ニュース

NTTデータグループ、佐々木裕氏が代表取締役社長に NTTデータの社長と兼務

 株式会社NTTデータグループは10日、新社長に、副社長兼技術総括担当を務める佐々木裕氏が就任することを発表した。同氏は現在、日本で事業を担当するNTTデータの社長も兼務しているが、NTTデータグループの社長に就任後も、そのままNTTデータの社長を兼務することも明らかにしている。本間洋社長は相談役に就く。なおこれらの人事は、2024年6月18日に開催する予定の定時株主総会、および取締役会で正式決定される予定。また海外事業を担当するNTT DATA, Inc.の新社長には、Abhijit Dubey氏が就任する。

 5月10日に行われた会見で、佐々木次期社長は、「NTTデータグループは、ITサービス企業として、グローバルでは5番目、あるいは6番目の地位にある。グローバルのITサービス企業に対して、競合として十分に戦える準備が整った段階にある。国内での強みを、グローバルでどう展開できるのかといったことにも取り組みたい」としたほか、「NTTデータグループの財産は人材である。一人ひとりの社員が生き生きと明るく働ける会社にしたい。これまでは、お客さまが決めた仕様のシステムを作る時代だったが、いまは、企業の変革や社会の変革に対して、ITサービス企業がプロアクティブに動ける時代になってきた。こうした面白い時代を、社員が楽しめる会社にしたい」と述べた。

NTTデータグループの本間洋社長(左)と、佐々木裕 次期社長(右)

 さらに、「国内事業では人材不足が最大の課題である。グループ全体の総合力をいかに発揮していくかが、成長には重要である。また、海外事業ではM&Aを積み重ねており、成熟度にはバラツキがある。リージョンごとの特色をみながら、総合力を作り込んでいく必要がある。グローバルのITサービス企業との競争は想像以上に厳しい。その土俵に立った以上、より戦略的に取り組んでいくことが肝要である」とも述べている。

 佐々木次期社長は、1965年9月生まれの58歳。1990年4月にNTTデータに入社し、2016年6月に執行役員ビジネスソリューション事業本部長に就任。2018年6月には執行役員 製造ITイノベーション事業本部長、2020年6月には常務執行役員 製造ITイノベーション事業本部長兼ビジネスソリューション事業本部長、2021年6月には取締役常務執行役員 戦略統括本部長兼戦略統括本部事業戦略室長に就任した。2022年6月には常務執行役員 コーポレート統括本部長兼コーポレート統括本部事業戦略室長に就き、2023年7月に代表取締役副社長執行役員 日本リージョン担当、技術総括担当に就任。同時にNTTデータの代表取締役社長にも兼務で就任した。本間社長からは9歳の若返りとなる。

新社長となる予定の佐々木裕氏(現・副社長兼技術総括担当)

 「2021年に事業戦略室長に就任し、そのときに、中期経営計画の策定およびNTT Ltd.の統合プロジェクトに取り組んだ。また2023年7月からは、NTTデータの社長として、国内事業を牽引した。本間社長のリーダーシップのもとで、会社の形態を設計する役割を担当したが、今回の社長就任は、計画を設計した以上、その設計図にのっとって、経営することを任されたと理解している」と述べた。

 佐々木次期社長は、「お客さまへの提供価値をしっかりと高め、お客さまにとっての成果をしっかりと作っていくことにこだわりたい」とし、「提供価値を高めるために3つのことに取り組む」とした。

 ひとつめが「組織能力の継続的な向上」。コンサルティング力およびエンジニアリング力の強化を進める考えを示し、「お客さまの成果を実現するには、より優れた提言が必要になる。そのためのコンサルティング力を強化したい。また、提言した構想を実現するためのエンジニアリング力をしっかりとつけていくことが、グローバル展開の上でも必要である」と語った。

 2つめは「戦略的投資の推進」である。「国内事業会社では、国内のM&Aで1000億円を投資することを発表しており、すでに2件のM&Aを進めている。グローバルにおいても、足りない組織能力を獲得していくためのM&Aや、中長期的に成長するデータセンターへの投資を進めていく。生成AIなどの新たな技術にもしっかりと取り組んでいく」と方針を示した。

 3つめが、「NTTデータグループとしての総合力の発揮」だ。「ITサービスの競合会社をみると、テレコム企業の傘下にあるのはNTTデータグループだけである。つまり、つなぐ力を強みにして、競合と戦うことができる。IOWNやtsuzumiといった商材をグローバルにも展開していく」と述べた。

 一方、会見で本間社長は、「2016年6月に社長に就任して6年間、社長を務めた。『ほんま』にありがとうございました」と、自らの名字と掛け合わせたジョークで切り出しながら、「6年間は、長いようで、あっという間であった。就任直後から『GETS』をスローガンに掲げ、グローバル事業における質を伴った成長とともに、稼ぐ力を高めることに力を注いできた。だが、まだ道半ばのところもある」と振り返った。

NTTデータグループの本間洋社長

 GETSは、「Growth(成長する力)」「Earnings(稼ぐ力)」「Transformation(変える力)」「Synergy(連携する力)」の頭文字で構成され、本間社長は、この4つの力を高めていくことを基本コンセプトに掲げてきた。

 2022年5月には、NTTの子会社として海外事業を展開していたNTT Ltd.を、NTTデータに統合することを発表。グローバル事業では売上高が約1兆円だったものを、2023年度には、2兆6545億円にまで拡大した。また、2%だったEBITAは8%台まで向上。本間社長が注力した「グローバル事業」と「稼ぐ力」は、大きく成長したといえる。

 2023年7月には、持ち株会社のNTTデータグループ、国内事業のNTTデータ、海外事業のNTT DATA, Inc.による3社体制へ移行し、こうした大胆な事業構造改革も主導した。
「中期経営戦略の1丁目1番地は、社員力や組織力の強化であった。社員が重要な財産であり、そこの強化に取り組んできた。その結果が事業の数字にも表れたのではないか」と、自らの経営を振り返った。

 また、新たな経営陣についても言及。佐々木次期社長については、「2009年に、私が法人分野の本部長を務めたときから、長年付き合っている。ITサービスの豊富な経験や知見があり、技術にも長けている。さまざまな課題に対して、創意工夫をし、組織力を高めて、結果を出していく力が優れている。佐々木次期社長に期待をしている」とコメント。

 また、NTT DATA, Inc.の社長に就任するDubey氏については、「コンサルティング会社で20年強の経験があり、日本の企業や事業についても理解している人材である。一緒に仕事をしてきたが、課題の認識や進むべき方向性を、一緒になって作ってきた。その作業には佐々木次期社長も加わっていた。意識の方向性はしっかりとあっている。あとは実行して、結果を出していくだけである」と述べた。

 なお、社長交代会見の前に行われたNTTの2023年度決算会見において、NTTの島田明社長は、NTTデータグループの社長交代にも言及。「かなりの若返りになる。50代の新しい世代に、次の戦略を構築してもらいたい。佐々木次期社長は、国内を担当するNTTデータの社長としての経験があり、2023年度決算でも、日本市場はすべての分野で成長する素晴らしい業績となっている。NTT DATA, Inc.の新社長に就任するAbhijit Dubey氏とも懇意にしており、全体を引っ張っていくのにふさわしい人物である。大きな期待を寄せている」と語った。

NTTの島田明社長