日立 代表執行役 執行役社長兼CEOの小島啓二氏

 「ガバナンスの進化」では、グローバルトップクラスの強力なボードにより、透明性、実効性があるガバナンス体制を確立。これが、日立の構造改革に大きな役割を果たしてきたとしながら、「今後の成長モードにおいてもボードの力を維持、発展させることが不可欠である。また、Global Logicなどの買収を通じて、優秀なグローバル人材を多数獲得し、この人的資本を生かすためにもDEIに力を注ぐ。成長に向けたマインドセットや文化の転換を進め、これを支える報酬体系の導入、浸透を図っていくことになる」とした。

ガバナンスの進化

 「ポートフォリオの継続的強化」については、「世界規模で大きな資金が流入するグリーン、デジタル、コネクティブの3つの技術潮流は、日立に大きな成長機会をもたらすことになる。それぞれの潮流と親和性が高い日立のアセットをグルーピングし、ビジネスのセグメントを構成している。グリーンはエナジーとモビリティ、デジタルはシステムとサービス、コネクティブはつながるインダストリーズを構成する事業アセットとなる。セクター内でのシナジー創出に加えて、異なるセクター間でもシナジーを発揮することが期待できる」と述べた。

ポートフォリオの継続的強化
市場成長を駆動する3つの技術潮流にマッチした強いビジネスセグメントを構成する

 「テクノロジーとビジネスモデルの革新」では、「他社にない社会イノベーション事業の強みを作ることを追求している。メインとしているのは、『顧客との協創』であり、日立の多様なITとOT、プロダクトを組み合わせて、他社よりも魅力的なソリューションを生み出すことを目指している」とし、「そのためには、Lumadaによる顧客協創フレームワークと、それを支える仕掛けが重要である。他社に先行するには、顧客の課題を先取りすることが必要であり、バックキャスト型コーポレートR&D機能や、CVCによるスタートアップ投資を活用し、次のLumadaソリューションを仕込んでいる」などとした。

テクノロジーとビジネスモデルの革新

 また、Lumadaの顧客協創フレームワークで、日立が競争優位性を確立するには、「IT×OT×プロダクトに関わる複数のビジネスユニットが、「One Hitachi」で協働することが重要である」と発言。「顧客協創力の発揮を目的として、協創アカウントマネジメントを行うグローバルマーケティング&セールス、Lumada共通ソリューションを構築する日立デジタル、社内と顧客の脱炭素化を支援するグリーンコーポレート、イネーブリングテクノロジーを開発するコーポレートR&Dなど、セクターをまたがる共通の戦略機能を設置しており、日立が顧客協創を成功させるためには必須の組織になる」と述べた。

IT×OT×プロダクトのポートフォリオを生かすLumadaの顧客協創フレームワーク
セクター共通戦略機能がOne Hitachiによる顧客協創力の発揮を強力にサポート

 バックキャスト型コーポレートR&Dは、顧客課題の先取りや、次のLumadaソリューションを仕込む役割を担っており、「次の社会がどう変化し、どんな顧客との協創が考えられ、顧客はどんな市場で事業展開を狙うのか、顧客に対して、日立はどんなLumadaソリューションを提供できるのか、といったバックキャスト型に基づいた技術開発に取り組んでいる」と述べた。

 Hitachi Venturesによるスタートアップに対する投資についても説明。2019年以降、3億ドルを投資し、各セクターとの協業成果も71件に達しているほか、2023年4月には、Fund 3を新たに設立し、3億ドルの投資を計画。主に、Web3や生成AIなどのデジタル分野にフォーカスするという。これらも、次のLumadaソリューションの仕込みに生かすことができるとした。

次のLumadaソリューションを仕込むバックキャスト型コーポレートR&D
成長マインドを刺激するHitachi Venturesによるスタートアップ投資

 「企業価値の向上」では、2024中期経営計画において、経済価値創出として、Lumada事業比率を向上させ、EPSとCFPSの成長を実現。環境価値の創出では、グリーンエナジー&モビリティセクターを中心に、年1億トンのCO2排出量削減に貢献。社会価値の創出では、「Powering Good」を企業活動の指針とした活動を行うという。

 小島社長兼CEOは、「GXとDXの追い風をとらえたトップラインの成長、Lumada事業比率の拡大による高収益化、ボトムラインの安定化、キャッシュ創出力の強化によりEPSとCFPSの成長につなげたい。ガバナンスをさらに進化させ、プラネタリーバウンダリーとウェルビーイングに取り組み、成長モードの経営を実行する」と述べた。

