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NEC、2023年度第1四半期連結業績は増収増益で赤字幅が縮小

第1四半期の成果として生成AIなど3つのトピックスを紹介

 日本電気株式会社(以下、NEC)は28日、2023年度第1四半期(2023年4~6月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比7.1%増の7065億円、営業利益は前年同期のマイナス153億円の赤字から回復したものの、マイナス81億円の赤字。調整後営業利益は前年同期のマイナス69億円の赤字から、4億円の黒字に転換した。税引前利益は前年同期のマイナス66億円の赤字から、マイナス24億円の赤字に、Non-GAAP営業利益は前年同期のマイナス132億円の赤字から、5億円の黒字に転換。当期純利益は前年同期のマイナス138億円の赤字が、マイナス73億円の赤字に、Non-GAAP当期利益は前年同期のマイナス126億円から、マイナス13億円の赤字となった。

2023年度1Q実績サマリ

 NEC 取締役代表執行役 Corporate EVP兼CFOの藤川修氏は、「第1四半期は想定通りの進捗であり、増収増益となっている。Non-GAAP営業利益も黒字になった。セグメント別でも、ITサービス、社会インフラが、ともに増収増益となっている。特に、ITサービスは、受注動向が好調であり、ソリューションイノベータの稼働率も前年同期比プラスで推移している。需要トレンドは引き続き強いと考えている」と述べた。

NEC 取締役代表執行役 Corporate EVP兼CFOの藤川修氏

 今回の決算から公表しているNon-GAAP営業利益は、買収によって認識した無形資産の償却費、M&A関連費用、一過性損益である構造改革関連費用、減損損失、株式報酬などを営業利益から排除したもので、「根源的な事業の業績を測る利益指標と考えている」と述べた。

セグメント別の実績

 なおNECでは、2023年度第1四半期から、開示セグメントを従来の市場/顧客区分から、事業領域による区分へと変更している。

2023年度1Q実績:セグメント別

 第1四半期のセグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年同期比8.6%増の3858億円、調整後営業利益は171億円増の178億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年同期比11.4%増の3203億円、調整後営業利益が169億円増の168億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年同期比3.3%減の655億円、調整後営業利益が2億円増の10億円となった。

 「ITサービスの売上収益は、国内企業および官公庁の旺盛な需要により、好調に推移。調整後営業利益は、売上増に伴う利益増に加えて、国内SIの収益性向上も寄与して増益になった」という。

ITサービス

 ITサービスにおける受注状況は、全体で前年同期比3%増。そのうち、国内が同2%増。海外(DGDF)が同8%増。また、受注額構成比で27%を占める国内パブリックが同6%増、33%を占める国内エンタープライズが同16%増。27%を占める国内その他が同14%増となった。国内エンタープライズのうち、金融は同37%増、製造が同1%減、流通・サービスが同9%増となった。

 「国内では、官公庁向けが好調に推移。金融では大型案件が貢献したが、これを除いてもほぼ2桁の成長となっている。製造はマイナスとなっているが、2021年度、2022年度と5%増の成長を続けており、その水準からほぼ横ばいとなり、堅調だと判断している。また、サービス向けを中心に案件が増加している。一方で、2015年度がピークだった消防・防災システムの更新需要を控えており、これが2023年度から受注が始まり、2024年度以降でピークを迎えることになる。海外ではSWS-UK(NEC Software Solutions UK)が牽引している」と説明した。

ITサービス 受注動向:前年度比

 社会インフラの売上収益は前年同期比8.9%増の2150億円、調整後営業利益は前年同期から31億円増となったもののマイナス21億円の赤字。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年同期比11.9%増の1715億円、調整後営業利益は前年同期から22億円増となったもののマイナス32億円の赤字。ANS(Aerospace and National Security)の売上収益は前年同期比1.5%減の435億円、調整後営業利益は前年同期から9億円増の11億円となった。

