大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

Oracle Global Media Dayで見た、クラウド時代の“成長戦略”

PaaS領域における自律機能の拡張、新たなサポートなどを発表

Oracle Cloud Solution Hubsにおける4つの事例

 なお今回のOracle Global Media Dayでは、米国カリフォルニア州レッドウッドシティのOracle本社の敷地の一角に開校した「Design Tech School(d.tech)」を公開したり、特定顧客との協業により、最新の技術を活用したソリューションを提案する「Oracle Cloud Solution Hubs」を紹介するセッションが用意された。

 d.techについては、別稿で紹介しており、そちらを参照してほしい。

Oracle本社の敷地内にあるDesign Tech School

 本稿では、Oracle Cloud Solution Hubsの取り組みとして公開された4つの事例を紹介する。

 Oracle Cloud Solution Hubsは、Oracleのクラウドプラットフォームを利用し、センサーやスマートスピーカーをはじめとするIoTや、ブロックチェーンなどの最新技術を活用。バックエンドシステムと連動させながら、顧客の課題解決を図る取り組みを行っている拠点だ。

 同社では、「新たな技術を活用して課題を解決するには、自分たちの考え方を変える必要があった。ここで開発しているソリューションは完璧な状況にはなっていないが、ユニークともいえる次世代プロジェクトになっている」とする。

 10万人の社員を持つ企業を対象に開発したセルフサービス型のHRシステムは、スマートフォンに必要事項を入力すれば、休暇を申請したり、残りの有給休暇が何日あるのかといった個人に関する情報を取得したりすることができる。スマートスピーカーを使うことで、音声でのやりとりも可能だ。

セルフサービス型HRシステム

 世界的にも著名な小売業との協業で開発したのは、AR(拡張現実)を組み合わせて、店頭で新たな体験を行うことができる仕組み。スマートフォンを商品に向けると、商品に関する情報を知ることができたり、そこから直接購入手続きを行ったりできる。商品ごとのセール情報も表示できるし、ラベルの色だけが異なるワインであっても適切に判断して情報を表示するという。

ARを活用した新たな小売体験を実現

 大手製薬会社との提携によって開発しているのは、血圧情報をもとに、適切な診察を遠隔地から行うほか、薬を正しく飲んでいることを管理したり、薬を追加購入する際の店舗情報を表示したり、といった機能を持ったものだ。個人情報を取り扱うため、ブロックチェーンを活用。セキュアで、正しい情報を扱う環境を実現している。

大手製薬会社とともに開発したヘルスケアシステム

 大手金融機関を提携して開発したのは、顧客が金融機関のシステムを活用して、顧客同士が相互に取引を行う仕組み。ここでもブロックチェーンを使用し、改ざんされない環境での取引を実現している。

大手金融機関による顧客同士が相互に取引を行う仕組み

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 2日間にわたってOracle本社で開催されたOracle Global Media Dayは、Oracleの最新状況を知る機会になった。

 発表から約半年を経たOracle Autonomous Databaseが着実に進展し、今後も同社の中核技術として、各種製品に反映され、進化していく姿勢をあらためて強調するものになった。

 だが、クラウドビジネスへの移行を推進する同社が、自律化という新たな技術を提案し始めたことで、顧客やパートナーとの関係も新たなフェーズへと入り始めていることも浮き彫りになった。自律化の進展に伴い、DBAの役割が今後変化していくことになるのはその最たるものだろう。

 自律化の進展は、そうした関係変化をもたらすという意味でも大きなインパクトを持つことを、あらためて認識することができた。

 AIやブロックチェーンといった新たな技術もどん欲に取り込んでいくOracleの自律化への取り組みが、今後どんな形で進展をしていくのか、そして、顧客やパートナーとの関係はどうなるのか。その点でも、2018年10月に開催されるOracle Open World 2018が、より一層注目されることになる。