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ヤマハネットワーク製品の30周年を記念した「Yamaha Network 30 Years」を開催
2026年夏の発売に向けWi-Fi 7対応のアクセスポイントを開発中
2025年12月18日 06:15
SCSK株式会社とヤマハ株式会社は、ヤマハネットワーク製品の30周年を記念するイベント「Yamaha Network 30 Years」を12月16日に開催。これまでの30年の歩みを振り返るとともに、これからのビジョンが語られた。
また、今年リリースされた製品として、ギガアクセスVPNルーター「RTX840」と、小規模向け無線LANルーター「NWR100」、100ギガ/25ギガ対応スイッチ「SWX3220/2320xシリーズ」が紹介された。
そしてイベントの最後には、2026年夏にWi-Fi 7対応の無線LANアクセスポイントを発売すべく開発を進めていることが明らかにされ、デザイン模型も公開された。
開会あいさつに立ったヤマハ株式会社の田中需氏(音響事業本部 事業企画統括部 統括部長)は、1995年のISDNルーター「RT100i」以来、30年で累計560万台以上の機器を出荷したことを紹介し、SIerや販売代理店などのパートナー、顧客に感謝を述べた。
また閉会あいさつに立ったSCSK株式会社の小峰正樹氏(執行役員 常務 ITインフラサービス事業グループ長)は、ヤマハネットワーク製品が高い信頼性を保って国内メーカーならではの価値を追求し、医療・教育・自治体など社会のインフラを支えてきたと説明。そしてネットワークの重要性がますます高まりつつある中で、ヤマハとともに最適なネットワークを提供し続けると語った。
ヤマハネットワークのこれまでとこれから
イベントの前半では、ヤマハ株式会社の山本欣徳氏(音響事業本部 プロフェッショナルソリューション事業部 ネットワーク事業推進室 室長)が中心となり、ヤマハのこれまでの取り組み、目指すビジョンとロードマップ、そしてメディアとネットワークという3つのテーマが語られた。
山本氏は、ヤマハの30周年に対するメッセージを紹介。その中でも特に「『やっぱり、ヤマハがいいね』と感じていただけるようなネットワーク製品とサービスを提供し続ける」という言葉を強調した。
30年の歴史:ISDNのLSIからルーターへ、顧客との近さと高い期待に応え続けることを大切に
ヤマハのこれまでの取り組みについては、RT100iから開発に関わってきたヤマハ株式会社の広瀬良太氏(音響事業本部 基盤技術開発部 部長)との対話形式で語られた。
最初は「ヤマハがルーターを開発することになったのはなぜ?」。これについて広瀬氏は、ヤマハが音響技術を元にISDNのLSIを開発したこと、ISDN回線がまだ普及しておらず、機器があまり出ていなかったのでLSIも売れなかったこと、そして、PCがLANでつながり始めてLANの遠隔接続のニーズもあるんじゃないかと考え、自分たちでISDNルーターを開発したことを紹介。「ただし、販路がまったくない状態で作ってしまったのが、挑戦というより無謀だったなと思う」と苦笑まじりに振り返った。
その中で、販路として住友商事名古屋支店を紹介されて扱ってもらうことができ、それがSCSKにつながることになったと語った。
2つめは「開発の中で、特に思い出深い出来事は?」。これについて広瀬氏は、開発の初期からWIDEプロジェクトの協力があったと回答。住友商事名古屋支店も、WIDEプロジェクトの紹介だったと述べた。
中でも記憶に残ることとして、ある回のWIDE合宿の大浴場で、ダイナミックDNS「ネットボランチDNS」(2002年リリース)のアイデアを議論したエピソードが語られた。インターネット電話の機能を開発していたときに、電話番号の解決にDNSを使えないか、ついでにホスト名も対応してしまおうということで、「思いつきだったが、結果としてシンプルで使えるものが実現できた」と広瀬氏は語った。
「大きなターニングポイントは?」については、ヒット製品や、Wi-Fi製品からLANに踏み出したこと、YNOでクラウドに拡張したことを挙げつつ、「それらに比べて目立たないが」としながらも、2001年の「RT105e」を広瀬氏は選んだ。
選んだ理由は「初めてISDNを載せなかったモデルだった」こと。ISDNのLSIが起点となってスタートし、競合との差別化になっていたポイントだったが、ちょうどインターネットアクセスがISDNからブロードバンドに変わってきたこともあって決断。「それまでのプロダクトアウトからマーケットインを実現できた製品だった」と広瀬氏は語った。