企業価値の向上
GX/DXの追い風をとらえてLumada事業費率を拡大し、EPSとCFPSの成長につなげる

GlobalLogicの持続的成長を図る

 デジタル戦略については、日立 デジタルシステム&サービス統括本部長の徳永俊昭副社長が説明した。

日立 代表執行役 執行役副社長 デジタルシステム&サービス統括本部長の徳永俊昭氏

 「デジタル戦略の成長エンジンであるGlobalLogicの持続的成長や、日立デジタルをハブとしたOne Hitachiによるシナジーの拡大、サービスビジネスへのシフトとデジタルテクノロジーの活用によるコア事業の高収益化を確実に実行することで、日立全社のLumada事業の成長をけん引していく」と述べた。

 Lumada事業については、デジタルシステム&サービス(DSS)セクターが、顧客の課題を直接解決する「Digital Centric」モデルと、グリーンエナジー&モビリティ(GEM)セクターおよびコネクティブインダストリーズ(CI)セクターと一体となって顧客の課題を解決する、「One Hitachi」モデルの両輪によって成長する戦略を打ち出したほか、Lumadaが注力するデジタル市場領域として、エネルギー、交通・物流、金融、政府・地方自治体、通信・メディア、製造の6つを挙げた。

Lumada事業の成長
注力するデジタル市場領域

 Digital Centricモデルは、DSSが持つデジタルの力を結集。デジタルエンジニアリングを起点に、システムインテグレーション、マネージドサービスまで、エンドトゥエンドのサービスを提供し、顧客の課題や社会の課題を解決。コスト削減や効率向上だけでなく、顧客のビジネスモデル変革やCX向上など、さまざまな角度から事業成長を支援する。

Digital Centricでの成長

 「Digital Centricによる成長戦略においては、最も重要なポイントが価値提供の起点となるGlobalLogicの持続的成長だといえる。高い成長性と高い収益性を維持していくことが成長のエンジンになる」と前置き。

 「これを維持できているのは、GlobalLogicが持つ強固な採用、育成スキームを活用したデジタル人財の強化が順調に進んでいることに加えて、2023年1月に獲得したルーマニアのFortech、3月に獲得した南米のHexactaといった、ボルトオン型M&Aによるデリバリー拠点の拡大が円滑に進んでいることによるものだ。今後もGlobalLogicの成長を止めないための投資をきっちりと行っていくことは、DSSにとって重要なポイントである」とコメントした。

 また、「顧客のCXを向上させるスキルやナレッジの強みを、地域および業種ともに拡大している。日本においては、2022年4月にGlobalLogic Japanを設立。すでに国内だけで30件の受注があり、ノジマでは、デジタルを活用した売り場改革で成果が上がっている例も出ている」とも述べている。

 さらに、Lumada Innovation Hub Tokyoを活用した顧客との協創を加速。「2022年度には、1万5000人が訪れ、75件の顧客協創を推進した」という。

GlobalLogicの持続的成長

 Digital Centricモデルの成長戦略におけるもうひとつの重要な施策が、クラウドマネージドサービスの強化である。業務システムのクラウド化を進める顧客にとって、クラウドシステムの運用の高度化と効率化が重要な課題になっていることをとらえて、各種施策を展開。クラウドマネージドサービスのグローバル展開において、クラウドシステムのデザインから、実装、運用までを、ワンストップで提供するという。

 2022年6月にはインドのハイデラバードに、9月には米国ダラスに、それぞれHitachi Application Reliability Centers(HARC)を開設し、高信頼、高効率なクラウドベースのマネージドサービスの提供を開始した。「HARCはサービス開始1年で、20社以上のグローバル大手企業が導入し、2023年6月には、東京での拠点開設を予定している」という。

クラウドマネージドサービスの強化

 なお、Digital Centricの事例として、マクドナルドでは世界6800万人が利用する新たな注文体験を実現したこと、工具製造・販売のグローバル企業に対しては、サブスクリプションによる収益モデルへの転換を支援したこと、自動車大手のStellantisとの協創では、次世代SDV(Software Defined Vehicle)向けソフトウェアプラットフォームを開発したことを紹介。加えて、欧州金融機関のRaiffeisen Bank Internationalでは、今後2年間で300以上の業務アプリケーションをクラウドへ移行するモダナイゼーションを推進しているが、ここにHARCを採用したという。

