ニュース

NEC、2024年度上期連結業績は増収増益 年間予算の達成に向けて順調な進捗

NECネッツエスアイ株のTOBについても説明

 日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、2024年度上期(2024年4~9月)の連結業績を発表した。それによると、売上収益は前年同期比4.0%減の1兆4866億円、営業利益は同59.6%増の446億円、調整後営業利益は同33.2%増の610億円、税引前利益は同16.6%減の266億円、Non-GAAP営業利益は同40.6%増の648億円、当期純利益は同4.2%増の134億円。Non-GAAP当期利益は同46.5%増の374億円となった。

2024年度 上期実績 主要指標

 NECの森田隆之社長兼CEOは、「日本航空電子工業(JAE)の非連結化の影響を除くと、売上収益は前年同期比3.5%増、Non-GAAP営業利益は252億円の増加となり、増収増益となっている。セグメント別でもITサービス、社会インフラがともに増収増益となっている。上期実績は想定線であり、年間予算の達成に向けて順調な進捗である」と総括した。

NEC 取締役 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏

セグメント別の業績

2024年度 上期実績 セグメント別

 セグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年同期比5.6%増の8906億円、調整後営業利益は前年同期から92億円増の564億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年同期比4.3%増の7355億円、調整後営業利益が前年同期から59億円増の484億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年同期比12.7%増の1551億円、調整後営業利益が前年同期から34億円増の80億円となった。

 「ITサービスの売上収益は国内・海外ともに増収となり、好調に推移した。調整後営業利益は、国内での売上増や、海外でのAvaloqを中心とした利益改善により増益となり、着実に進捗している」とした。

ITサービスの概況

 第2四半期の国内ITサービスの受注状況は、全体では前年同期比17%増となり、NECファシリティーズを除くと同18%増となった。業種別受注状況は、パブリックが同38%増、エンタープライズが同2%増、その他が同15%増。エンタープライズのうち、金融は同11%減、製造が同11%増、流通・サービスが同14%増となり、その他のなかに含まれるアビームコンサルティングの受注額は同14%増となっている。

 なお、2024年度の売上収益に計上できる有効受注残は、前年度よりも4~5%高く推移しているという。

 「パブリックでは大型案件を獲得するとともに、自治体標準化プロジェクトの増加などにより大幅な増加となっており、大型案件を除いても10%の増加となっている。この領域では、先々の案件に対応するためのリソースが心配だといえる。金融はマイナスとなっているが、前年同期の大型案件を除くと増加しており、好調を維持している。また、製造向けはDX関連の案件が増加し、選別受注を続けるなかでも2桁の増加となり、流通・サービスは大型案件の獲得があった。複数年度にまたがる大型案件もあり、全体的に見ても、旺盛な需要が継続している。年間目標の達成に向けて着実に案件を積み重ねることができている」と語った。

 また、「これまでは収益性を重視してきたが、今後は、Wallet Shareの拡大や、新規領域への拡大にもしっかりと取り組んでいきたい。BluStellarによって、そうした領域にもフォーカスできるようなってきた」とも述べた。

国内ITサービス 受注動向:前年度比

 海外ITサービスの受注状況は、英国NECソフトウェアソリューションズUK(SWS)、デンマークKMD、スイスAvaloqの欧州3社の2024年度売上計画の2244億円に対して、第2四半期末時点での有効受注残が89%まで積みあがっており、「年間の売上計画は十分達成可能な進捗となっている。引き続き案件を積み重ね、年間計画の達成をより確実なものにしたい」と述べた。

欧州3社 2Q末有効受注残カバー率

 社会インフラの売上収益は前年同期比2.0%増の4853億円、調整後営業利益は前年同期から113億円増の177億円。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年同期比2.1%減の3570億円、調整後営業利益は前年同期から96億円増の95億円となった。ANS(Aerospace and National Security)の売上収益は前年同期比15.6%増の1282億円、調整後営業利益は前年同期から17億円増の83億円。

 テレコムサービスは、ワイヤレス事業の非連結化と、グローバル5Gでの減収がマイナスとなったが、開発費やリソースシフトを中心とした費用効率化により、調整後営業利益が大幅に改善。ANSは、獲得済みの案件を着実に遂行して、増収増益になっており、上期までに獲得した案件により、今年度の売上計画は達成できる見通しだという。
その他では、売上収益が前年同期比51.8%減の1108億円、調整後営業利益が79億円減のマイナス67億円の赤字となった。JAEの非連結化が影響している。

社会インフラの概況

2024年度の通期業績見通しは据え置き

 一方、2024年度(2024年4月~2025年3月)通期業績見通しは据え置き、売上収益が前年比3.1%減の3兆3700億円、調整後営業利益は同14.1%増の2550億円、Non-GAAP営業利益は前年比12.0%増の2550億円、Non-GAAP当期利益は同7.2%減の1650億円としている。

