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NEC、2023年度第3四半期累計の連結業績は増収増益 ITサービス・社会インフラともに好調
2024年1月31日 00:00
日本電気株式会社(以下、NEC)は30日、2023年度第3四半期累計(2023年4~12月)の連結業績を発表した。
売上収益は前年同期比5.5%増の2兆3932億円、営業利益は同22.3%増の698億円、調整後営業利益は同16.3%増の970億円。税引前利益は18.3%増の681億円、Non-GAAP営業利益は同150.7%増の461億円、当期純利益は同29.1%増の340億円、Non-GAAP当期利益は同55.8%増の546億円となった。
また第3四半期単独(2023年10月~12月)では、売上収益は前年同期比3.8%増の8445億円、調整後営業利益は同1.9%減の512億円、Non-GAAP営業利益は同1.0%増の533億円、Non-GAAP当期利益は同2.8%増の291億円となった。
NEC 取締役代表執行役 Corporate EVP兼CFOの藤川修氏は、「第3四半期累計では、ITサービス、社会インフラともに増収増益になった。9カ月間の実績は、想定線と評価しており、年間予想の達成に向けて順調な進捗となった」と総括した。
なお調整額では、前年度に計上した資産売却益や知財収益の反動減、社内DX投資の増加などにより、第3四半期単独で192億円の費用増となっている。
セグメント別の業績
第3四半期累計のセグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年同期比10.9%増の1兆3145億円、調整後営業利益が前年同期から283億円増の1061億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年同期比12.8%増の1兆987億円、調整後営業利益が前年同期から268億円増の979億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年同期比2.3%増の2158億円、調整後営業利益が前年同期から14億円増の82億円となった。
「ITサービスの売上収益は、引き続き、国内の企業向け、官公庁向けが好調に推移したことで増収。売上収益に伴う利益増に加えて、国内SIの収益性向上も寄与して増益となった」という。
ITサービスにおける第3四半期単独の受注状況は、全体では前年同期比2%増となり、NECファシリティーズを除くと同4%増になる。そのうち、国内が同4%増、海外(DGDF)が同3%減。国内の業種別受注状況は、パブリックが同3%減、エンタープライズが同8%増、その他が同4%増となった。国内エンタープライズのうち、金融は同11%増、製造が2%減、流通・サービスが同10%増となっている。
NECの藤川CFOは、「国内ITサービスは、落ちるといった状況が見えないほど需要が旺盛である。パブリックは2021年度から2022年度にかけて大きく伸長したが、その勢いを維持している。金融も前年度には大きく伸長し高い水準となっていたが、その反動がなく、さらに上回る実績となっている。製造では、採算性の観点から受注案件を選別し、高収益案件にシフトしたことが理由となり、受注が減少したが利益率は上昇している。また、流通・サービスは流通案件が牽引し好調に維持している。国内その他では、アビームがすべての案件に応えられないほど好調に推移しているほか、第3四半期からは消防防災案件の受注が増加に転じている。来年、再来年に向けて消防防災案件が本格化してくるが、それに向けた活動を進めることができている」と述べた。
海外では、前年度のAvaloqの大型案件の反動減があったが、KMDおよびNEC Software Solutions UKは増加しているという。
社会インフラの第3四半期累計の売上収益は前年同期比2.5%増の7356億円、調整後営業利益は前年同期から44億円増の313億円。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年同期比0.8%増の5606億円、調整後営業利益は前年同期から5億円減の141億円となった。テレコムサービスでは、第3四半期において、ワイヤレス事業の譲渡に伴う構造改革費用として30億円を計上している。また、ANS(Aerospace and National Security)の売上収益は前年同期比8.2%増の1750億円、調整後営業利益は前年同期から49億円増の172億円となった。
「テレコムサービスは前年並みの実績となったが、ANSは、大型案件の獲得により、第3四半期累計の受注は前年同期比60%の増加となった。第3四半期だけでは、防衛領域を中心に大型案件の獲得もあり、2倍強の受注額となっている。防衛省の契約件数は前年同期比で50%強増えている。ANSは、売上収益、調整後営業利益も堅調に推移している」と述べた。
グローバル5Gでは、戦略受注の停止や資産クリーンアップ、構造改革などをマネージし、オペレーションを改善。第3四半期までに100億円強の改善ができているという。
その他では、売上収益が前年同期比6.3%減の3431億円、調整後営業利益が前年同期から1億円増の163億円となった。
2023年度通期業績見通しは据え置き、セグメント別は調整
一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)通期業績見通しは、7月公表値を据え置き、売上収益は前年比2.0%増の3兆3800億円、調整後営業利益は同7.0%増の2200億円、Non-GAAP営業利益で前年比11.7%増の2200億円、Non-GAAP当期利益で同5.4%増の1400億円としている。
だが、セグメント別では、第3四半期までの進捗を考慮し、年間予想を修正。ITサービスは、売上収益で300億円増額し、前年比4.3%増の1兆8300億円、調整後営業利益が100億円増額し、前年比190億円増の1879億円に上方修正した。これらは、国内ITサービスの上方修正によるもので、海外は見通しを据え置いている。
社会インフラは、売上収益は据え置き、前年比2.1%増の1兆850億円としたが、調整後営業利益は50億円減少し、前年比162億円増の900億円に下方修正。その他は、売上収益は300億円減の前年比6.2%減の4650億円、調整後営業利益は50億円減少の前年比18億円減となる220億円に下方修正した。
ITサービスは、好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に、増収を計画する一方、社会インフラは、ANSでの増収を計画。テレコムサービスは下方修正するものの、前年度の一過性要因の解消もあり増益を計画している。
「国内ITサービスは好調な事業環境が継続している。エンタープライズを中心に上方修正を行った。また、テレコムサービスではグローバル5Gでの損益改善は計画通りに進捗しているが、ワイヤレス事業の譲渡による影響を中心に下方修正した。だが、ANSは防衛領域における受注の好調ぶりを反映している」と語った。
生成AIの取り組みを説明
一方、生成AIの取り組みについても説明した。
NECでは、独自開発の生成AIを「cotomi」と命名。高い日本語性能を生かしながら、さまざまな業種や業務に特化したモデルを中核に、顧客のビジネスに最適な生成AIの利用環境の提供を目指していることを強調。具体的には、品質の良いデータを大量に学習させることでcotomiを強化し、業務・業種特化モデルを整備。パッケージやソリューションに組み込むための「マネージドAPIサービス」を提供することを発表している。また、他社比で最大150倍となる30万字までの長文処理を可能できることも発表した。
さらに、三井住友海上火災保険では、商品マニュアルや事務マニュアルを搭載した照会応答機能を、2023年10月から全社員が利用開始。東北大学病院や橋本市民病院との連携では、医師の働き方改革に向けて、医療現場におけるLLM活用の有効性を実証するといった成果があがっているという。
「生成AIを活用した価値創出を拡大しており、日本の生成AI市場をリードしていく」との姿勢を示した。