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NTTデータグループの2023年度上期連結業績、大幅増収も当期利益は減益に

 株式会社NTTデータグループは6日、2023年度上期(2023年4月~9月)連結業績を発表。売上高が前年同期比51.6%増の2兆785億円、受注高が同81.4%増の2兆1666億円、営業利益は同12.9%増の1218億円、税引前利益が同13.6%減の955億円、当期包括利益が同10.2%減の1700億円となった。

2024年3月期第2四半期実績(前期比増減概要)

 NTTデータグループの本間洋社長は、「NTT Ltd.による連結影響の拡大に加えて、公共、金融、法人の日本セグメントや欧州における規模拡大、為替影響などにより大幅な増収となった。営業利益は、海外事業統合や構造改革に伴う費用、全社の戦略投資があるものの増収となっている。海外セグメントは、業績予想の進捗において若干低めとなっているが、日本セグメントは堅調さを維持しており、全体として順調に進捗している。通期計画の達成を目指す」と総括した。

NTTデータグループ 代表取締役社長の本間洋氏

 なお2023年7月1日から、持株会社であるNTTデータグループ、国内事業会社のNTTデータ、海外事業会社のNTT DATA Inc.の3社体制へと移行しており、それに伴い、開示セグメントを変更した。

開示セグメントの見直し

 2023年度上期のセグメント別業績は、日本セグメントでは、売上高が前年同期比7.5%増の8228億円、受注高が同33.5%増の8077億円、営業利益は同4.3%増の800億円となった。

 そのうち、公共の売上高が前年同期比12.7%増の3049億円、受注高が同55.0%増の3648億円、営業利益は同61.3%増の308億円。金融の売上高が前年同期比3.0%増の3306億円、受注高が同39.2%増の2386億円、営業利益は同5.7%増の350億円。法人の売上高が前年同期比9.7%増の2634億円、受注高が同2.5%増の1732億円、営業利益は同3.3%増の280億円。

 「日本セグメントでは、公共・社会基盤における大型案件の獲得をはじめ、すべての分野で案件を着実に獲得している」と述べた。

売上高|セグメント別増減(2024年3月期 第2四半期実績)
営業利益|セグメント別増減(2024年3月期 第2四半期実績)

 海外セグメントは、売上高が前年同期比103.5%増の1兆2729億円、受注高が同131.5%増の1兆3523億円、営業利益は同30.5%増の342億円となった。

 そのうち、北米の売上高が前年同期比1.8%減の2874億円、受注高が同11.2%減の1926億円、EBITAが同10.6%減の178億円。EMEA・中南米の売上高が前年同期比19.4%増の3885億円、受注高が同8.7%増の3859億円、EBITAが同8.5%減の151億円。NTT Ltd.の売上高が5975億円、受注高が7590億円、EBITAが256億円。

 「北米において市場の不透明感があり、顧客の意思決定の遅れなどにより、受注高が減少となっているが、NTT Ltd.の連結拡大影響や為替影響があり、受注高は増加している。北米は前年度第1四半期に発生した一過性の資産売却案件の反動減がありEBITAが減少している。また、EMEA・中南米はEBITAが減少しているが、通期の業績予想に織り込み済みの事業統合費用や事業構造改革費用を除くと増益。NTT Ltd.のEBITAにも事業構造改革費用が含まれている」という。

海外セグメントの業績内訳

 海外事業の統合費用は2023年度上期までに34億円を支出しており、年間で190億円を計画。2024年度からの新たな事業運営に向けてリーダーシップチームを任命し、統合活動を加速していると述べた。また、事業構造改革費用はEMEA・中南米では43億円、NTT Ltd.では92億円を支出。「いずれも年間の計画に対して順調な進捗になっている。今後も海外事業再編を推進し、シナジー効果を創出することで、中期経営計画のEBITA率10%達成を目指す」とした。

海外事業の事業統合・事業構造改革

 一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)の連結業績見通しは据え置き、売上高が前年比17.5%増の4兆1000億円、受注高(NTT Ltd.除く)が同4.6%増の2兆8500億円、営業利益は同12.7%増の2920億円、税引前利益が同1.2%減の2400億円、当期利益が同4.0%減の1440億円としている。