「これからも、ヤマハが変えてはいけないことは?」については、広瀬氏は「お客さまとの近さ」と答えた。RT100iで始めたころには、インターネットはアーリーアダプターのもので、自然と近い距離にあった。しかしいまはビジネスの道具になっており、「われわれの方から近づいていく努力をしなければいけない。その努力により、ヤマハネットワーク製品に対する信頼と安心を届けたい」と広瀬氏は語った。
最後の「モノづくりで大切にしてきたことは?」に対して、広瀬氏は「ヤマハに対する高い期待に応え続けること」と回答。「ネットワークの本質はつながり続けること、ということを守りながら、便利さも提供してきた。これからももっと進化していくことが大事だと考えている」と語った。
目指すビジョン:「人が管理しないネットワーク」
目指すビジョンとロードマップは、SCSK株式会社の角林史崇氏(ITインフラサービス事業グループ ネットワーク事業本部 シニアマネージャ)と山本氏の2人により語られた。
まず両氏は、ヤマハが製造してSCSKが販売するという形にとどまらず、両社一体の取り組みをするようになったことを説明。開発・マーケティング・販売と一体の取り組みを回すことで、競争力と魅力のある製品やサービスを創造し、持続的なビジネス成長を実現すると語った。
また、ネットワークの重要性がいっそう高まるAI時代における課題として、ネットワークを使う人やつながるモノが増える一方で、ネットワークを運用する人が不足することが予想されることが挙げられた。
これに対してヤマハが目指すのは「人が管理しないネットワーク」だと山本氏。「将来、ヤマハのネットワークは、自律性を持って運用される、環境に応じたセキュリティが担保されるという、人が管理しないネットワークを目指して開発していきたい」と語った。
例えば、これまで、ネットワークはサービス開始の1年前にSIerなどに発注して構築されてきたが、経営層からはもっと早くしてほしいという要求が出てくる、と角林氏は説明。これに対して山本氏は、導入までの負担を軽く期間を短くしていきたい、さらに運用管理においても自律化や省力化を進めたいとして、「ヤマハの知見やデータを基にして、AIを活用したサービス化を実現していきたい」と語った。
それに向けた取り組みとしては、技術的な支援や、製品情報の提供、統合管理の進化が挙げられた。
ロードマップ:拠点用10Gルーターや5G無線WAN対応を企画
製品やサービスのロードマップも両氏が紹介した。
まずルーターについては、拠点用10Gルーターや、5G無線WAN対応を企画していることが語られた。
スイッチについては、今回の10G多ポートスイッチのように、ハードウェアラインアップを拡充していることや、管理性を高める拡張をしていきたいことが語られた。
無線LANアクセスポイントについては、性能面だけでなく、トラブルシュートなど設定・運用の省力化機能を拡充していきたいと語られた。
サービスでは、クラウド管理のYNOについては、自律的なネットワークを実現する基盤に進化していきたいとして、異常予測や自動運用などに向けた実装をしていくことが示された。
セキュリティ機能については、SMBに最適な提案として、いまはクラウド型セキュリティを開発しており、将来は認証サービスも予定していることに触れたほか、グローバル展開については、現地での製品を増やすことや、新しい地域も増やしていきたいとの意気込みが語られた。
音楽ライブをそのままネットワーク伝送や保存できる「ライブの真空パック」
ヤマハの現在の取り組みとして、メディアとネットワーク、つまり音や映像のネットワーク伝送の技術についても、ヤマハ株式会社の柘植秀幸氏(新規事業開発部 RSVプロジェクト 主催)が紹介した。
柘植氏は、音楽のライブが「見たくても見られない」ことがたくさんあること、それに対してライブのCDやDVDがあるが、ライブの体験とかけ離れていることを指摘。また、映画館でライブ映像の上映会でも、臨場感や迫力のある音環境が不足していると語った。
そこで柘植氏が提案するのが、パフォーマンスをそのまま再現する「ライブの真空パック」のコンセプトだ。これには、「Real Sound Viewing」と「Distance Viewing」がある。
まずReal Sound Viewingは、楽器の生音によるライブ再現だ。自動ピアノの全楽器版と言えるもので、鍵盤楽器や打楽器、弦楽器、電気楽器を、プレイヤーの演奏に基づいて自動演奏する。ロックバンド「LUNA SEA」がアンバサダーに就任した。
