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富士通、Physical AIやAIエージェントを連携させる「Fujitsu Kozuchi Physical AI 1.0」を開発

 富士通株式会社は24日、10月3日に発表したNVIDIAとの協業における最初の成果として、NVIDIAのソフトウェアスタックと富士通の技術の統合により、Physical AIやAIエージェントをシームレスに連携させる技術「Fujitsu Kozuchi Physical AI 1.0」を開発したと発表した。

 同技術のコア機能として、機密性の高い業務ワークフローのセキュアな自動化を可能にするマルチAIエージェントフレームワークを公開し、第一弾として富士通の大規模言語モデル(LLM)「Takane」をベースとした「Fujitsu Kozuchi AI Agent」として、購買部門の調達業務の自動化・効率化を支援する特化型のAIエージェントを搭載した。今後、技術を発展させた富士通のPhysical AI関連技術を順次公開する予定としている。

 富士通では、AIエージェントの発展は目覚ましい一方で、その適用は企業の業務ワークフローの一部にとどまっており、各企業内や企業間にまたがる事務処理や、部署間、企業間の調整を行う複雑な業務ワークフローへの適用は進んでいないと指摘する。AIエージェントによる業務ワークフローの高度な自動化を実現するためには、その業種や企業に特化したAIエージェントを開発した上で、AIエージェントが業務ワークフローに含まれる機密情報をセキュアに処理し、業務ワークフローの保守性を担保する必要があるとしている。

 同様の課題は、AIエージェントが物理的なロボットを介して現実世界に直接作用するPhysical AIにも存在し、今後AIエージェントが各ロボットと相互に連携しながら高度なタスクを実行する上で、現場業務の理解に加え、現実世界においても機密情報をセキュアに共有し、処理することが期待されるとしている。

 富士通は、こうした課題を解決するため、バージョン管理やアップデート機能を提供することで保守性を向上させるNVIDIA NIMマイクロサービス(以下、NIM)と富士通の技術を統合した「Fujitsu Kozuchi Physical AI 1.0」を開発し、機密性の高い業務ワークフローのセキュアな自動化を可能にするマルチAIエージェントフレームワークと、企業購買部門の調達業務の自動化・効率化を支援する特化型AIエージェントの2種類のコア機能についてトライアル環境を提供する。

 マルチAIエージェントフレームワークは、ビジュアルな設計インターフェイスにより業務ワークフローを構築できる機能。抽象的なビジネス課題をチャット形式の対話で理解し、無数の解の中から最適なAIモデルを活用した具体的なソリューションを自動的に探索・提案する技術「Fujitsu Composite AI」により、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」のNIMに対応したコア技術や特化型「Takane」を自動で組み合わせることで、マルチAIエージェントを活用した保守性の高い業務ワークフローを短期間で構築し、さらにセキュアエージェントゲートウェイによりセキュアな業務ワークフローを構築できる。

 特化型AIエージェントは、「Takane」をベースとした「Fujitsu Kozuchi AI Agent」として、帳票理解・購買規約解析・適合チェックにそれぞれ特化させた3種類のAIエージェントを開発し、企業購買部門における調達業務のワークフローの自動化を可能にした。

 帳票理解の特化型AIエージェントは、マルチヘッダなどを含む複雑な帳票の構造を理解し、高い精度で帳票を構造化データに変換する。購買規約解析の特化型AIエージェントは、購買規約を解析し、チェック用プロンプトを生成する。適合チェックの特化型AIエージェントは、この構造化された帳票データとチェック用プロンプトにより、規約の適合チェックを自動で行う。適合チェック後の見積もり依頼は、セキュアエージェントゲートウェイを介して機密情報などが記載されていないかが確認され、社外の発注先へと送信される。

 富士通の購買部門での実証実験では、これら3種類の特化型AIエージェントを用いることで、発注確認業務工数が約50%削減できることを確認した。またNIMに対応することにより、推論速度が50%向上することが見込まれ、一日あたり数百件におよぶ社内規約適合チェック業務の高速化を実現するとしている。

マルチAIエージェントフレームワークによる調達業務ワークフローの構築イメージ

 富士通は今後、ソブリン領域に向けて、NVIDIAと協力して技術を発展させ、2025年度中に、顧客環境においてAIが自律的に学習・進化するAIエージェント技術の実現を目指す。さらに、AIエージェントが物理的なロボットを介して現実世界に直接作用するPhysical AI領域へと順次拡張していき、AIエージェントとロボットのシームレスな協調を実現し、現実世界における業務を理解した複数ロボットが高度に協調する社会を目指すとしている。