2024年3月期 業績予想(組替後)-セグメント別

中期経営計画でのトピック

 中期経営計画の進捗状況についても説明。そのなかで、いくつかの事例について触れた。

 ひとつめが、勘定系システムのオープン化を実現する「PITON」の適用開始だ。PITONは、メインフレーム上に構築されたシステムをオープン化するためのフレームワークであり、2024年から順次展開することになる。

 「金融機関や官公庁のミッションクリティカルシステムを中心にメインフレームが活用されてきたが、メインフレームの供給は年々減少しており、開発に従事する技術者も減少している。こうした状況を受けて、アプリケーションを汎用性が高いオープンサーバー上に稼働させるために、PITONの研究開発を進めてきた。地方銀行向け共同システムであるMAJARに採用後、しんきん共同センターの次期勘定系システムへの展開も計画している。当社はメインフレームをオープン化することで、システムの継続性の実現、デジタル化への貢献、省電力化によるグリーンITの推進により、新たな価値を提供する」とした。

勘定系システムのオープン化を実現する「PITON」の適用開始へ

 また2024年から、インドネシアに防災情報処理システム「DPIS」を提供。災害情報を国民に対して迅速に配信することができるようにするという。「日本と同じ災害大国であるインドネシアにおいて、津波や地震などの災害情報を国民に迅速に伝達し、インドネシアの災害対策に貢献することかできる。日本の防災DXソリューションや防災ノウハウの展開を目指す」としている。

 海外事業統合による連携事例としては、グローバルに展開している北米のフォークリフトメーカーから、倉庫内のフォークリフトの自動制御などを行うトラフィックマネジメントプラットフォームの構築案件を獲得。NTT DATA ServicesとNTT Ltd.の連携により、顧客の主力製品の価値向上に貢献するという。

インドネシア国「防災情報処理伝達システム(DPIS)」の提供
海外事業統合による連携事例

 そのほか、GHG排出量可視化システム「C-Turtle」が500社への導入を達成。正確な排出量の可視化に向けたコンサルティングによって、スコープ3削減に向けた活動を支援する。また、ダイエーが運営する日本初のウォークスルー店舗である「CATCH&GO」においては、新たな購買体験を支援。さらに、金融大手各社との共同出資によるProgmatを設立し、デジタルアセット市場のナショナルインフラの開発、運営を進めている事例も示した。

GHG排出量可視化システム「C-Turtle」

 生成AIに対する取り組みでは、顧客理解力や先進技術活用力を発揮し、顧客との共創プロジェクトを、2023年度に30件以上立ち上げる予定であるほか、10以上の生成AI関連アセットを整備し、顧客に提供。グローバルの20万人の社員が業務で生成AIを活用することで、生産性を向上させるという。

 「NTTが発表した大規模言語モデルであるtsuzumiは、NTTグループとして積極的に活用していく。生成AIの推進と統制を適切に組み合わせながらグローバルで拡大していく」と語った。

注目技術:生成AIを活用した顧客との共創

データセンターにも積極的な投資を実施

 また、事業成長に向けた投資についても説明した。

 戦略投資では、年間320億円の計画に対して、上期までに134億円を実行。「クラウドなどへの投資によって獲得したアセットを活用し、日本および海外で複数の案件を受注している。また、アセット流通基盤を拡大し、グローバル20万人の知見を活用できるようになった」という。

 M&A投資では引き続き、デジタル関連ケーパビリティの獲得に向けた投資を推進。上期までに20億円の投資を行ったという。

事業成長に向けた投資

 データセンター投資については、年間3500億円の計画に対して、上期までに1372億円の投資を行っている。

 「データセンター事業においては、上期実績でEBITDA率が39%と高い収益性を保っている。利益の貢献までに時間を要する事業であるが、中長期的な高い市場成長率に加えて、AI需要により、さらに高い成長が期待される事業領域でもある。2027年度にはEBITDAを1800億円創出することを目指し、積極的な投資を進める」とした。

データセンター投資

 また、「課題となっている投資の収益性と財務の健全性の改善に向けて継続して取り組んでいく」と語り、質を伴う成長によるEBITDA創出力の向上、データセンター事業において第3者資本活用による回収期間の短縮、有利子負債のコントロールを進める姿勢を示した。