事例紹介

三鷹市が取り組む「コミュニティ創生」、ICTで高齢者の「共助」は育まれるか?

ICT街づくり推進事業(1)

ICT街づくり推進事業 実施地域一覧(出典:総務省)

 総務省では平成24年度から「ICT街づくり推進事業」に取り組んでいる。雇用、高齢化、医療、防災・減災、コミュニティ問題など地域が抱える複合的な課題を解決するため、ICTを活用した新たな街づくりについて検証する実証プロジェクト。公募した自治体や事業者に委託し、全国各地で実証実験が進められている。未来の街はどうあるべきか、そんな「ICT街づくり」の最前線を追う。

 今回は、平成24年度・平成25年度に実施された、東京都三鷹市における「三鷹市コミュニティ創生プロジェクト」。

 「防災・減災」「高齢者支援」という観点から地域コミュニティのあるべき姿を模索している。推進役は株式会社まちづくり三鷹。三鷹市および地域企業・大学・市民と共に街づくりを進める第三セクターとして1999年に設立され、地域の産業創出、コミュニティへの支援、SOHO事業者の集約などに取り組んでいる。

「防災・減災」と「高齢者支援」の取り組み

 三鷹市は東京都多摩地域の東端に位置する都市で、人口は約18万人(2014年10月現在)。勤労者が多く住む「住宅都市」のほか、都市の便利さと緑豊かな自然とが調和する「公園都市」としての顔を持ち、市内には「国立天文台三鷹キャンパス」、桜の名所で知られる「井の頭恩賜公園」、小金井市や調布市とまたがる「野川公園」がある。文化施設としては、「三鷹の森ジブリ美術館」が有名だろう。

 市北端にはJR中央線が走り、「三鷹駅」を中心に市街地を形成。神田川沿いには京王井の頭線の「井の頭公園駅」や「三鷹台駅」がある。

井の頭公園の桜(出典:三鷹市)
井の頭公園駅

 市の基本理念としては「人間のあすへのまち」を目指し、さまざまな課題に対処するために「ICTを生かして協働を生み出し、持続可能なコミュニティを創生する」という方向性で街づくりを推進。また、平成24年3月に策定した総合計画で定められた最重要プロジェクトである「都市再生」「コミュニティ創生」「危機管理」と連動する形でICT街づくり推進事業に参画し、主に「防災・減災」と「高齢者支援」について検証した。

 背景としては「全国で高齢化が進んでいますが、三鷹も例に漏れず。特に多摩地域は東京のベッドタウンとして、昭和30年代に旧住宅公団が日本で2番目に大規模団地を造るなど、比較的早くに都市化したこともあって、高齢化が進んでいます。防災・減災については、3.11発生時に帰宅困難者があふれたことがきっかけで、災害時の情報伝達の仕組みを考える必要がありました」と、まちづくり三鷹 取締役の後藤省二氏は語る。

 市が重視するのは「自助、公助、共助」の考え方だ。いかにコミュニティでの助け合いを育んでいくか。そのための仕組みとして、以下4点の実証実験を行った。

取り組み内容
駅前Wi-Fi主に災害時の情報伝達。平時には商店街へのO2O(Online to Offline)にも活用
情報伝達制御システム災害時に情報伝達する複数のメディアを一括制御
IP告知システムAndroid端末による買い物支援や災害時の要援護者支援
共通ID要援護者支援のために複数のシステムで利用できる共通ID運用。マイナンバー制度を見据えたもの。
三鷹市ICT街づくり実証事業の全体イメージ

(川島 弘之)