もう一方のDistance Viewingは、照明などの空間演出を再現する仕組みだ。例えば、ライブ映像はリモート上映しつつ、それに合わせて会場を照らす照明などは会場でリアルに実施する。すでに7回の有償イベントを実施し、高い満足度を得ているという。
柘植氏は、これらの最終目標として、絵画や彫刻のように、ライブの「音楽(無形文化)遺産の保存」を掲げた。
要素技術としては、会場に搬入しやすい組み立て式の「パネル型スクリーン」や、各種データをずれなく同期させて記録するためにオーディオデータの中にほかの要素を入れるデータフォーマット「GPAP(General Purpose Audio Protocol)」を開発したと、柘植氏は紹介した。
今年の新製品を紹介
イベントの後半では、ヤマハ株式会社の新井田博之氏(音響事業本部 プロフェッショナルソリューション事業部 ネットワーク事業推進室 主事)と、SCSK株式会社の荻野正輝氏(ITインフラサービス事業グループ ネットワーク事業本部 ネットワークプロダクト第一部 販売促進課)が、2025年にリリースした製品を紹介した。
具体的な製品は、拠点用ルーター「RTX840」と、無線LANルーター「NWR100」、100ギガ/25ギガ対応スイッチ「SWX3220/2320xシリーズ」だ。
RTX840:RTX830の後継として、性能とクラウド対応を向上しつつ従来モデルとの互換性を維持
まずは、8月にリリースされた拠点用ルーター「RTX840」だ。ベストセラーモデル「RTX830」の後継で、「従来モデルとの互換性を維持しつつ性能を向上」と「ローカルブレイクアウトの手軽な運用に対応」の2点を特徴とする。
背景として、クラウドサービスの利用増加がある。これに対し、RTX830/RTX810を使っている顧客がスムーズに置き換えできるようにして、中堅・中小企業でもいっそう増加するクラウド利用を最適化することをコンセプトとして開発された。
性能面では、NAT・動的フィルターの最大セッション数を6万5534から15万に増やし、TCPコネクション性能を30%向上させた。その一方で、外見寸法やポート構成はRTX830を踏襲。コンフィグもRTX830からそのまま移行できる。
そして、Microsoft 365など会社で定めたクラウドサービスを拠点から利用する場合、センタールーターを経由せず、拠点から直接接続する「ローカルブレイクアウト」に対応した。これにより、センタールーターに負荷がかかるのを避けられるという。
NWR100:10~20人規模の拠点に向けて、ネットワークのトラブル解決を支援する「ウェルネスモニター」を搭載
続いて、9月にリリースされた、新しいコンセプトの無線LANルーター「NWR100」だ。10~20人規模の拠点でネットワークに不慣れな1人情シスが的確に課題を解決できることを目指し、無線LANとトラブルシューティングの機能を搭載したオールインワンルーターとして開発された。
開発にあたっては、家庭用とは違う企業向けの品質を担保しつつ、ネットワークに詳しくない人でも使えることが意識された。
具体的な利用環境の課題としては、イベントで声を集めた。まず、無線が「つながらない」場合に、小規模拠点ではどうすればいいかがわからないため、簡単にトラブルシュートができることが求められた。また、そのような拠点では、ルーターの設定にGUIのみを使う人が40%で、残り60%のCLIを使っている人でもGUIを併用する人が多く、必要な機能が簡単に設定できるGUIが求められていることがわかったという。
この課題に対して、NWR100では、ネットワークのトラブルを可視化して早期解決を支援するためのGUI新機能「ウェルネスモニター」を搭載した。「本体情報ボード」「無線LAN情報ボード」「端末一覧ビュー」「接続切断ビュー」の4つの機能を備えている。
NWR100のウェルネスモニターについては、SCSK株式会社の山科正幸氏(ITインフラサービス事業グループ ネットワーク事業本部 ネットワークプロダクト第一部 技術課 課長代理)がデモ動画で紹介した。
デモのシナリオで対応するのは、無線LANルーターのトラブルのうち、3種類の障害だ。
1つめのケースはWAN側の障害。「本体情報ボード」を見ると、警告が表示されている。その詳細を見ると、プロバイダー接続の切断が検出されていることがわかり、解決方法も表示される。
