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NECの2024年度第3四半期連結業績、大幅増収で通期業績予想を上方修正 国内ITサービスやANSが好調
2025年1月31日 00:00
日本電気株式会社(以下、NEC)は30日、2024年度第3四半期(2024年4~12月)の連結業績を発表した。
売上収益は前年同期比3.0%減の2兆3218億円、営業利益は同80.7%増の1261億円、調整後営業利益は同54.9%増の1502億円、税引前利益は同67.8%増の1143億円、Non-GAAP営業利益は同63.3%増の1623億円、当期純利益は同110.2%増の715億円。Non-GAAP当期利益は同98.3%増の1083億円となった。日本航空電子工業の非連結化の影響を除くと、売上収益は同4.5%増となり、実質的には増収増益になる。
NECの藤川修CFOは、「国内ITサービスおよびANS(Aerospace and National Security)を中心に大幅な改善となった。年間予算の達成に向けて想定以上の進捗となっている。足元の業績進捗を考慮し、通期業績予想を上方修正した」と好調ぶりを示した。
2024年度(2024年4月~2025年3月)通期業績見通しは、売上収益では従来予想から400億円増額し、前年比1.9%減の3兆4100億円。調整後営業利益は50億円増額して、同16.3%増の2600億円、Non-GAAP営業利益は250億円増額の同23.0%増の2800億円、Non-GAAP当期利益は170億円増額の同2.3%増の1820億円とした。
2024年度第3四半期累計のセグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年同期比4.6%増の1兆3746億円、調整後営業利益は前年同期から217億円増の1105億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年同期比4.0%増の1兆1414億円、調整後営業利益が前年同期から175億円増の980億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年同期比8.0%増の2331億円、調整後営業利益が前年同期から42億円増の125億円となった。
「国内、海外ともに増収となっており、NECファシリティーズを除くと、国内ITサービスの売上収益は前年同期比7%増になる。また、調整後営業利益は収益性の改善により大幅な増益になっている」と語った。
第3四半期の国内ITサービスの受注状況は、全体(NECファシリティーズを除く)では前年同期比9%増となった。業種別受注状況は、パブリックが前年同期比36%増、エンタープライズが同11%減、その他が同16%増となった。エンタープライズのうち、金融は同23%減、製造が同13%増、流通・サービスが同10%減となった。また、その他のなかに含まれるアビームコンサルティングの受注額は同10%増となっている。
「国内ITサービスは、堅調に需要が継続している。パブリックが自治体標準化プロジェクトの獲得などにより、第1四半期、第2四半期に続き、第3四半期も前年同期比30%以上となる大幅な伸びを維持している。エンタープライズ全体では堅調であり、金融と流通・サービスは前年度の反動減によって減少しているが、案件のパイプラインは引き続き旺盛である。製造では、高収益案件の獲得にシフトする『選別受注』が一巡したこと、DX関連の案件増加により2桁の伸びを維持している」とした。
BluStellarの進捗状況についても説明した。
「BluStellarは、順調に推移している。ITサービス全体の3分の1をBluStellarが占めており、第3四半期までの売上高は前年同期比26%増。第3四半期時点で調整後営業利益の年間目標は達成し、売上収益の年間計画は過達を見込む。また、利益率は前年同期比で2~3%改善しており、目標に対して1%強上回っており、計画値を超えて推移している。BluStellarがITサービス全体の利益率向上にもつながっている」という。
自治体標準化の需要を取り込み、ガバメントクラウド運用支援サービスの受注が堅調だという。「既存顧客からの案件獲得だけでなく、新たな顧客からも声がかかっている」とした。また、自社活用事例をモデル化したコンサルティング起点でのセキュリティ運用ダッシュボートや、データドリブン経営実現シナリオの受注が拡大していることを示した。2024年11月には、高度な専門業務を自動化するAIエージェントを発表しており、複数業種の顧客との実証を準備している段階だという。
利益率の改善では、製品ポートフォリオを見直し、低収益の製品を削減したほか、バリューベースドプライシングによる成果、シナリオによる販売を主軸とするビジネスモデルへの変更が効果につながっている。
社会インフラの売上収益は前年同期比5.8%増の7729億円、調整後営業利益は前年同期から365億円増の533億円。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年同期比3.8%減の5344億円、調整後営業利益は前年同期から250億円増の293億円。ANSの売上収益は前年同期比36.3%増の2385億円、調整後営業利益は前年同期から115億円増の240億円となった。
