事例紹介

マイナンバーを軸に母子健康・学校情報を集約し、子育て支援~前橋市

ICT街づくり推進事業(3)

生涯学習「まちなかキャンパス」を電子化

ICTまちなかキャンパスの概要

 最後の「ICTまちなかキャンパス」は、前橋商工会議所が開催している生涯学習「まちなかキャンパス」を電子化し、講座予約や動画閲覧をWeb上で行えるようにするもの。2006年から始まった取り組みで、市内の空き店舗などを会場とし、商店街や大学教授が講師となって、さまざまな講座が開かれている。その内容は「歴史・文化」「ハンドメイド」「健康」「音楽」「食」など幅広く、7年間で1000コマ以上、受講者は2万人を超える。

 この電子化では、登録者にWebページを用意し、Webでの講座申し込み、スケジュール確認、過去の講座の動画閲覧などを実現。ここでもマイナンバーカードを使って個人認証する。「まちなかキャンパスは誰でも気軽に参加できるというスタイルなので、これまで講座ごとの参加人数は分かっても、実際に誰が参加しているのかは分かりませんでした。参加者の傾向を把握したいというのが電子化の狙いです」。

 機能としてはこのほか、出欠確認、メールでの休校案内、健康手帳などを実装。アンケートに答えた492名のうち、70%が一枚のカードでさまざまなサービスを享受できるのは便利」と回答した。特に「予約機能」が便利と答えた人は6割超。「高齢者からは(講座に加えて)PCの勉強にもなるとの声をいただいています」という。

 講座を受講するとポイントが発生し、商店街でのコーヒー代などとして使える仕組みも検証。まちなか情報(観光・イベント・買い物など)も提供し、商店街に人を呼び込むための“まち興し”としても取り組んでいる。

まちなかキャンパスの紹介

交通の効率化を図る仕組みも

 商店街への人の流入に関連したものとしては、「駐車場空き情報サービス」と「バス位置情報サービス」にも取り組んだ。

 前者は、まちなかに所在する5つの市営駐車場の空き情報をPC・スマホから無料で確認できるもの。空き情報の更新方法は、市営駐車場にいる係員にタブレットを持たせ、満車・空車のボタンを押してもらっている。このデータは公開し、経路案内サービスにて使用されている。「オープンデータの民間活用、というほど大きな話ではないが、オープンデータの取り組みの第一歩として実施しています」という。

 利用者数はおおよそ月間2000人で、148名へのアンケートでは6割から好評を得た。現在は市営のみだが、費用対効果が見込めれば民間駐車場にも広げたいという。

 後者は、バス内のスマホで常に位置情報を更新するアプリを活用し、バスの現在地を可視化するもの。位置情報は10秒に1回更新され、どこにいるかが正確に分かる。JR前橋駅・新前橋駅と渋川駅方面を結ぶ関越交通バス路線で運用されており、およそ5600人/月が利用している。151名へのアンケートでは7割以上から好評を得た。

駐車場空き情報サービス
バス位置情報サービス

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 まとめ。母子健康手帳やお薬手帳の電子化としては、行政が保有するデータを自動で反映し、医療連携にも活用する、一歩踏み込んだ取り組みといえる。モニターアンケートの意見にあったように「子どもの成長記録」だけでなく、いずれ「子育てのコミュニティ形成」にまで広がれば面白い。日本産婦人科医会が設立し、インテルやマイクロソフトも参画している、母子健康手帳のデータ記録法に関する統一方式の確立や、全国への普及、海外支援を図る「電子母子健康手帳標準化委員会(記事)」とも併せて注目したい。

 また、事業全体でマイナンバー制度による認証基盤を活用しており、他自治体にとっても参考となるのではないだろうか。今回は実証実験だったため、モニターからもセキュリティを不安視する声はなかったが、実用化された際にそのあたりがどうなるのかも気になるところだ。

 なお、今回の取り組みでは「前橋マイポータル」における学校情報配信の実用化が決まっている。同時に「母子健康ポータル」についても現在、富岡市、沼田市、渋川市、藤岡市、榛東村の近隣4市1村にも広げ、各自治体においてモニターを募集しているという。

川島 弘之