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国防総省のJEDIが中止に 後継プロジェクト「JWCC」とは

通信、組織、AI利用など多くの課題

 JWCCプロジェクトは野心的なものだが、CRSの報告書はいくつかの課題も指摘している。

 一つは、技術的な完成度と経済性、つまりセンサーから攻撃までの絶対確実な通信を担保できるのかという点だ。5Gを念頭に置いているが、各部門をつなぐ通信の実現は技術、資金両面の課題となる。

 報告書は、かつてDoDが取り組んだ戦略無線システムJTRS(Joint Tactical Radio System)の例を挙げている。全ての無線システムを置き換えることを目的としたプログラムで、軍が使用する25~30種類の相互に互換性のない無線を統合しようというものだった。

 しかし、1990年代半ばの開始からいっこうに実現せず、2011年に打ち切りとなって莫大な費用損失が出た。ソフトウェア無線で、セキュリティ上の懸念もあったという。

 組織面の課題もある。従来の指揮権はドメイン(軍)ごとだが、横断的な作戦の意思決定権は誰が持つのかといったこと。さらに、AIを利用したリアルタイムの意思決定に、人間がどのようにかかわるのかという点も指摘されている。

 報告書では触れていないが、“敵”も当然ながらAIを活用したリアルタイム攻撃を研究するはずだ。そうなった時、瞬時に動作を決めるアルゴリズム同士の戦いとなる。その中で人間がきちんと役割を果たせるのか、という疑問もわいてくる。AI倫理的な問題も大きい。

 JEDIは紆余曲折を経て中止となったが、新しいプロジェクトの道のりも平坦なものではなさそうだ。