年間の業績予想は10月7日から変更なし

 国内ITサービスは、高水準であった2023年度から、さらなる成長を計画。海外ITサービスでは、Avaloqによる利益成長を織り込んでいる。社会インフラの売上収益は、ANSでのプロジェクトを確実に実行することで増収を計画。調整後営業利益は、テレコムサービスでのグローバル5Gの改善と、2023年度の一過性費用のはく落により増益を計画している。

セグメント別の通期業績予想

 2024年5月30日に発表した新たな価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」については、従来は、NEC Digital Platformと呼んでいた「BluStellar商材」の受注が、前年同期比40%増と大幅に拡大したことに言及。

 「エンタープライズだけでなく、パブリックでの大型案件もあって大きく成長した。業種に特化した価値創造シナリオを提供しており、エンタープライズにとどまらず、パブリック向けにも業種特化のシナリオの拡充を進めている。また、モダナイゼーション案件を中心に、AIやセキュリティ商材を活用した高収益案件が拡大しており、売上成長だけでなく、収益性の改善も図っている」と述べた。

 さらに、生成AIを活用したユースケースが拡大していることにも触れ、2024年9月から、生成AIと音声認識を搭載したコンタクトセンター向けプラットフォームの提供を開始していることや、10月からは、ハルシネーション対策機能の提供を開始し、顧客の安心安全な生成AIの活用を支援するという。

BluStellarについて

 NECの藤川修Corporate EVP兼CFOは、「BluStellarは、収益性を高めていくことができる。BluStellarの売上収益は前年同期比3割増となっている。BluStellarによって打っている戦略が売上収益につながっている」と自己評価。「バリュープライシングという考え方により、お客さまの効率化や、新たなビジネスの創出などの価値を創出することを目指し、既存のSIよりも高い利益率を目指していく」と語った。

NEC取締役 代表執行役Corporate EVP兼CFOの藤川修氏

NECネッツエスアイに対する株式の公開買い付けを実施

 一方、10月29日に発表したNECネッツエスアイに対する株式の公開買い付けについても説明した。

 現在、51.36%の出資比率を持つNECネッツエスアイを完全子会社化した上で、NECネッツエスアイ、NECネクサソリューションズ、NECの3社による事業再編を実施。新設する中間持ち株会社のNESICホールディングス(仮称)の傘下に、NECネッツエスアイとNECネクサソリューションズを配置し、一体的な事業運営を行う。株式の公開買い付け費用は2355億円。

NECネッツエスアイ株式会社株式に対する公開買付けの実施

 現在の事業領域に加えて、全国の自治体およびSME(中堅中小企業)に対して、ITおよびネットワークを統合したDXソリューションを提供。コンサルティングからSI、工事、保守までを、一気通貫で提供できる事業体制を構築する。

 具体的には、NECネッツエスアイのネットワークソリューション、ICTインフラ工事および保守、全国対応の体制と、NECネクサソリューションズの自治体およびSME向けITサービス、業種ノウハウやSIアプリケーションの強み、東名阪での対応力を生かすとともに、NECの消防防災事業をNECネッツエスアイに、自治体およびSME向けITサービス事業をNECネクサソリューションズにそれぞれ承継。3社による事業再編により、DX需要が本格化する全国の自治体およびSME向けビジネスを強化することになる。

株式公開買付けおよび事業再編の概要

 NECの森田社長兼CEOは、「約3年前から、両社の企業価値の拡大につながる協業のあり方や将来のあり方について議論を進めてきた」とし、「デジタル田園都市構想のなかで、自治体のデジタル標準化が加速するとともに、中堅中小企業でもDXの取り組みが本格化することが見込まれている。これまでは工事部門がNECとNECネッツエスアイに分散しており、効率的な対応ができていなかったが、100%子会社化し、グループ全体で対応できるようになる。ネットワークやプラットフォームに強いNECネッツエスアイの事業の上に、NECネクサソリューションズのITアプリケーションを乗せて販売することも可能だ。工事を含めて、エンドトゥエンドで対応し、全国規模でデリバリーができるSIerというユニークな強みを生かし、DXを契機としたITサービスを支えるネットワークへの需要増大をとらえていく。消防防災事業も再編し、地方に対してもきめ細かい対応ができる」などとした。

 また、グループ再編やM&Aの考え方についても説明。森田社長兼CEOは、「グループの力を200%出していきたいと考えている。NECネッツエスアイを中心とした今回の取り組みは、その第1歩にも、第2歩にもなる」とし、「NECキャピタルソリューション、JAE、そして、NECネッツエスアイという上場3社の方向性を決めることができた。NECグループとしての力を発揮できる絵が描ける。NECソリューションイノベータやNECフィールディングも100%子会社であり、グループとしての最適化、最大化ができる環境にある」と語った。

 さらに、「2025年度までに4000億円規模の成長投資を行っていく。DGDFやNetcrackerの周辺領域、日本企業のグローバルロールアウトなどに対して、デリバリー能力を発揮するためのM&Aについて、機会を探っている」とも述べた。