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NTTデータグループの2023年度連結業績、増収も金融費用などの増加が影響し当期利益は減益に
積極的なデータセンター投資は2024年度も継続へ
2024年5月10日 00:00
株式会社NTTデータグループの2023年度(2023年4月~2024年3月)連結業績は、売上高が前年比25.1%増の4兆3673億円、営業利益は同19.5%増の3095億円、税引前利益が同2.4%増の2486億円、当期利益が同10.7%減の1338億円、当期包括利益は同35.4%増の3008億円となった。受注高は、NTT Ltd.を除き、前年比75.8%増の4兆7909億円となっている。
NTTデータグループの本間洋社長は、「NTT Ltd.の連結による売上拡大と為替影響などにより増収となった。日本および欧州の事業は好調に推移したことも業績拡大に貢献した。だが当期利益は、成長事業であるデータセンター投資の増加に伴う有利子負債の増加、金利上昇による金融費用の増加、税金費用の増加があったために減益になり、業績予想に対しても未達になった。受注高は、公共・社会基盤、金融、北米における大型案件の獲得などがあり、大幅に増加した」と総括した。
2023年度のセグメント別業績は、日本セグメントでは、売上高が前年比6.2%増の1兆7570億円、営業利益は同9.9%増の1867億円、受注高が同13.9%増の1兆6467億円となった。そのうち、公共の売上高が前年比8.9%増の6923億円、営業利益は同30.2%増の893億円、受注高が同36.2%増の6751億円。金融の売上高が前年比5.1%増の6962億円、営業利益は同3.8%増の714億円、受注高が同8.5%増の5277億円。法人の売上高が前年比5.9%増の5352億円、営業利益は同5.8%増の544億円、受注高が同5.7%減の3831億円、となった。
「前期に獲得した大型案件の反動減はあるが、公共における中央府省向け案件の獲得、金融における地域金融機関向け大型案件の獲得などがあった」という。
海外セグメントは、売上高が前年比41.2%増の2兆6545億円、営業利益は同41.9%増の1158億円、受注高が同33.5%増の8077億円となった。
そのうち、北米の売上高が前年比1.3%減の5867億円、受注高が同20.8%増の5652億円。EMEA・中南米の売上高が前年比19.6%増の8285億円、受注高が同13.2%増の8769億円。NTT Ltd.の売上高が1兆2410億円、受注高が1兆6614億円となった。
「NTT Ltd.の連結と、日本や欧州での規模が拡大したことで大幅な増収となった。北米では利益率を重視した案件の精査も進めたことで減収となったが、大型案件の獲得があり、受注高は増加している。営業利益は海外統合費用があったが増益になっている」という。
海外事業の統合および構造改革については、「2023年度に予定していた取り組みを着実に実施し、ほぼ計画通りになっている。収益性の向上を目指し、リージョンごとでのデジタル対応力の強化、人員の最適化を、2023年度に集中的に実施した。今後は、収益性向上のための取り組みを強化していく。新たなオペレーションモデルのもとで、海外全体を対象にした事業統合のステージにシフトしていく」と述べた。
なお、NTTデータグループでは、2023年10月に発生した全銀システムの障害を受けて、システム総点検を実施しており、その進捗についても説明した。
本間社長を筆頭にしたシステム総点検タスクフォースを立ち上げており、開発や移行、運用フェーズにおいて48項目におよぶ品質確保状況を点検。グループ会社を含む合計235の重要システムを対象として点検を実施し、2023年度中にすべての点検が完了したという。
点検の結果、総じて点検項目は充足されていると判断。同様の障害を発生させないよう対処されていることを確認したとのことで、本間社長は、「今後も、社内第三者によるチェックの継続と、基盤人財育成を含むエンジニアリング力の強化を推進し、より信頼性が高いシステムの構築、運用に向けて、NTTデータグループ全体として取り組む」と述べた。
2024年度の連結業績見通し
一方、2024年度(2024年4月~2025年3月)の連結業績見通しは、売上高が前年比1.4%増の4兆4300億円、営業利益は同8.5%増の3360億円、税引前利益が同2.6%増の2550億円、当期利益が同2.3%増の1370億円とし、増収増益を見込む。
「円高による減少影響はあるが、日本および海外における規模拡大に伴い、増収増益を予想している。当期利益も積極投資の継続に伴う金融費用の増加があるが増益を計画している」と述べた。
日本セグメントでは、売上高が前年比4.7%増の1兆8400億円、営業利益は同3.4%増の1930億円、受注高が同0.2%増の1兆6500億円とした。そのうち、公共・社会基盤の売上高が前年比9.5%増の7580億円、営業利益は同5.2%増の940億円、受注高が同2.7%減の6570億円。金融の売上高が前年比4.4%増の7270億円、営業利益は同13.4%増の810億円、受注高が同0.4%増の5300億円。法人の売上高が前年比8.0%増の5780億円、営業利益は同14.1%増の620億円、受注高が同6.2%増の4050億円とした。
「各分野における規模拡大により、増収増益を予定している。受注高は公共、金融において前年度に獲得した大型案件の反動があるものもの、全体では増加する」という。
