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シスコ、約30モデルのネットワーク製品を「Cisco Live」で発表 その特徴を日本向けに説明
2025年6月30日 06:00
シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は、6月上旬に開催された米Cisco Systemsのイベント「Cisco Live」で発表された新製品についての概要を語る記者説明会を、6月27日に開催した。
シスコ 社長執行役員の濱田義之氏は、今回の発表について、「多岐にわたる新しい製品、モデル数でいえば約30の製品を新たに発表した」と紹介した。
その中でもトピックとして濱田氏が取り上げたのが、さまざまな製品における、オンプレミス管理のCatalystとクラウド管理のMerakiの、2つの管理・運用体系の統合だ。これまでそれぞれ別のハードウェアとして販売されていたものが、同じハードウェアでどちらかを選ぶ形になっている。
もう1つ、Cisco Liveで大きな反響があったとして取り上げたのが、AIがネットワーク運用を助けるダッシュボード「AI Canvas」だ。
これについて濱田氏はデモ動画を上映した。それによると、障害が発生したときに、AIが情報をMerakiやThousandsEvesから取得し、状況を分析して、解決方法を提案する。さらにネットワーク担当者を呼び出してこれまでのサマリーを送信、ネットワーク担当者がそれをもとに解決するという。その後AIは、少し時間が経過して問題が解決されたことを確認し、レポートを作成する。
産業用スイッチと、ブランチを一元管理する「ユニファイドブランチ」の発表
米CiscoのセキュアWAN・産業IoT統括シニアバイスプレジデントのVikas Butaney氏は、産業向けネットワーク製品と、ユニファイドブランチについて解説した。
通常のオフィスではキャンパス&ブランチ(中央拠点と分散拠点)のネットワーク構成をとることが多い。しかし小売業者では倉庫や配送センターが、製造業においては工場があるなど、産業分野では場所とネットワーク技術は広範にわたる。これに対してCiscoでは、OSのIOS-XEや、ネットワーク自動管理のCatalyst Centerなど、共通のアーキテクチャで対応する、とButaney氏は語った。
Butaney氏は「Ciscoは産業用ネットワークの市場をリードしている」と言い、製造業や電力、交通でインフラを支えていると述べた。
そのような中で、Cisco Liveでは産業用分野で、セキュリティやスイッチ、Wi-Fiについての新発表がなされたとButaney氏は語った。
スイッチ製品においては、工場などで使われるDINレール製品や、厳しい環境に向けた防塵・防水のIP67製品、ラックマウント製品など、19の新スイッチが発表されたとButaney氏は紹介した。
またWi-Fiにおいては、通常のWi-Fiと産業用のURWBを1つにまとめたWi-Fi 7アクセスポイントを発表した。セキュリティについては、複数の工場の多数の資産について、AIによってグルーピングしてクラスタリングし、すべてのイベントをSplunkで可視化するソリューションが紹介された。
もう1つのテーマとして、Cisco Liveで発表されたユニファイドブランチについてもButaney氏は解説した。
ユニファイドブランチでは、さまざまなブランチのWi-Fi・スイッチ・ルーターなどの検証済み機器を、Cisco Merakiダッシュボードで統合し、Cisco ThousandEyesで一元監視する。また、ブランチ全体を「Branch as Code」として定義できる。これによって、ブランチの展開がこれまで以上に簡単になるという。
さらに、飲料メーカーであるネスレの事例をButaney氏は紹介した。同社は、Ciscoの協力により、工場や支店をSD-WANで接続し、拠点ではつなぐだけで機能して一元管理できるソリューションを構築した。アフリカで海底ケーブルが切断されたときも、他社が何週間もオフラインだったのを、1日足らずで復旧するという、高い可用性を維持しているという。
小規模ブランチからデータセンターまでのルーター「Cisco 8000 Secure Router」の発表
