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NEC、2025年度の第1四半期連結業績は増収増益で黒字に転換 国内ITサービスの受注は引き続き高水準を維持
2025年7月30日 00:00
日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、2025年度第1四半期(2025年4月~6月)の連結業績を発表した。
売上収益は前年同期比3.7%増の7156億円、営業利益は同679.5%増の353億円、調整後営業利益は同228.8%増の417億円、税引前利益は前年同期の33億円の赤字から、321億円の黒字に転換。Non-GAAP営業利益は前年同期比145.4%増の399億円、当期純利益は前年同期の58億円の赤字から193億円の黒字に転換し、Non-GAAP当期利益は前年同期比111.7%増の222億円となった。
NEC 取締役 代表執行役Corporate EVP兼CFOの藤川修氏は、「Non-GAAP営業利益は、前年同期比約2.5倍と大幅な増益となった。また、ITサービス、社会インフラともに増収増益になっている。国内ITサービスは、BluStellarを中心に収益向上施策の効果が発現したことが影響しているほか、国内ITサービスの受注が引き続き高水準を維持している。第1四半期の実績は、年間計画の達成に向けて順調な進捗となった」と総括した。
第1四半期のNon-GAAP営業利益におけるオペレーション改善効果は237億円増となっており、「計画値に対しては100億円程度のプラスになっている。国内ITサービスにおけるミックスの改善や費用改善で約80億円、テレコムサービスでの一部案件の前倒しで約20億円が、計画に対する上振れ要因になっている」とした。
- 会見で説明した「計画に対する上振れ要因」についてNECより訂正がございましたので、初出時の記載を変更しました。
セグメント別の業績
セグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年同期比2.6%増の5147億円、調整後営業利益は240億円増の367億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年同期比3.9%増の4393億円、調整後営業利益が226億円増の301億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年同期比4.7%減の754億円、調整後営業利益が24億円増の65億円となった。
「国内は、前年度に大幅な受注増となったパブリックが増収を牽引した。調整後営業利益では、BluStellarを中心としたパブリック、エンタープライズにおける収益性向上に加え、子会社の費用改善も寄与して大幅な増益となった。海外は、KMDにおける低収益事業の収束により減収となったが、前年度に計上した構造改革費用の剥落によって増益になった」という。
国内ITサービスのうち、BluStellarの売上収益は前年同期比14.4%増の1249億円、調整後営業利益は同41億円増の139億円となり、ベース事業の売上収益が前年同期比0.3%増の3144億円、調整後営業利益は同185億円増の163億円となった。
「ベース事業は、高収益案件や費用効率化を含む収益性向上に取り組んだ効果が出ている。利益意識を高めた活動を推進してきたことが貢献している。また、前年度に計上した一過性費用の剥落や、今年度に計上した子会社売却益もあって増益となった」という。
国内ITサービスの受注状況は、全体では前年同期比3%減。だが、前年度の大型案件の影響や法人向けPCの販売機能移管の影響を除くと、前年同期比11%増を維持しているという。
業種別受注状況は、パブリックが前年同期比7%増、エンタープライズが同11%減、子会社他が同7%減となった。エンタープライズのうち、金融は同7%減、製造が同2%減、流通・サービスが同19%減。また、子会社他のなかに含まれるアビームコンサルティングの受注額は同14%増となっている。
「DXに対しては待ったなしという状況にあり、DX需要は引き続き堅調である。また、モダナイゼーションに対する動きも出ている。業種別には、パブリックは自治体システム標準化や消防防災案件が寄与して堅調に推移。エンタープライズは、流通・サービスでの前年同期の大型案件の影響を除くと前年並みとなり、高い水準を維持している。前年度は大型案件の受注獲得が上期偏重だったが、2025年度は下期偏重を想定している。子会社他の減少は、アピームコンサルティングが好調を維持しているが、構造改革および法人向けPCの販売機能移管の影響がある」とした。
また、「トランプ関税についてはいい方向に落着したと見ているが、今後、お客さまの投資動向が見えてくるだろう。製造業の一部顧客では、関税がIT投資にも影響しているという声もあるが、いまのところ大きな影響はない。今後の受注動向は注視していきたい。受注については、引き続き、利益重視の方針を前提に着実に積み上げていく」と述べた。
BluStellarの進捗状況についても説明した。
