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NECの2024年度第1四半期連結業績、減収も最終赤字幅は縮小 ITサービス・社会インフラはともに増収増益に

 日本電気株式会社(以下、NEC)は30日、2024年度第1四半期(2024年4~6月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比2.3%減の6902億円、営業利益は前年同期のマイナス81億円の赤字から、45億円の黒字に転換。調整後営業利益は同122億円増の126億円、税引前利益は前年同期から8億円悪化のマイナス32億円、Non-GAAP営業利益は前年同期比157億円増の162億円、当期純利益は前年同期から15億円改善したが、マイナス58億円の赤字。Non-GAAP当期利益は前年同期のマイナス13億円の赤字から、105億円の黒字に転換した。

2024年度1Q実績サマリ・セグメント別

 NECの藤川修Corporate EVP兼CFOは、「売上収益の減少は、日本航空電子工業の非連結化によるものである。ITサービスおよび社会インフラともに、増収増益になっている。オペレーション改善効果は172億円となり、これも利益に貢献している」と総括した。

NEC 取締役 代表執行役Corporate EVP兼CFOの藤川修氏

セグメント別の業績

 セグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年同期比8.4%増の4183億円、調整後営業利益は前年同期から26億円増の145億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年同期比6.2%増の3401億円、調整後営業利益が前年同期から7億円減の102億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年同期比19.3%増の782億円、調整後営業利益が前年同期から33億円増の43億円となった。

 「ITサービスの売上収益は、国内、海外ともに好調である。調整後営業利益は、国内での構造改革費用や一時的な費用計上があったが、海外ではAvaloqを中心とした利益改善により増益。これまで取り組んできた収益性向上のための施策が着実に進展し、成果が表れている」と述べた。

ITサービスの概況

 国内ITサービスの受注状況は、全体では前年同期比13%増となり、NECファシリティーズを除くと同15%増と力強いものになった。業種別受注状況は、パブリックが同32%増、エンタープライズが同2%増、その他が同6%増となった。エンタープライズのうち、金融は7%減、製造が13%増、流通・サービスが同10%増となっている。また、その他のなかに含まれるアビームコンサルティングの受注額は同19%増。

 「パブリックは、大型案件の獲得と、自治体標準化案件の増加により、32%増という大幅増となっているが、大型案件を除いても10%強の増加となっている。金融は前年度の大型案件の反動でマイナスとなっているが、この大型案件を除くと2桁伸長となっており、好調を維持している。製造はDX関連の案件が増加。選別受注した効果もある。流通・サービスは大型案件の獲得もあり、好調を維持している。全体的に旺盛な需要が継続しており、足元での受注環境は好調であり、年間目標の達成に向けて着実に案件を積み上げている。今後に向けてもリスクはない」とした。

国内ITサービス 受注動向:前年度比

 社会インフラの売上収益は前年同期比2.8%増の2192億円、調整後営業利益は前年同期から104億円増の32億円と黒字化。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年同期比3.4%減の1639億円、調整後営業利益は前年同期から70億円増の3億円となった。ANS(Aerospace and National Security)の売上収益は前年同期比27.1%増の553億円、調整後営業利益は前年同期から35億円増の29億円となった。

 「テレコムサービスでは、ワイヤレス事業の非連結化と、グローバル5Gでの減収が影響したが、開発費やリソースシフトを含んだ費用の効率化により、調整後営業利益は大幅に改善。ANSは獲得した案件を着実に遂行し、増収増益となった」

社会インフラの概況

 その他では、売上収益が前年同期比50.9%減の529億円、調整後営業利益が17億円減のマイナス37億円の赤字となった。

通期業績見通しは据え置き

 一方、2024年度(2024年4月~2025年3月)通期業績見通しは据え置き、売上収益が前年比3.1%減の3兆3700億円、調整後営業利益は同14.1%増の2550億円、Non-GAAP営業利益は同12.0%増の2550億円、Non-GAAP当期利益は同7.2%減の1650億円としている。

年間業績予想の主要指標

 なお、今回から、セグメント別業績の算定方法の一部を変更し、コーポレート費用を各セグメントへ配賦。事業開発部門と知的財産部門は、その他に計上した。

 新たな算定方法でのセグメント別見通しは、ITサービスの売上収益は、前年比1.9%増の1兆9500億円、調整後営業利益が前年から79億円増の1920億円とした。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年比2.3%増の1兆6500億円、調整後営業利益が前年から29億円増の1680億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年比0.5%減の3000億円、調整後営業利益が前年から50億円増の240億円としている。

 社会インフラは、前年比8.6%増の1兆1700億円、調整後営業利益は前年比459億円増の1010億円を計画。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年比3.6%増の8300億円、調整後営業利益は前年から467億円増の740億円。ANSの売上収益は前年比23.1%増の3400億円、調整後営業利益は前年から9億円減の270億円とした。

 その他は、売上収益は前年比48.6%減の2500億円、調整後営業利益は前年から180億円減の、マイナス130億円の赤字を見込む。

 ITサービスは、国内は高水準であった2023年度から、さらなる成長を計画。海外では、Avaloqによる利益成長を織り込んでいる。社会インフラでは、売上収益は、ANSでのプロジェクトを確実に実行することで増収を計画。調整後営業利益は、テレコムサービスでのグローバル5Gの改善と、2023年度の一過性費用の剥落により増益を計画している。

セグメント別の業績予想

価値創造モデル「BluStellar」を説明

 決算説明会では、2024年度第1四半期のトピックスとして、5月30日に発表した価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」について触れた。

 NECの藤川Corporate EVP兼CFOは、「BluStellarによって、以前から進めてきたDXの取り組みを強化し、新たな価値創造に向けて、お客さまのビジネス変革を加速させる。NECは、BluStellarを、2025中期経営計画の達成に向けた成長エンジンに位置づけており、DX事業をさらに加速することになる」と位置づけた。

BluStellar

 BluStellarでは、構想策定をはじめとしたコンサルティングから、サービスデリバリー、運用、保守に至るまで、すべてのビジネスプロセスにAIをフル活用。「先端テクノロジーを集約し、AI技術とセキュリティをキーテクノロジーに位置づけて展開する。従来型のSIビジネスから進化し、顧客価値を最大化するValue Driverとなり、NECのDX事業を強化していくことになる」とする。

 また、人材育成プログラムを420社、3万人以上に提供。約400社のパートナーとの共創により、ビジネスを強化し、新たな市場価値を創出することを目指している。また、社内DX人材は、すでに1万人を突破し、今後1万2000人への拡大を目指し、デジタル化の浸透を図る。

 「グローバルのハイパースケーラーと戦略的協業や、共創パートナープログラムを推進しているほか、社員DX人材の育成だけでなく、社外にも人材育成プログラムを提供することで、デジタル化の浸透を図る。ビジネスモデル、テクノロジー、組織/人材を進化させることで、お客さまのビジネス変革を実現する」と述べた。

 BluStellarの具体的な成果についても触れた。

 東レエンジニアリングとは、PLMソフトウェアと生成AIを組み合わせた設計高度化の実証を開始。NECでは、デジタルIDや顔認証技術を組み合わせたデジタル社員証を、NECの社員2万人を対象に導入。ソフトバンクとは、生体認証領域を中心とした戦略的提携に合意したことも紹介した。「NEC自らが、0番目のクライアントとなる『クライアントゼロ』として、デジタル社員証を活用するといった取り組みも進めている」と説明した。

 また、2024年8月に、生成AIに関する事業戦略や製品開発の機能を集約した新組織として、約200人体制のAIテクノロジーサービス事業部門を新設することも明らかにした。