海外セグメントは、売上高が前年比0.2%減の2兆6500億円、営業利益は同11.4%増の1290億円、EBITAは同6.9%増の1780億円としている。そのうち、North Americaの売上高は6670億円、EBITAが400億円、受注高が8440億円。EMEALの売上高は9980億円、EBITAが710億円、受注高が1兆1240億円。APACは売上高が4140億円、EBITAが400億円、受注高が4220億円。Global Technology and Solution Servicesの売上高は7460億円、EBITAが840億円、受注高が2800億円とした。
「海外セグメントは売上高が減収だが、為替影響を除くと実質増収になる。また、事業統合費用の増加などはあるものの、構造改革費用のはく落などによって増益になる」とした。
海外事業の統合については、2024年度においては300億円の支出を予定し、競争力強化のための事業ポートフォリオの変革を推進していく考えを示した。
中期経営計画の進捗状況
2025年度を最終年度とする中期経営計画の進捗状況についても説明。2025年度の連結売上高で4兆7000億円を目指す計画を、新たに発表した。
「当初計画では、連結売上高は4兆円超としていたが、日本セグメントの堅調な成長や、NTT Ltd.の連結拡大影響により、2023年度実績で当初計画を超える4兆3700億円を達成している。2025年度にはさらに事業を拡大し、4兆7000億円規模を目指す。経営目標達成に向けて全社一丸となって取り組む」とした。
一方で、連結営業利益率の10.0%、海外EBITA率の10.0%、年間売上高50億円以上となる顧客基盤で120社の獲得を目指す目標に変更はない。
また、同中計では5つの戦略を掲げており、それらの取り組みに触れた。
戦略1と位置づける「ITとConnectivityの融合による新たなサービスの創出」では、「国内においては業界の枠を超えた連携を推進するとともに、海外ではリージョン間の連携を推進し、新たなサービスの創出に取り組み、着実に実績が出てきている。中でも、NTT Ltd.との連携によるシナジーが大きく、2023年度は1300億円超の受注を獲得した」という。
2023年度第4四半期には、グローバルに事業展開する北米の自動車用電子機器メーカーから、SAP S/4HANA導入を含む業務改革プロジェクトを受注した例を紹介した。
2つめの「Foresight起点のコンサルティング力の強化」では、顧客や業界の将来像を描くForesightを起点として、同社独自のコンサルティングメソッドであるForesight Design Methodを活用したコンサルティングを強化してきたという。大手食品メーカーからビジネスコンサルティング案件を受注。経営層との議論を通じて、プライシングや人財変革などを通じた経営課題の解決を一体となって進めているという。
3つめの「アセットベースのビジネスモデルへの進化」と、4つめの「先進技術活用力とシステム開発技術力の強化」では、生成AIを活用した顧客との共創プロジェクトが、グローバルで200件以上に達していることや、生成AIを適用したソフトウェア開発の生産性向上では140件の実績があがっていることを紹介。2024年度からは生成AI関連投資の規模を拡大し、「Global GenAI Platform」を本格展開する考えを示した。「お客さまや社会に対して、先進技術による価値提供を目指す」と述べた。
戦略5となる「人財・組織力の最大化」においては、「人財は重要な財産である。さまざまな取り組みを通じて、NTTデータの一員として意識を高め、人財の定着化を進めている」とし、日本を含む世界29カ国と4地域で、外部機関の「TopEmployer2024」に認定。グローバル認定を受けた17社の1社になったという。
また、サステナビリティ経営については、オファリングの創出については着実な成果が出ており、GHG可視化プラットフォームである「C-Turtle」は、累計で1000社を超える導入を達成。製品別や業界別のラインアップ拡充しており、GHG削減に向けたコンサルティングサービスの受注も順調に増えているという。さらに、サステナビリティ経営のさらなる推進を目的として、サステナビリティ経営推進委員会を設置したことも明らかにした。
積極的なデータセンター投資を継続
一方、事業成長に向けた投資戦略についても説明した。
注力技術やIndustry領域の強化を目指す「Strategic Investments」では、生成AIなどに集中的に投資するほか、「M&A」では海外主要市場に加えて、国内のM&Aを加速。「データセンター投資」では、生成AIの需要を確実に取り込むべく、積極投資を継続するという。
中でも、データセンター投資については、旺盛な需要を背景にして高い市場成長が見込めることや、それに向けたマーケットポジションの獲得に向けて、2023年度実績で3905億円を投資。13のデータセンターでサービス提供を開始しており、売上高、EBITDA、EBITDA率は、通期計画を上回っていることを示した。
「2024年度においても積極的なデータセンター投資を継続する。事業成長に向けた投資はレバレッジをきかせているが、投資回収には一定の期間を要することから、ROICやNet Debt EBITDA倍率は一時的に悪化する。稼ぐ力の拡大と、REITを活用したデータセンター資産の流動化を柱に、2025年度における投資収益性の回復と、財務健全性の確保を目指す」と述べた。