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日立、“OT×IT”強化によるグローバルでの組織再編の価値を説明
2023年11月1日 06:15
株式会社日立製作所(以下、日立)は、エンタープライズストレージなどのデータインフラストラクチャ事業や、OT(制御・運用技術)とITのインテグレーション事業、クラウド運用サービスなどのマネージドサービス事業についてのグローバルでの再編を、10月27日に発表した。
具体的にはまず、2023年11月1日付で、米国子会社Hitachi Vantara LLCのデジタルソリューション事業を分社化して「Hitachi Digital Services」を設立する(CEO:Roger Lvin氏)。Hitachi Digital Servicesは、クラウド、データ、IoTを駆使したサービスをベースに、OT×ITを実装するインテグレーターとして、各業種へデジタルの価値を提供する。
また、国内において、エンタープライズストレージ製品などデータインフラストラクチャに関する事業開発・研究開発・生産を担ってきた日立のITプロダクツ事業部門を、2024年4月1日付で「日立ヴァンタラ株式会社」として分社化する(取締役社長:島田朗伸氏)。
旧Hitachi Vantara LLCでハイブリッドクラウド型ストレージサービスなどエンタープライズ向けデータインフラストラクチャを提供しているデジタルインフラ部門が、新Hitachi Vantara LLCとなる。日立ヴァンタラ株式会社と新Hitachi Vantara LLCの両社のCEOにはSheila Rohra氏が就き、製造、開発、販売、サービスにおいて連結運営される。
OT分野とのシナジーを加速、データインフラをハイブリッドクラウドに広げる
この再編についての記者説明会が、10月31日に都内およびオンラインで開催された。当初登壇を予定していなかった日立 執行役副社長 デジタルシステム&サービス統括本部長の徳永俊昭氏も急遽登壇し、「日立全体がグローバルに、しかも“One Hitachi”で力強く成長していくために重要な発表であると認識して、急遽参加させていただくことにした」とあいさつした。
徳永氏は今回の再編について「日立グループの最大の強みともいえる、鉄道、エネルギー、産業といったOT分野とのシナジーを加速して価値をつくり出すことを目的としている」と説明。Hitachi Digital Servicesを独立会社とすることでITとOTの融合を強化すると語った。また、新しいHitachi Vantaraおよび日立ヴァンタラ株式会社が得意とする仮想化技術をハイブリッドクラウドの領域に広げることで、AIなどにますます需要が見込まれるデータインフラ分野で力を発揮していきたいと語った。
再編の詳細については、日立 執行役専務 クラウドサービス プラットフォームビジネスユニット CEOの阿部淳氏が説明した。氏は冒頭で、今回の再編対象は、社員1万人規模、売上5000億円規模に及ぶと説明した。
阿部氏は再編の背景として、生成AIによるパラダイムシフトが世の中を席巻しており、その燃料となるデータが爆発的に増大すすることから、データを蓄積するためのデータインフラの需要が今後ますます高まると予測されていることを挙げた。
そのためのデータインフラについて、高いセキュリティのオンプレミス環境と、高アジリティ(俊敏性)のパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドが鍵と説明。日立がミッションクリティカル領域で培ってきた、仮想化、データ保護技術のデータストレージ、レガシーシステムをモダナイズするクラウドインテグレーション、複雑な運用を最適化するマネージドサービスが武器になると語った。
また、Hitachi Digital Servicesが得意とする、ITとOTをつなぐドメインソリューションやクラウドマネージドサービスをさらに強化していくと説明。さらに、買収したGlobalLogicとのバリューチェーンを強化して、「鉄道やエネルギー、産業などのOTセクターに、社会イノベーション事業をグローバルに展開、加速していく」と語った。
さらに、Lumada事業への貢献についても阿部氏は説明した。GlobalLogicの創出するアイデアやアプリケーションを、ドメインソリューションを持つHitachi Digital Servicesのシステムインテグレーションで幅広い領域に社会実装する。そしてそれを、Hitachi Digital Servicesのクラウドマネージドサービスで保守運用する。さらに、それらの基盤としてHitachi Vantaraのデータインフラで安全かつ迅速にデータを蓄積し活用する。
Hitachi Digital ServicesとHitachi Vantaraの事例を紹介
各社の強みについても阿部氏は紹介した。
Hitachi Digital ServicesのOT・ITをつなぐドメインソリューションについては、旧Hitachi Vantaraのデジタルソリューション部門に、SME(Subject Matter Expert)という深い業種ナレッジを持つ人材がいると説明。車両保守の知見とITの知見をかけあわせて、HFMT(Hitachi Fleet Management Tool、日立車両管理ツール)を開発し、英国の都市間高速鉄道計画におけるコンディションベース保守に採用されたと語った。
Hitachi Digital Servicesのクラウド型運用最適化のマネージドサービスについては、HARC(Hitachi Application Reliability Center)サービスを挙げた。ビル空調設備保守における現場保守員向けの支援サービスにより、アラートノイズの低減やインシデント管理の効率化をもたらし、システムの安定性の向上や運用チームの負荷軽減につながったと語った。
新Hitachi Vantaraについては、ガートナーのマジッククアドラントのプライマリーストレージ分野で5年連続リーダーの1社に位置づけられていると紹介。強みとして、ミッションクリティカルな性能および信頼性と、ストレージの仮想化技術、さらにハイブリッドクラウドでデータを一元管理する高信頼SDS(Software Defined Storage)を挙げた。
さらに、パートナー各社のソリューションも含むデータインフラストラクチャのエコシステムを構築し、as-a-Service型でハイブリッドクラウドサービスを提供していることも紹介した。
その事例として、アジアの航空会社の例を説明。データはオンプレミスに置きつつ、繁忙期だけクラウドを利用したいという要望に対し、クラウドからオンプレミスのデータをセキュアに直接参照できるようにし、さらに参照頻度が高いデータはパートナーのニアクラウドに置くようにして、稼働監視や自動運用も組み合わせたと説明した。