 「売上収益は、テレコムサービスの海洋システムや、OSS/BSSを中心とした海外向け売上が増加した」という。

ITサービス 受注動向:前年度比

 その他では、売上収益が前年同期比1.2%減の1057億円、調整後営業利益が26億円減の3億円となった。日本航空電子工業の影響により減益となった。

第1四半期の3つの成果

 第1四半期の成果として、3つのトピックスに触れた。

 ひとつめは、7月6日に発表した日本市場向け生成AIの開発および提供開始である。

 発表から数日で数百件の引き合いがあったことを明らかにし、「さまざまな業種からの引き合いがある。日本語環境の生成AIは遅れており、国内の生成AI市場を見ると、開発意向の表明にとどまる企業が多いのが実態だ。NECは先行して生成AIを完成させ、それを提供できる段階にある。生成AIによる事業拡大を目指していきたい」と述べた。

 NECが発表した生成AIは、世界トップクラスの日本語性能を持つとともに、軽量な大規模言語モデルによって構成されているのが特徴だ。ニーズに合わせた専用ハードウェア、ソフトウェア、コンサルティングサービスなどを提供。さらに、生成AI活用のためのプログラムを、約10の企業や大学と共同で立ち上げたほか、プロフェッショナル人材からなる専門組織を新設し、国内企業への導入を支援するという。「顧客ニーズにフィットした新たなソリューションやオファリングも用意している」と述べた。

日本市場向け生成AIを開発・提供開始

 2つめは、NECの子会社であるスイスのAvaloqと、米資産運用会社のBlackRockによる戦略的パートナーシップを発表したことである。ここでは、BlackRockがAvaloqに出資を行うことも発表している。これにより、ウェルスマネージャーやプライベートバンク向けに両社の統合ソリューションを提供する。「両社の強みを掛け合わせ、市場競争力を強化し、クロスセルなどにより、幅広い層にアプローチすることで、事業拡大を図る」という。

DGDF:AvaloqとBlackRock、戦略的パートナーシップを締結

 3つめは、経営インフラの高度化に向けた基幹システム刷新である。NECでは、2020年度から、SAPを活用したグループ基幹システムの移行に取り組んでおり、2023年度に入り、ファーストフェーズを稼働させたという。商談プロセス全体を、標準化およびシステム化し、あらゆる情報を蓄積、可視化することで、商談段階での適切な価格設定やビジネスプロセスの効率化および最適化によるオペレーション改善を進めるという。これにより、2025年度を最終年度とする中期経営計画の達成に向けて、ITやプロセス、組織、制度、データ、人といった経営基盤を、徹底的に共通化および高度化するという。2024年度にはセカンドフェーズ、2025年5月にはサードフェーズを稼働させ、データドリブン経営への移行を促進する計画だ。

経営インフラの高度化

 また、データセンターに関しても言及。投資を加速していることや、堅調にビジネスを伸ばしていることについて説明。NEC印西データセンターでは、先進的な取り組みを行っていること、生成AIの活用においてもサービスを提供できる点を強調した。

通期業績見通しは据え置き

 一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)通期業績見通しは据え置き、売上収益は前年比2.0%増の3兆3800億円、調整後営業利益は同7.0%増の2200億円とした。また、新たな指標として、Non-GAAP営業利益で前年比11.7%増の2200億円、Non-GAAP当期利益で同5.4%増の1400億円とする計画を公表した。

2023年度年間業績予想

 ITサービスの売上収益は前年比2.6%増の1兆8000億円、調整後営業利益は同90億円増の1770億円。社会インフラは売上収益が前年比2.1%増の1兆850億円、調整後営業利益は同212億円増の950億円を見込んでいる。

 「ITサービスは、好調な国内需要が継続することを見込み、民需向けを中心に増収を計画。国内での売上増に伴う利益増と、DGDFの収益性改善を計画している。また、社会インフラは、テレコムサービスおよびANSともに増収を見込んでおり、調整後営業利益は、テレコムサービスにおける前年度の一過性要因が解消することにより、大幅な改善を計画している」とした。

2023年度 年間:セグメント別