マクドナルドの事例

「One Hitachi」モデルの取り組み

 もうひとつの柱である「One Hitachi」モデルは、GEMセクターおよびCIセクターのOTおよびプロダクトに、DSSセクターのデジタルケーパビリティを融合。GlobalLogicのデジタルエンジニアリングによって、プロダクトを高付加価値化し、市場競争力を強化するという。

 ここでは、2022年4月に設立した日立デジタルがハブとなり、日立エナジーや日立レールのグローバルの顧客基盤を活用するとともに、DSSセクターのグローバル事業アセットを組み合わせて、顧客に価値提供する。また、日立グループ横断でのデジタル戦略の策定と実行をリードするDecision & Advisory Boardを日立デジタルに設置。One HitachiによるLumada事業の戦略立案と実行を進め、日立デジタルによるグローバルサービスデリバリーの強化も図る。

「One Hitachi」での成長
Hitachi Digitalをハブとした「One Hitachi」のシナジー拡大

 さらに、「One HitachiでのLumada事業拡大の鍵を握るのが、OTセクターでのデジタル活用の加速である」とし、GlobalLogicの協創スキーム「ラボモデル」をOTセクターに展開。顧客先に専任デジタルエンジニアを配置し、経営課題の的確な把握と、迅速な解決を実現する。ラボモデルは、15年間で100社以上の顧客が利用しており、「このスキームをGEMセクターやCIセクターに展開することで、OT分野でのデジタル活用を加速して、One Hitachiの価値を提供していく」と述べた。

 すでに、500人規模のGlobalLogicのエンジニアが、日立エナジーや日立レールなどと共同で事業を推進。ラボモデルの展開により、2024年度には、協業するエンジニアを1000人超にまで拡大する計画だという。

OTセクターでのデジタル活用の加速である

 また、One Hitachiの価値をグローバルに提供するため、パートナーとのアライアンスを拡大し、サービス提供基盤を継続強化する。「オンプレミスの高い信頼性と、パブリッククラウドの柔軟性を兼ね備えたハイブリッドクラウドに対するニーズが高まっている。2021年10月から、ハイブリッドクラウドソリューションであるEverFlex from Hitachiを提供。2023年4月にはエクイニクスと協業、6月にはAWSとの協業を発表し、ハイブリッドクラウドソリューションのグローバル展開を加速している。One Hitachiモデルの基盤となるデジタルデリバリーフットプリントをさらに強化していく」と語った。

グローバルサービス提供基盤の強化

 One Hitachiモデルの事例としては、Washington Metroでは大規模車両製造工場のデジタル化を推進しており、これをOne Hitachiによるデジタルエコシステムのショーケースに位置づけたほか、米エネルギー大手向けには、エネルギーバリューチェーン全体にわたるDX戦略の策定、実行を支援。積水化学では、日立ハイテクの計測装置と、GlobalLogicのデジタルエンジニアリングを組み合わせて、材料開発をスピードアップする「ラボ・オートメーション」に取り組んでいるという。

積水化学の事例

 ここでは、Lumadaにおいて、材料開発・研究開発ソリューションとして、50社100事例超の実績があることも公表。「スケーリングは、Lumadaの事業拡大にとって重要な取り組みになる。GEMセクターとともに取り組んでいるエンタープライズアセットマネジメントもスケーリングが進んでいる事例もひとつである。今後は、クラウドを活用したマネージドサービスを提供することでスケールしていく」と発言した。

 なお小島社長兼CEOは、これを補足する形で、「Lumadaの利益率は毎年1ポイントずつ改善しているが、この背景にはスケーリングが進み、初期投資の回収が速くなっている点が挙げられる。クラウドインテグレーションの能力をあげていくことが、スケーリングを加速することにつながる」と述べた。

「コア事業」の高収益化への取り組み

 さらに、DSSセクターの事業基盤と位置づける「コア事業」の高収益化への取り組みについては、基幹システムの構築や運用サービス、プロダクト事業などを推進。強固な顧客基盤と、大規模、高難易度案件に対応できる技術力により、基幹システム更新やモダナイゼーションニーズを確実にとらえ、安定した売り上げと利益を創出する姿勢をみせた。

