ニュース
NTTデータ、NTT Ltd.との事業統合の進捗について説明 SAP移行案件などすでに統合成果も
2022年度第3四半期累計の連結業績も発表
2023年2月13日 12:00
株式会社NTTデータは9日、2022年度第3四半期累計(2022年4月~12月)連結業績を発表。その中で、2022年10月1日付で実施したNTT Ltd.との事業統合の進捗について説明。すでに統合成果による事例が出ていることなどを示した。
10月1日付で、NTTデータとNTTとの共同出資により、海外事業会社のNTT DATA, Inc.を設立し、11月1日には国内事業準備会社を設立。NTTデータ 代表取締役副社長執行役員の藤原遠氏は、「2023年7月に予定している持ち株会社体制の移行に向けて着実に準備を進めている」と報告。「NTT DATA, Inc.設立後の取り組みとして、NTT Ltd.との強みを掛け合わせたビジネス案件の醸成や、最適なオペレーションモデルの設計を進めている」とした。PMIコストとして110億円を計上。現時点で40億円を活用。毎年100~200億円を活用し、ビジネス成長につなげる考えを示した。
ここでは、具体的な成果として、大手家電メーカーのSAP移行案件に言及した。
SAP領域に強みを持つNTTデータが、NTT Ltd.とともに、SAP移行プロジェクトを受注。NTTデータでは、SAP S/4 HANAへのアプリケーション移行やビジネスプロセスの最適化を実施し、NTT Ltd.では、SAP環境が動作するMicrosoft Azureや、環境接続のためのネットワークを提供。
「これまでのSAPアプリケーション領域での実績に対する評価に加えて、海外事業統合によって拡大したグローバルにおけるカバレッジ、ネットワーク、インフラからアプリケーションまでのサービスをトータルで提供できる点を評価してもらっている。この大手家電メーカーは複数の国で事業を展開しており、複数の国でサービスを展開できるNTT Ltd.とNTTデータのケイパビリティが評価された」とし、「実案件を通じて、世界中のお客さまと業界に対する一元的な理解を深め、NTTデータのブランドを、より信頼されるものにし、市場競争力を強化。企業価値の向上を実現する」と、今後の方向性を示した。
またNTT Ltd.では、マネージドITサービスを中心とした高付加価値サービスへの事業シフトを推進。構造改革を実行していることにも触れ、「高付加価値サービスの売り上げ拡大に向けては、専門性が高いセールスの拡充を推進し、人員配置やリスキリング、外部からの採用を行っているほか、重点顧客に対して高付加価値商材を集中提案するアカウントプランの策定、実行を行っている。また、ハイパースケーラーなどの旺盛な需要の取り込みに向けて、データセンターへの積極的な投資を継続している。さらに、構造改革では、より効率的な事業基盤の確立を目指しており、不採算サービスからの撤退、クラウドへの移行促進、セキュリティ事業の再編による各種サービスマイグレーションを展開。アウトソーシングを活用したオペレーション、デリバリーの強化を進めている。また、オーバーヘッドの業務のさらなる効率化による人員の最適化を実施している」と述べた。
NTTデータでは、各地域において、市場シェア2%獲得を掲げているが、「シェア2%を超えると、各国のトップ10の中に入ることができ、RFPを獲得しやすくなる。NTT Ltd.と統合することで、2%を超える地域も増えており、共同での提案を加速している。北米、欧州、アジアにおいて、ジョイント・ゴー・トゥ・マーケットと呼ぶ施策を展開しており、各リージョンでの顧客リストを突き合わせ、インフラに近いところはNTT Ltd.、アプリケーションに近いところはNTTデータが担当し、クロスセルができる案件を10社ずつ選んでいる。それぞれに対して、どうアプローチするかを議論している。先に触れた大手家電メーカーのSAP移行案件もこうした取り組みによって獲得したものである。SAPとクラウドの組み合わせは反応がいい。すでに複数案件で受注が動き始めている。いままでNTT Ltd.がインフラしか提供できていなかった顧客に対しても、フレームワーク契約を通じて獲得したRFPを、NTTデータが逃さずに提案できる。事業機会が拡大すると見ている」と述べた。
早くもNTT Ltd.との事業統合の成果が生まれていることが示された格好だ。
第3四半期連結業績、売上高および営業利益は増加
一方、NTTデータの2022年度第3四半期(2022年4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比30.2%増の2兆4061億円、営業利益が同9.8%増の1834億円、税引前利益が同2.3%増の1730億円、当期利益が同4.1%減の1057億円となった。2022年10月からの海外事業の統合に伴い、第3四半期はNTT Ltd.を連結。売上高および営業利益は増加する一方、四半期利益では金融および法人所得税費用の増加によって減益になった。
なお、受注算定方法が異なるNTT Ltd.を除いた受注高は、前年同期比8.7%増の1兆8702億円となった。
