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NECの2023年度連結業績は増収増益、業績予想値に対しては全指標で目標を達成

 日本電気株式会社(以下、NEC)は26日、2023年度(2023年4月~2024年3月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年比5.0%増の3兆4772億円、営業利益は同10.3%増の1880億円、調整後営業利益は同8.8%増の2235億円、税引前利益は同10.3%増の1850億円、Non-GAAP営業利益は同15.5%増の2275億円、当期純利益は同30.6%増の1495億円、Non-GAAP当期利益は同33.9%増の1778億円で、増収増益の結果となった。

2023年度 実績サマリ

 NECの森田隆之社長兼CEOは、「期初に掲げた業績予想値に対しては、全指標で目標を達成した。また、ITサービス、社会インフラは、いずれも増収増益になっている」と総括した。

NEC 取締役 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏

セグメント別の業績

2023年度実績:セグメント別

 セグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年比9.1%増の1兆9151億円、調整後営業利益は前年から401億円増の2081億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年比10.2%増の1兆6137億円、調整後営業利益が前年から396億円増の1893億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年比3.9%増の3015億円、調整後営業利益が前年から4億円増の188億円となった。

 ITサービスの受注状況は、全体では前年比1%増となり、NECファシリティーズを除くと同3%増になる。そのうち、国内が2%減、海外(DGDF)が20%増となっている。国内の業種別受注状況は、パブリックが1%減、エンタープライズが5%増、その他が8%減となった。その他のなかに含まれるアビームコンサルティングは15%超の受注額になっている。また、国内エンタープライズのうち、金融は16%増、製造が3%減、流通・サービスが3%増となっている。

 「売上収益は、国内企業向けおよび官公庁向けの旺盛な需要が見られ、好調に推移した。国内SIビジネスの収益性向上も寄与している。また、受注も前年から堅調な状況が続いている。むしろ、私たちのリソースが心配なぐらいである。パブリックの受注が減少しているが、2022年度からの高水準を維持している状況だ。金融は2022年度の高水準をさらに上回っている。製造業は採算性の観点で案件を選別しており、その結果、収益性が改善している。海外では、SWSとKMDが大型案件を獲得している」と説明した。

 その一方で、「基幹システムのモダナイゼーションはチャレンジングなところがある。だが、本当のDXに進むには通らざるを得ない道である。今後、日本のIT投資の多くの部分を占めることなるだろう」としながら、「2023年度は金融分野での意思決定や投資の方向性が進んだ。これがNECの受注の伸びを支えた。2024年度以降にはインプリメンテーションの段階に入ることになる。さらに、これからは製造業でのモダナイゼーションや、サプライチェーンの見直しに伴うIT整備が出てくるだろう。政府のデジタル化も2024年度、2025年度が勝負の年になる」と予測した。

ITサービスの概況

 社会インフラの売上収益は前年比2.1%増の1兆840億円、調整後営業利益は前年から16億円増の754億円。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年比1.1%減の8080億円、調整後営業利益は64億円減の419億円となった。ANS(Aerospace and National Security)の売上収益は前年比12.6%増の2761億円、調整後営業利益は前年から79億円増の335億円となった。

 テレコムサービスでは、ハードウェアからソフトウェアへのシフトに伴う資産処理や、SIでの不採算案件の発生、海洋プロジェクトでの原価悪化に伴う費用として、マイナス150億円の一過性費用を計上した。

 「テレコムサービスは、グローバル5Gが計画通りに損益は改善したが、一過性費用の計上により減益となった。ANSは、政府予算の増加により年間5000億円超の受注を獲得した。ANSでは、12%の営業利益を確保できる事業にしていく」との姿勢を示した。

 また、「もともと防衛領域は収益性が低く、先行きが見えないこと、開発投資などの努力が報われないといった要因から、撤退企業が相次いでいたことを憂いていた。国の政策が明確になり、先端技術を提供する企業に対しては、最大15%の利益を許容するといった動きも始まった。撤退企業を減らし、日本の経済安全保障に資することにつながるだろう。日本の企業には、先端技術開発で欧米に劣らない部分がある。世界的に経済安全保障に貢献できる領域もある。NECは、長期的視点からこの分野への研究開発投資を進めていく」と語った。

社会インフラの概況

 その他では、売上収益が前年比3.6%減の4781億円、調整後営業利益が54億円減の184億円となった。

2024年度通期の業績見通し

 一方、2024年度(2024年4月~2025年3月)通期業績見通しは、売上収益が前年比3.1%減の3兆3700億円、調整後営業利益は同14.1%増の2550億円、Non-GAAP営業利益は前年比12.0%増の2550億円、Non-GAAP当期利益は同7.2%減の1650億円とした。減収要因は、日本航空電子工業の非連結化の影響によるものだとしている。