テレコムサービスは、一過性の損益があるものの、開発費を中心とした費用効率化により調整後営業利益が改善して増益になった。ANSは獲得済みの案件を着実に遂行し、大幅な増収増益となったという。
「テレコムサービスでは、海洋の既存複数プロジェクトにおいて、スケジュール遅延に伴う費用増が発生したが、これが2024年度に完了する。事業全体の品質改善に向け、新規契約案件に関しては、契約条件やプロセスの見直しを実施済みである。2025年度以降は正常な利益率に回復できる。オペレーション改善や費用効率化も順調に進捗している」。
その他では、売上収益が前年同期比50.0%減の1743億円、調整後営業利益が前年同期から125億円減のマイナス67億円の赤字となった。ここでは日本航空電子工業の非連結化が影響した。
通期業績の上方修正に伴うセグメント別見通し
一方、2024年度通期業績の上方修正に伴うセグメント別見通しは、ITサービスの売上収益が、当初予想から800億円増額された、前年比6.1%増の2兆300億円、調整後営業利益は当初予想から200億円増額された、前年比15.2%増の2120億円とした。
そのうち、国内ITサービスの売上収益が当初予想から600億円増額され、前年比6.1%増の1兆7100億円、調整後営業利益が当初予想から200億円増額され、前年比13.9%増の1880億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が、当初予想から200億円増額され、前年比6.1%増の3200億円、調整後営業利益は据え置き、前年比26.3%増の240億円としている。
「国内ITサービスは、好調なパブリックを中心に、売上増、利益増を織り込んだ。海外ITサービスは、円安の影響を考慮し、売上収益のみを修正した」という。
社会インフラの売上収益は400億円減額の前年比4.9%増の1兆1300億円、調整後営業利益は60億円減額の同72.4%増の950億円とした。そのうち、テレコムサービスの売上収益は700億円減額の前年比5.2%減の7600億円、調整後営業利益は160億円減額の同112.5%増の580億円、ANSの売上収益は370億円増額の前年比32.0%増の3700億円、調整後営業利益は100億円増額の同32.6%増の370億円とした。
「テレコムサービスは、5Gや海洋における当初目標への未達を反映。ANSは第3四半期までの進捗を考慮し、売上増や利益増を織り込んだ」としたほか、「ANSの案件獲得に関しては、トランプ政権の影響はない。リソースシフトを行い、プロジェクトマネジメントをしっかりと行うことが大切である」と語った。
その他は当初見通しを据え置き、売上収益は2500億円、調整後営業利益は130億円の赤字としている。
4月1日付で組織体制の変更を実施
なお、NECでは、2025年4月1日付で組織体制を変更することも発表した。
組織変更の狙いを「2025中期経営計画の達成および持続的な成長の実現のため」としている。
具体的には、BluStellarを軸とした価値提供体制を強化に向けて、デジタルプラットフォームBUを再編し、BluStellarを軸とした製品・サービス事業を担うデジタルプラットフォームサービスBUと、コンサルティングやSIサービスのデリバリーを担うデジタルデリバリーサービスBUを新設する。
デジタルプラットフォームサービスBUでは、より魅力ある製品やサービスづくりを加速するほか、デジタルデリバリーサービスBUでは、NECグループ全体として、迅速かつ効率的なシステムおよび製品、サービスの提供を推進することで、DX事業のさらなる拡大を目指す。
また、拡大する行政DXや医療DX投資への対応力の強化に向けて、クロスインダストリーBU(ビジネスユニット)と、グローバルイノベーションBUの行政および医療に関連する事業(都市インフラ事業、消防・防災事業、スマートシティ事業など)を、政府・官公庁および自治体向け事業を担うパブリックBUに集約。ドメインナレッジやリソースを集中および共有化することで、拡大する行政DXや医療DXの事業機会を着実にとらえ、各事業の成長を図る。
さらに、経済安全保障を含むナショナルセキュリティ事業体制を確立。コーポレートにサイバーセキュリティ部門を新設し、NECグループ全体のサイバーセキュリティ関連事業や機能を統括し、セキュリティ人材の育成や最先端技術の活用を通じて、顧客への提案力を強化する。
また、航空宇宙・防衛事業を担うエアロスペース・ナショナルセキュリティBUに、サイバーセキュリティ部門と密に連携する組織を新設するほか、テレコムサービスBUから海底ケーブルシステムを開発、提供する海洋システム事業を移管する。経済安全保障において重要な基幹インフラのひとつである海底ケーブルや、国および基幹インフラを担う顧客に対するサイバーセキュリティサービスの提供をワンマネジメントで実行する体制を確立することで、日本の安全安心に貢献することを目指すとしている。