NTTデータの藤原副社長は、「売上高は、連結拡大影響に加え規模拡大、為替が影響し、上期に続いて、すべてのセグメントで増収となった。営業利益は、全社戦略投資の増加や、第2四半期に計上した不採算案件の損失などがあったが、連結拡大影響に加えて、増収などにより増益となった。NTT Ltd.を除いた受注高は、前年度に獲得した国内事業における大型案件の反動減はあったものの、海外事業における案件獲得、為替影響により、第3四半期に増加幅がさらに拡大した」と総括した。
売上高では、前年同期比30.2%増のうち、約半分がNTT Ltd.の連結拡大影響によるものだという。また、金融費用および税金費用の増加は、NTT Ltd.のデータセンター事業の特性上、先行投資型で、大規模な設備投資を必要とするため、有利子負債が増加したことに加えて、昨今の金利急上昇が影響し、支払利息が増加したことが影響しているという。
なお、為替が1円円安に動いた場合の通期業績予想への影響額は、売上高に対して、ドルは約100億円のプラス影響、ユーロは約40億円のプラス影響になる。
セグメント別業績は、公共・社会基盤の売上高は前年同期比4.2%増の4235億円、受注高が同18.8%減の3286億円、営業利益は同14.1%減の379億円。「売上高はテレコム・ユーティリティおよび中央府省向けサービスの規模拡大などにより増収。受注高は前期に獲得した中央府省向け大型案件の反動減によって減少した。営業利益は、増収による増益はあるものの、第2四半期に計上した不採算案件の損失などにより減益になった」という。
金融の売上高は前年同期比3.6%増の4822億円、受注高は同3.4%減の2850億円、営業利益は同24.9%増の506億円。「売上高は、大手金融機関向けサービスの規模拡大などにより増収。受注高は前年同期に獲得した銀行向け大型案件の反動減などにより減少した」という。
法人の売上高は前年同期比12.1%増の3800億円、受注高は同18.7%増の2854億円、営業利益は同14.9%増の416億円となった。「売上高は、製造業、流通・サービス業向け案件およびペイメントサービスの規模拡大などにより増収。受注高は、流通・サービス業および製造業向け案件の獲得などにより増加した」と述べた。
海外の売上高は前年同期比66.3%増の1兆2653億円、営業利益は同112.8%増の525億円となった。北米では、金融、ヘルスケア、公共、製造が牽引役となり、欧州ではスペイン、ドイツ、英国のほか、ブラジルが牽引役になり、金融、公共、製造、テレコムメディアが事業成長を牽引したという。また、NTT Ltdを除く海外の受注高は前年同期比25.8%増の9198億円となった。
「売上高は約5000億円の大幅な増収となった。そのうち、NTT Ltd.の連結拡大影響が3024億円、営業利益は128億円となっている。また、売上高への為替影響は約1200億円となっており、これらを除いた場合でも、欧州での規模拡大などによって増収になっている。受注高は欧州での案件獲得および為替影響などにより増加した。収益性の悪いものは既存案件でも更改しないという取り組みも行っている」と説明した。
また、「日本、北米、欧州のいずれの地域においても、IT投資が後退するということはない。既存領域でのコスト抑制圧力は国内外ともに強いが、デジタルによる新たなビジネス創出領域への投資は積極的である。お客さまは、これに取り組まないと業界の中で生き残れないという位置づけでとらえている。その状況はコロナ禍でも、いまでも変わらない」と指摘した。
さらに、「海外では如実に人件費が上昇している。スキルがある技術者は20%もあがっている。お客さまに対して、理解を求めることも必要である。米国では、人の流動性が高く、賃上げも進んでいる。米国のチームでは、お客さまに対して、契約更改のタイミングだけでなく、契約の途中でも、価格交渉をするチャンスでもあると判断し、方針のひとつとして取り組んでいる」と述べた。
一方、2022年度の連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比28.1%増の3兆2700億円、営業利益は同11.0%増の2360億円、税引前利益が同6.6%増の2300億円、当期利益が同4.9%減の1360億円としている。
「売上高は、第3四半期までは全セグメントにおける増収や、為替影響もあり、順調に推移している。営業利益は引き続き、全社戦略投資などの支出があるものの、増収による増益により年間業績予想達成を目指す」と述べた。
戦略投資が前年度に比べて約150億円増加していることや、第2四半期の不採算案件が影響した特殊要因はあるが、「全体の収益性が落ちているという認識はない。戦略的投資は当面続けていく」と述べた。
また、受注については、「かなり積みあがってきている。特に欧州での受注が好調であり、欧州チームでは、上流コンサルティングを持つ強みを生かしており、そこからデジタル案件を獲得し、BPOなどのボリュームのあるビジネスへと広げている。全体的な受注も、2021年度第4四半期をボトムに、受注残が増えている。受注から売り上げに転換するスピードもあがっており、その背景には、デジタル系の案件の増加がある。結果として、粗利は一昨年と比較して、1.5%の改善につながっている」と語った。