2024年度通期の業績見通し

 ITサービスの売上収益は、前年比1.8%増の1兆9500億円、調整後営業利益が前年比139億円増の2220億円とした。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年比2.2%増の1兆6500億円、調整後営業利益が前年から87億円増の1980億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年比0.5%減の3000億円、調整後営業利益が前年から52億円増の240億円としている。

 「ITサービスは、高水準だった2023年度の実績から、さらなる成長を計画している。海外ではAvaloqの収益性改善を織り込んだ。欧州3社のなかでは最も利益増が大きい企業であり、Avaloqの利益貢献は40億円となっている」という。

 なお、Avaloqは2022年度には7%だった利益率が、2023年度には11%に上昇。2024年度は10%の売上成長とともに、利益率を14%にまで高める計画だという。また、2025年度には、これを20%近くまで引き上げることになる。BlackRockとの戦略的パートナーシップの成果や、NECのルートを活用したAPACでのビジネス拡大、クラウドによる費用効率化、オフショア化の移行加速が理由だという。

ITサービスの2024年度通期見通し

 社会インフラは、前年比8.9%増の1兆1800億円、調整後営業利益は前年から466億円増の1220億円を計画している。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年比4.0%増の8400億円、調整後営業利益は前年から431億円増の850億円。ANSの売上収益は前年比23.1%増の3400億円、調整後営業利益は前年から35億円増の370億円とした。

 「2023年度までに獲得したANSの案件を確実にデリバリーすることで増収を計画している。また、2024年度もANSにおいて、4000億円~5000億円の受注を目指す。一方、テレコムサービスでは、グローバル5Gの改善と、2023年度の一過性費用のはく落により、増益を計画している」と述べた。

 その他は、売上収益は前年比49.8%減の2400億円、調整後営業利益は前年度の184億円から、マイナス20億円の赤字を見込む。

成長事業の進捗状況

 成長事業の進捗状況についても触れた。

 コアDXは、2023年度の売上収益が前年比60.8%増の3860億円、調整後営業利益が前年から208億円増の246億円となり、「順調に成長しており、引き続きあり上げの拡大を図る。オファリング売上比率の拡大による収益性の高いビジネスモデルへとシフトする」と述べた。

 DGDFでは、売上収益が3.9%増の3015億円、調整後営業利益が4億円増の188億円となった。「ボルトオンM&Aや、ノンコア事業の売却により、事業基盤の再構築を行った。今後は収益性が高い商材へのシフトと、より一層のコスト効率化による収益性向上を目指す」としている。

 グローバル5Gは、売上収益が16.7%減の726億円、調整後営業利益が203億円改善したものの、マイナス108億円の赤字となった。「2022年度に構造改革を実施し、2023年度は、その効果を刈り取ることで、損益を大幅に改善した。今後は収益性の高いソフトウェアやサービス領域に投資をシフトすることで、黒字化する計画である」とした。

成長事業

 一方、低収益事業については、2021年度から開始した収益改善活動によって、9事業が高中収益事業に転換し、管理対象から卒業したことを報告。残り9事業が対象となっているが、そのうち、消防防災および、中堅中小ビジネスに関する2事業をあわせた3事業は収益改善を図ることができ、2024年度に管理対象からの卒業を見込んでいるという。

 「3事業は利益率が13%、9%、7%という水準を達成できると見ている。継続事業としてターンアラウンドができる。それ以外の事業についても引き続きフォローし、2025年度までに低収益事業をゼロにすべく活動を継続している」とする一方、「収益性の改善が難しい領域については、2024年度中に売却やパートナーリングなどにより、事業拡張を最大化するための見極めを行う」と語った。

 さらに、財務健全性を維持しながら、成長投資を最優先で実施し、総額5000億円規模の投資を検討していることを明らかにした。

低収益事業

 2023年度のトピックスとして紹介したのが、生成AIの取り組みである。

 同社では、日本語性能に優れた独自の生成AIとして「cotomi」を製品化しているが、このほど、新たにcotomi Proおよびcotomi Lightを開発。さらに、クラウドでの提供に加えてオンプレミス環境でのサービス提供を開始したことや、医療業界向けに生成AIを搭載した電子カルテシステムMegaOak/iSの販売を開始したことを報告。「お客さまの要望に応じた最適なサービスを提供するためにラインアップを拡充している。今後も業種に特化したサービスをさらに拡充していく」と述べた。

 また、相模原市は、自治体向けでは初となるcotomiの業務活用を開始したという。

 なお、生成AIの社内活用については、「社内活用しなければ、遅れてしまう。ソフトウェア開発におけるテストフェーズでは有効に活用できることがわかっている。セキュリティ領域においても生成AIによる用途を拡大している。ここで活用したNEC社員4万人の対話履歴をcotomiで学習して、顧客と共有していく」などと述べた。

生成Aiへの取り組み