 「コア事業においては、100億円を超えるような受注を、過去にないほど獲得している。だが、難易度も従来と比べものにならないほど高まっている。プロジェクトマネジメントの強化や、効率化した開発を徹底したい」と述べたほか、「ビジネスモデルのサービスシフトと、デジタルテクノロジーによる効率向上を通じて、コア事業のさらなる高収益化を進める。リカーリング型の収益モデルへのシフトを積極的に進めるとともに、システム開発においては、ローコード/ノーコード、AIといったデジタルテクノロジーの適用を拡大し生産性向上を図る」という。

 2024年度には、DSSセクターにおけるサービス売上比率は40%超とし、2027年度におけるシステム開発の生産性向上では30%を目標としている。

コア事業の高収益化

 ここでは、生成AIの社内活用についても言及した。

 日立では、2023年5月に、生成AIの新組織「Generative AIセンター」を設立したことを発表しているが、「発表後には100件を超える問い合わせをお客さまからいただいている。生成AIを使用する環境づくりの支援や、生成AIを業務に適用するためのコンサルティング支援の要望もあり、内容は幅広い。まずは、Generative AIセンターが中心となって、Open AIやマイクロソフトなどの生成AIの活用をさらに加速し、日立社内のあらゆる業務の省力化、自動化を推進する」との方針を説明。

 さらに、「30%の業務効率化につながることもわかってきている。社内活用の実績を積み上げて、日立ならではの生成AIの活用方法を提案していきたい。お客さま業務における安心安全なAI活用を支援するとともに、OTドメインナレッジを学習した日立ならではの大規模言語モデルを強みにして、お客さまの経営課題の迅速な解決を目指す」とした。

 また、日立の小島社長兼CEOは、「生成AIは人間の知的活動を置き替えていくことができる。主要なプレーヤーが持つ大規模言語モデルに、日立が持つ固有のコンテンツをマージして、特徴のある生成AIを提供することになる。日立自らが、スクラッチで生成AIを作ることは考えていない。パートナーシップが重要になる」と述べた。

成長を支えるデジタルテクノロジーの強化

グリーン戦略におけるLumadaの役割

 グリーン戦略においても、Lumadaは重要な役割を果たすことになる。

 GEMセクターにおけるLumadaの売上収益は2022年度実績で3180億円だったものを、2023年度は3700億円、2024年度には4400億円にまで拡大させる。これは、当初掲げた中期経営計画の目標値を大きく超える見通しであり、デジタル関連施策により、グリーン事業の成長を加速していることを裏づけている。今後は、エネルギー事業やモビリティ事業におけるGlobalLogicとの連携を緊密にするという。

 日立 グリーンエナジー&モビリティ戦略企画本部長のアリステア・ドーマー副社長は、「グリーンエネルギーへの転換において、日立はデジタルツインで新たなシステムを設計するほか、高度なエネルギーシステムマネジメントまで、デジタルで最適化されたサービスを提供する。エネルギー分野で活用されるLumadaの予防予知のテクノロジーは、鉄道やエレベータで活用されているコアプラットフォームと同じであり、知見を共有している。2022年には、GlobalLogicがデジタルラボを設置し、エネルギー分野におけるLumada事業の立ち上げを加速し、新たなソリューションを開発している。グリーンやモビリティ分野の広範な顧客にアプローチすることにもつながるだろう。DXに支えられたGXの実装につながっている」と述べた。

日立 代表執行役 執行役副社長 グリーンエナジー&モビリティ戦略企画本部長のアリステア・ドーマー氏

 さらに、コネクティブ戦略では、トータルシームレスソリューション(TSS)の進化、拡大に向けた取り組みについて説明。日立コネクティブインダストリーズ事業統括本部長の青木優和副社長は、「プロダクトと、OTおよびITをつなぐTSSを提供。Lumadaの顧客協創フレームワークにより、産業分野で培ったTSSを、アーバン分野やヘルスケア分野に進化および拡大させ、さらにはグリーン領域にも展開する。業界における日立独自のテクノロジーや、豊富な経験値を生かした顧客協創型ドメインSIによる課題解決が、日立ならではの価値を生むことになる」などとした。

 TSSでは、Lumadaの顧客協創フレームワークを活用。CIセクターにおけるLumadaの売上収益は、2022年度の7830億円から、2024年度には1兆1000億円を目指す。年平均成長率は28%という高い成長を見込んでいる。