BluStellarの2025年度通期の売上収益は前年比15.0%増の6240億円、調整後営業利益は162億円増の825億円と、引き続き高い成長を見込んでいる。調整後営業利益率は13.2%となる。国内ITサービス事業に占める構成比は37%にまで引き上げる計画だ。
NECの藤川CFOは、「BluStellarは好調なDX需要を受けて、順調に売上が拡大し、収益性も向上している。国内ITサービスの増収増益に貢献している。BluStellarの体制を強化しており、今後、トップラインを押し上げるとともに、利益率も高めていくことができる」と自信を示した。
また、「BluStellarは、NEC自身を0番目の顧客として、最先端のテクノロジーを実践し、自社内で得た経験やノウハウを顧客に提供するクライアントゼロの成果が、お客さまやパートナーなどのステークホルダーに評価され、パートナーリングの拡大やBluStellarシナリオによる複数の大型商談の獲得につながっている」とした。
シナリオによる商談では、流通および金融分野における大型モダナイゼーションや、データドリブン経営の提案、AIエージェントなどに関する案件を獲得。パートナーリングの拡大も積極化し、KDDIとはサイバーセキュリティ領域で連携したほか、IFSとは製造業や航空産業などで連携、BoxとはAIエージェント活用の領域でパートナーシップを結んだ。
また、DX銘柄2025に選ばれるなど、BluStellarによる外部表彰が増えていることも紹介した。
社会インフラの売上収益は前年同期比9.6%増の1728億円、調整後営業利益は前年同期から83億円増の98億円。そのうち、テレコムサービスの前年同期比0.4%減の842億円、調整後営業利益は前年同期から59億円増の68億円。ANS(Aerospace and National Security)の売上収益は前年同期比21.3%増の886億円、調整後営業利益は前年同期から24億円増の30億円となった。ANSから海洋システムを除いた航空宇宙・防衛の売上収益は前年同期比32.2%増の735億円、調整後営業利益は前年同期から16億円増の45億円となった
「テレコムサービスは、IT領域が堅調に推移したことに加えて、開発費を中心とした費用の効率化と、固定通信における一部案件の前倒しがあり増益となった。ANSは、獲得済みの案件を確実に遂行し増収増益となった」と説明した。
通期業績見通しは変更なし
一方、2025年度の通期業績見通しには変更がなく、売上収益は前年比1.9%減の3兆3600億円、調整後営業利益は8.0%増の3100億円、Non-GAAP営業利益は2.8%増の3200億円、Non-GAAP当期利益は1.9%増の2300億円を見込む。
「第1四半期は想定を上回る進捗となったが、関税影響などのマクロ環境の変化によるリスクを考慮し、年間の計画は据え置いた」という。
なお、2025年度通期のセグメント別業績見通しは、セグメント変更によって見直しを行っている。
ITサービスの売上収益は前年比4.9%減の2兆3400億円、調整後営業利益は同492億円増の3010億円とした。調整後営業利益率は12.9%となる。そのうち、国内ITサービスの売上収益は前年比5.4%減の2兆200億円、調整後営業利益が305億円増の2630億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年比1.2%減の3200億円、調整後営業利益は305億円増の380億円としている。
国内ITサービスは、法人向けPCの販売機能の移管や、子会社であるNECプラットフォームズの一部事業の収束に伴って減収を見込んでいるが、BluStellarを中心とした継続的な収益性改善による増益を計画。海外ITサービスは、Avaloqでの収益性向上と、前年度の一過性費用の剥落によって増益を計画している。
また、社会インフラの売上収益は前年比6.4%増の8850億円、調整後営業利益は85億円増の690億円とした。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年比12.6%減の3600億円、調整後営業利益は156億円増の350億円、ANSの売上収益は前年比24.9%増の5250億円、調整後営業利益は241億円増の340億円とした。ANSのうち、航空宇宙・防衛の売上収益は前年比16.0%増の4310億円、調整後営業利益は8億円増の440億円としている。
テレコムサービスでは、ソフトウェアシフトによる機器の売上減少を見込んでいるほか、前年度の一過性要因の反動があり、減益を見込む一方、ANSでは、獲得済みの案件の確実な実行と、海洋システムで前年度に発生した一過性費用の剥落によって、増収増益を計画している。また、航空宇宙・防衛では、今後の事業機会獲得のための投資増を計画しているという。
なお、2025年度は、NECが取り組んでいる「2025中期経営計画」の最終年度となる。
藤川CFOは、「2025年度の計画値は、トランプ関税の影響などを織り込んだ上で、ボトムの数字として打ち出している。リスクが解消される部分があれば上振れると見ている。リスクはまだあるが、コミットした数字は確実にやることを約束する」と強調した。