大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

富士通がクラウドサービスをFUJITSU Cloud Serviceへ刷新した理由

 富士通にとって、クラウド事業はいまや中核に位置づけられるビジネスだ。その同社が、クラウドサービスを「FUJITSU Cloud Service」として刷新し、ブランドを統合すると発表した。

 これまでは、パブリッククラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5(以下、K5)」を軸に、モバイル、IoT、アナリティクス、AI、セキュリティといった技術やソリューションを提供。既存の基幹系および情報系システムによるSop(Systems of Record)のクラウド移行や、IoTやAIなどの新技術を活用したSoE(Systems of Engagement)の早期構築を強みとしてきたが、今後は、「FUJITSU Cloud Service」という統一した傘のなかで、これらのビジネスを推進することになる。

 富士通のクラウド戦略にとっては、第3世代への進化だといっていい。富士通のクラウド戦略を追った。

第3世代の「FUJITSU Cloud Service」

 今回、富士通が発表したのは、これまで提供してきた「FUJITSU Cloud Service K5」などのクラウドサービスを刷新し、ハイブリッドITおよびマルチクラウド環境を支えるクラウドサービスを、「FUJITSU Cloud Service」としてブランドを統合することだ。

 具体的なサービスとしては、OSSベースの「FUJITSU Cloud Service for OSS」、Microsoft Azureによる「FUJITSU Cloud Service for Microsoft Azure」、VMwareの製品群をベースにした「FUJITSU Cloud Service for VMware」などに再編する。

 デジタルビジネスプラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(MetaArc)」を基盤に位置づける点はこれまでとは変わらず、FUJITSU Cloud Serviceとして、今後も順次ラインアップを拡大していくことになる。

 富士通のクラウドサービスの歴史を振り返ると、同社は、2015年5月にK5を発表したが、それより前となる2010年から、FGCP/S5(以下、S5)と呼ぶクラウドサービスを提供してきた経緯がある。今から3年前に、S5を発展的に解消してK5に統合したわけだ。

 富士通 クラウドサービス事業本部 クラウドプロモーション統括部の大石卓哉シニアディレクターは、「もともとS5は、お客さまのシステムをいかにクラウドに移行し、うまく動かすことができるかを追求したサービスだった。この考え方を踏襲しながら、進化させたのがK5である」と振り返る。

FUJITSU Cloud Service K5(富士通の発表会資料より)

 一方で、「K5はOpenStackを最大限に活用してサービスであり、必要とされる機能は富士通が補完する形で提供した。当時はベンダーロックインをしないことが求められていた。VMwareをどう活用するのか、オープン性やスケーラビリティに対応するためにはどうするのか、という観点から進化をさせた」とする。

富士通 クラウドサービス事業本部 クラウドプロモーション統括部の大石卓哉シニアディレクター

 だが、その一方で、「当時のクラウドは、AWSやGCPでも、クラウド環境に移行するにはアプリケーションを作り替えることが前提になっていた。しかし富士通のお客さまは、そうはいかず、アプリケーションに手を入れることまで決断して、クラウドに移行してもらうということができなかった。では、そうしたお客さまに対して、どんなクラウドを提供すべきか、なにが求められているのかを検討した結果、新たな世代のクラウドを提供することになった」とする。

 それが、今回のクラウドサービスの進化で狙った基本的な考え方だ。つまり、S5を富士通のクラウドサービスの第1世代と位置づければ、K5が第2世代となり、今回のFUJITSU Cloud Serviceは、第3世代への進化だといえるだろう。

 富士通では新たな取り組みとして、10年以上培ってきたクラウド基盤の運用実績をもとに、顧客のビジネスに適したハイブリッドIT環境を提供。6月29日から、基幹システムのクラウド移行向けに機能強化したクラウドサービスを、日本を皮切りに、順次提供を開始する。

 同社では、「ポータルサイトから簡単に物理サーバーを配備できるベアメタルサーバーサービスでは、既存オンプレミス環境に合わせてOSやアプリケーションが導入可能なため、アプリケーションの改修および運用プロセスの変更を最小限に抑えられ、既存システムのクラウドへの移行が容易になる。さらに、非常時におけるシステムのダウンタイムを極小化し、事業継続性を高めるためのディザスタリカバリ機能なども追加することで、クラウド基盤の信頼性をオンプレミス環境と同等まで強化し、ハイブリッドIT環境における基幹システムの段階的なクラウド移行に適したクラウドサービスを提供できる」と語る。

 富士通の大石シニアディレクターは、「お客さまが欲しいクラウドとは、サスティナブル、スケーラブル、セキュアの3つのSに集約される。オンプレミスのシステムをクラウドに乗せ、業務の進化を継続してサポートすることができ、お客さまのビジネス成長にあわせて応えられる機能を持ち、セキュリティの課題も解消していくことが必要だ。これに応えられるのが、富士通のクラウドサービスの特徴である」と胸を張る。