 TSSの具体的な事例として、西友やワークマン、ヤオコーなどでは、販売現場と市場をつなぐAI需要予測ソリューションを展開。ウエルシア薬局およびツルハグループでのAIおよびデジタルによる物流配送オペレーションの改革と進化のほか、セブン-イレブン・ジャパンでの小売業サプライチェーンでカーボンニュートラル化などに取り組んでいるケースを挙げた。

 さらに、90万台のコネクテッドプロダクトが創出するデータ駆動型アフターサービスなどによるリカーリングビジネスの強化、TSSによるグローバル成長に向けた取り組みを加速する考えも示した。

日立 代表執行役 執行役副社長 コネクティブインダストリーズ事業統括本部長の青木優和氏

「2024中期経営計画」の新たな経営指標に

 今回のHitachi Investor Dayでは、日立Astemoを除いた「2024中期経営計画」の新たな経営指標についても発表した。

 2024年度までの売上成長は5~7%としており、売上収益は7兆8000億円から8兆2000億円となるが、2024年度の売上収益としては、公表通り8兆円を目標としている。2024年度のAdjusted EBITA率は12%とし、1兆円を目標にした。従来は9600億円としていた。また、当期利益は6000億円。ROICは10%。2024年度までのEPS成長は10~14%、3年累計のコアフリーキャッシュフローは1兆2000億円とした。

2024中計でめざす連結損益計算書

 セクター別では、DSSセクターが売上収益は2兆6000億円(年平均成長率7%)、Adjusted EBITA率が14%。GEMセクターの売上収益は2兆9000億円(年平均成長率13%)、Adjusted EBITA率が9%。CIセクターの売上収益は3兆1000億円(年平均成長率4%)、Adjusted EBITA率は12%とした。

セクター別の財務数値

 日立 代表執行役 執行役副社長 CFO兼Chief Risk Management Officerの河村芳彦氏は、「トップラインの成長では、Lumada事業の成長やGX需要の取り込みによるオーガニックな成長に加え、北米や欧州などのDX、GX注力地域における中小型のボルトオン型買収を進めることで達成する。収益性向上ではLumada事業の拡大による利益率の向上、GlobalLogicなどの買収によって獲得した大型資産のさらなる収益性改善を図る。また、低収益アセットなどのポートフォリオの見直しも継続する。ボトムラインの安定化、キャッシュ創出力の強化、株主還元へのバランスの良い配分、環境価値の創出をはじめとした非財務的価値の創出にも力を注ぐ」などと述べた。

 説明会のなかで、河村副社長は、「Lumadaは、成長および収益創出のドライバーであると位置づけてきた。今後も、Lumada事業の売上成長率は15~20%を継続する見込みであり、これはグローバルDX市場の17%成長の予測の射程内に入っている」と述べる一方、「2024年度の全社売上収益8兆円に対して、Lumada事業の売上高は2兆6500億円を見込んでおり、33%となり、ちょうど3分の1を占めることになる。将来的にはこの比率が5割となり、さらに5割を超えて、場合によっては7割、8割となる。Lumadaの利益率は、他の事業に比べて高いため、Lumadaのポーションが上がると、全社の収益率が高まることになる」と述べた。

日立 代表執行役 執行役副社長 CFO兼Chief Risk Management Officerの河村芳彦氏
2024中計の次のステップ

 また、徳永副社長は、「Lumada事業を成長させていくことが、日立全体の成長につながる。データとテクノロジーを活用して、事業を強化し、社会イノベーションを通じてり価値を提供することができるのが日立の強みであるとすれば、必然的にLumada事業の構成比が増えることになる。データやデジタルテクノロジーとの関連性を持ちながら事業が成長していく。過半がLumada事業になるという姿を想定している」と述べた。

 さらに、小島社長兼CEOは、「今後は、ほとんどのプロダクトがコネクテッドになっていく。単体事業やデジタルと関係がない事業は外に出していき、つながる製品やつながるサービスで、デジタルやグリーンを実現することになる。私は、日立がLumada事業を中心に置くことに対してはまったく違和感がない。ビジネストランスフォーメーションを進める上で、最も効果が出るように、Lumadaの定義をフレキシブルに見直していくことも考えている」とコメント。青木副社長は、「コネクテッドプロダクトを通じて、データがつながり、価値を生み出すことができる領域は多岐に渡っており、これからもLumadaによる大きなチャンスがある」と述べた。