ルーター分野については、新発表された「Cisco 8000 Secure Router」シリーズを、米Ciscoのルーティング製品統括ディレクターのAnanth Bhat氏が解説した。同氏によると、パフォーマンスが向上し、セキュリティを組み込んで単体およびSASEの両方に対応し、ポスト量子の暗号にも対応しているという。
モデルとしては、小規模ブランチ向けの8100からデータセンター向けの8500まで5モデルがある。8100と8200はファンレス設計。Bhat氏は日本では8200が最も多く使われるだろうと説明した。
管理方法は、冒頭で濱田氏が紹介したように、同一ハードウェアでオンプレミス型とクラウド型の両方に対応する。
そのほか、この先数年で量子コンピュータにより既存暗号が短時間で破られることになるとして、「Cisco Secure Routerシリーズはポスト量子に対応できるように構築されている」とBhat氏は語った。
さらに、SD-WAN+SSE(Security Service Edge)を統合したSASE(Secure Access Service Edge)によって、すべてのトラフィックをクラウドに集約してセキュリティ分析できるとBhat氏は説明した。
キャンパス向けスイッチ「Cisco C9350/C9610 Smart Switch」の発表
スイッチ分野については、新発表されたCisco 9000ファミリーのキャンパス向けスイッチ「Cisco C9350 Smart Switch」「Cisco C9610 Smart Switch」について、米Ciscoのシニアディレクター、プロダクトマネジメント、スイッチ製品担当のJay Kothari氏が解説した。
同氏によると、これまでで最も高密度で、パフォーマンスと遅延を向上。Cisco 8000シリーズと同様にポスト量子のセキュリティに対応する。さらに、トラフィックがないときにスリープ状態になるなどのスマートな機構でエネルギー効率も優れるという。
特徴の1つとして、ASIC「Cisco Silicon One」シリーズのA100LおよびK100LをKothari氏は挙げた。高パフォーマンスやテーブルサイズ、低消費電力に加えて、プログラマブルなため将来のイノベーションにも対応できるという。
そしてC9350/C9610についても、オンプレミスとクラウドの両方の管理体系に対応することをKothari氏は紹介した。
セキュリティについては、包括的なセキュリティに対応。Trustworthyテクノロジーにより改ざんなどを検知するほか、近日中にリリースされる「Live Protect」技術によって、脆弱性が発見されたときにパッチを適用して再起動する前に攻撃を防ぐという。
ネットワーク管理のさまざまな新機能
ネットワークプラットフォームについては、米Ciscoのリーダー、プロダクトマネジメント、運用プラットフォーム製品担当のSandeep Sharma氏が解説した。
Sharma氏は、現在のネットワークがデバイス数もデータ量も多く複雑になっていることを背景として説明。それに対して、統合管理、APIによるインテグレーション、AIによってネットワーク運用が進化していると語った。
まず統合管理。何度か登場したように、オンプレミスとクラウドを統合して管理する。また、さまざまなデータを大きなデータレイクに統合し、インサイトやテレメトリなどにより、さまざまなサービスを提供する。
CiscoのAPIについては、最近500を超える新しいAPIを追加。これらのCiscoのAPIを、9万人が利用し、150億回以上のAPI呼び出しを行っているという。
Ciscoのネットワークアプリマーケットプレイスも発表された。これまでMerakiのマーケットプレイスはあったが、これを共通のマーケットプレイスにした。現在、パートナーによる350以上のアプリが利用可能。
Merakiダッシュボードについては、3つの新機能をSharma氏は紹介した。1つめは、BGP、VRF、ISSU、IOS XEスタッキングによるキャンパス展開のサポート。2つめは、マイクロセグメンテーションに利用できるファブリック。3つめは、ダッシュボードのクラウドCLI(コマンドライン)だ。
またCatalyst Centerについては、単一ダッシュボードでグローバルネットワークを管理できるCatalyst Center Global Manager、Azure上の仮想アプライアンス、大規模向けのサイトベースのアクセス制御を、Sharma氏は紹介した。
そのほか、冒頭で濱田氏も紹介した「AI Canvas」や、ネットワーク運用についての会話型AIの「AIアシスタント」もSharma氏は紹介した。