2つめのケースは電波干渉だ。「無線LAN情報ボード」を見ると、問題検出が表示されている。詳細を見ると、同一チャンネルを使用する無線LANアクセスポイントにより通信が不安定になっている可能性が指摘されている。さらに、その問題が検出された時点でのネットワーク状況がスナップショットとして示され、デモの例では周辺のSSID情報から問題が特定された。
3つめのケースは、1台の端末が無線LAN接続に失敗したものだ。「端末一覧ビュー」を見ると、接続失敗端末があると表示されている。そこから、その端末の詳細情報を見ると、デモの例では、鍵交換に失敗していることがわかり、さらにその詳細からパスワードのミスであることがわかった。
SWX3220/2320xシリーズ:100ギガ/25ギガに対応、YNOからの管理も
3つめは、100ギガ/25ギガ対応スイッチ「SWX3220/2320xシリーズ」だ。12月のイベントの前週にリリースされた。
特徴は、100ギガ/25ギガに対応したこと、音声・映像の伝送のためのプロトコルに対応していること、クラウド(YNO)から直接の管理に対応したことの3つがある。
発表された製品としては、インテリジェントL2スイッチ「SWX2320-30MC」と、そのPoE給電対応モデル「SWX2322P-30MC」、スタンダードL3スイッチのRJ45多ポートモデル「SWX3220-30MC」、SFP+の多ポートモデル「SWX3220-30TCs」の4モデルがある。L3スイッチの2モデルについては、ホットスワップ可能な電源の冗長化に対応している。
音声・映像の伝送(AVoIP)のための低遅延や高精度時刻同期に対応する。さらに、AVoIPの各プロトコルに最適な機器設定のセットをプリセットとして用意し、簡単に設定できるようになっている。このプロファイルは、ソフトウェア設定だけでなく、本体背面のDIPスイッチから指定することもできる。
そしてクラウド管理の「YNO」では、これまではルーターがマスターとして接続する必要があったのに対し、スイッチがマスターとなって直接YNOと接続できるようになった。これにより、ヤマハルーターがない環境でも、スイッチがマスターとなって配下のネットワーク機器をYNO経由で管理できる。
「SWX3220/2320xシリーズ」についても、SCSK株式会社の山科氏がデモ動画で紹介した。
YNOのダッシュボードでは、左のメニューに「スイッチ」の項目がある。ここからスイッチの一覧が見られる。ここでスイッチを選んで、その機器のダッシュボードにアクセスできる。
また、マスターとなっているスイッチを介して、その配下のネットワークをLANマップで表示でき、無線LANアクセスポイントなども見え、アクセスすることもできる。
そのほか、DIPスイッチでは、6つのスイッチの機能の組み合わせによって、プリセットタイプを選べることも、山科氏は紹介した。
Wi-Fi 7対応の無線LANアクセスポイントを2026年夏発売に向けて開発中
最後に「One more thing」として、ヤマハ株式会社の秦佑輔氏(音響事業本部 プロフェッショナルソリューション事業部 ネットワーク事業推進室 主事)が登場。冒頭で紹介したように、Wi-Fi 7対応の無線LANアクセスポイントを、2026年夏に発売すべく開発を進めていることが明らかにされた。
まだ開発中ということで、細かいスペックより、どういう考えで開発しているかについて秦氏は説明した。
まず、2モデルが予定されている。コストと性能のバランスを重視した「スタンダードモデル」と、高密度・高いトラフィック環境でも安心な「パフォーマンスモデル」だ。なお、Wi-Fi 7以前の規格の既存製品も併売する。
管理機能面では、人手不足とトラブルの高度化の一方で、早期復旧の重要性が増大しているのに対応する「新トラブルシュート」を搭載。UXをゼロから見直し、現場に寄り添った機能にするとのことで、「どうぞご期待ください」と秦氏は語った。
デザインも新しく見直された。コンセプトは、「アクセスポイントは“隠す”時代から“見える”時代へ」。最近のデザイン重視のオフィスや店舗では、天井が露出してパイプなどが見える状態で、天井裏がないところも増えている。そこで、アクセスポイントが空間の雰囲気を壊さないデザインを考えたという。
会場では、2種類のデザインの模型も披露された。
1つめは、黒の半透明のもので、露出した天井に合うものとしてデザインされた。もう1つは、ホワイトのもので、明るい空間になじむものとして、あるいは“迷ったらこれ”の定番色としてデザインされた。



















































































