大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

Oracle Global Media Dayで見た、クラウド時代の“成長戦略”

PaaS領域における自律機能の拡張、新たなサポートなどを発表

PaaS領域において自律機能の拡張を発表

 一方でOracleは、前述の通り、PaaS領域において自律機能を拡張させることも発表した。

 「Oracle Autonomous Analytics Cloud」「Oracle Autonomous Integration Cloud」「Oracle Autonomous Visual Builder Cloud」の3つの製品において、自律機能を提供することになる。

 同社では、2018年2月に、クラウドプラットフォーム全体に自律機能を拡張させる計画を明らかにしており、今回の発表はそれにのっとったものとなる。

 「アプリケーション開発やインテグレーション、分析サービスにおいて、高度なAIと機械学習アルゴリズムを使用した自律的な機能を提供。クラウドプラットフォーム全体で自律的な機能を拡張できる」(Oracle Cloud Platform担当のZaveryエグゼクティブバイスプレジデント)という。

Oracle Cloud Platform担当エグゼクティブバイスプレジデントのAmit Zavery氏

 Oracle Autonomous Analytics Cloudは、機械学習に適応したインテリジェンス、サービスの自動化によって、人や場所、データ、システム間の壁を越え、分析や理解、行動する方法を根本的に変える分析プラットフォームになる。

 ビジネスユーザーがより多くの洞察を素早く発見したり、モバイルデバイスを通じて自然言語で質問し、最適に回答を得たり、隠されていたパターンやパフォーマンスなどを明らかにしたり、IoTデータを用いた予測分析を行ったりできるという。

 Zaveryエグゼクティブバイスプレジデントは、「アナリストや開発者は、手作業で分析を行ってきたが、Oracle Autonomous Analytics Cloudではそれを自律化によって解消できる。事前構築モデルが用意されており、データを入れるだけで、すぐに洞察を導き出すことができるし、クエリのオプティマイゼーション機能や、レポーティングのビジュアライゼーション機能も搭載している」と説明。

 「社員のデータを入れると、社員の退職に関する属性情報を集めて相関関係を見て、どの社員を引き留めるべきかといったことがわかる。人事部門におけるオペレーションを変えることができる」とする。

 Oracle Autonomous Integration Cloudは、機械学習と組込型のベストプラクティスガイダンス、事前構築されたアプリケーション統合機能とプロセスの自動化機能を組み合わせることで、OracleのSaaSアプリケーション、Oracle以外のSaaSアプリケーション、オンプレミスのアプリケーションにまたがるビジネスプロセスを実現可能になる。

 また、AIおよび機械学習フレームワークを組み込むためのAPIを提供することにより、インテリジェントな管理機能を実現。RPAによりプロセスの自動化を図る。

 「Oracle Autonomous Integration Cloudでは、コネクタ部分をプリパッケージ化しており、WorkdayやSAP、salesforce.comなど他社のSaaSとオンプレミスアプリケーション、Oracleのアプリケーションを、どうマッピングすれば最適なのかがわかり、プラットフォームの統合化を進めることができる。また、AIや機械学習によって統合フローの一部を自動化でき、コードを書かなくても統合できる。さらに、RPAを使うことで、これまで人がやっていたことを自動化でき、予測性を持った形でビジネスフローに入れることが可能だ。ビジネスフロー、データフローを最適化できるとともに、機械学習によって実行パターンを学習させチューニングするといったことも行える」などとした。

 Oracle Autonomous Visual Builder Cloudは、「コーディングのスキルが不要で、ビジネスユーザーやアナリストでも、アプリケーションを構築できるようになるのが特徴」(同)とする。

 Oracle JETやSwaggerなど、業界標準テクノロジーを使用したコード生成をワンクリックで自動化でき、ビジネスユーザーでも迅速にアプリケーションを開発可能という。さらに、iOSやAndroidなど、複数のプラットフォーム向けにモバイルアプリケーションの配信を自動化することで、モバイルとWebアプリケーションの開発と展開を加速するとした。

 なお今回の発表にあわせ、Oracleは2018年後半に、モバイルおよびチャットボット、データ統合、ブロックチェーン、セキュリティと管理、およびOLTPを含む追加のデータベースワークロードに焦点を当てた、より自律的なサービスをリリースする予定も明らかにした。

 Oracleによる自律化への取り組みは、これからも続いていくことになる。

 Mendelsohnエグゼクティブバイスプレジデントは、「自律化においては、データの侵害がなく、ハッカーの攻撃からも守られたセキュリティが大切であること、自動修復によって、高いSLAを提供し、毎月2分以上のダウンタイム(計画されていないダウンタイム)が発生しないようにしていること、データベースのワークロードの最適化や継続的な自動化が提供されることが大切である」とする。

 またKurianプレジデントは、「自律化の第1段階として、ソフトウェア自らがディザスタリカバリを行ったり、パッチを当てたりできるようにし、第2段階で、ソフトウェア自身がキャパシティを管理し、必要に応じてキャパシティを自動で拡大できるようにした。第3段階では、ソフトウェアが自己チューニングしたり、ソフトウェアがクエリに基づいてインデックスを作ったりできるようにしている。今後は、健康度合いを自分で管理できるようになり、健康な環境でなければ自己治癒させるようにする。10年前から疑問に感じていた、人がソフトウェアの管理をしなくてはならないという課題を解決できる」と語った。

自律化によりDBAの役割が変化

 一方、自律化が進展することで、ひとつの課題が生まれることになる。

 それは、データベースの管理者であるDBA(Database Administrator)の役割が変化することだ。一部にはDBA不要論さえ、ささやかれている。

 実際、今回のOracle Global Media Dayにおいても、Hurd CEOは、「Oracle Autonomous Databaseに搭載されたAIによって、データベースの更新、最適化、パッチの適用、チューニングを自動的に行うことができる。それによって、数十万人のOracle DBAの作業を解放し、付加価値の高い仕事に従事できるようになる」と指摘した。

 Oracle Global Media Dayに参加したAccentureのPat Sullivan(パット・サリバン)マーケティングディレクターは、「当社では、全世界で2万人にのぼるOracle Databaseの専門家を抱えている。これらの専門家のこれからのキャリアを考えていく必要がある」と前置き。

 「DBAは、データそのものにどんな価値があるのかということにもっとフォーカスした仕事をしなくてはならない。データの管理が自動化されれば、データの専門家としてDBAが本来持つノウハウを活用しなくてはならない」とする。

 これまでOracle Databaseの運用を支えてきたDBAの役割の変化は、自律化の進展と連動してとらえなくてはならないものだといえる。