ニュース
NTTデータグループの2023年度第1四半期連結業績、売上高・受注高はNTT Ltd.の連結によって大きく拡大
データセンタービジネスの状況についても説明
2023年8月9日 00:00
NTTデータグループが8日に発表した2023年度第1四半期(2023年4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比49.8%増の1兆149億円、受注高が同60.3%増の9983億円、営業利益は同1.4%増の583億円、税引前利益が同18.1%減の482億円、当期利益が同30.4%減の276億円となった。売上高や受注高は、海外事業のNTT Ltd.の連結化によって大きく拡大した。
NTTデータグループ 取締役副社長執行役員の中山和彦氏は、「第1四半期の業績は、おおむね想定通りの進捗である。売上高は、NTT Ltd.の連結拡大影響に加え、国内および欧州における規模拡大、為替のプラス影響などにより増収となった。営業利益は、海外における事業統合費用や構造改革費用の増加、全社戦略投資の増加などにより前年並みとなり、四半期利益は、NTT Ltd.の連結拡大影響に伴う金融費用などの増加によって減益になった。外貨の借り入れが多いこと、データセンター投資の積極化を進める予定であり、今後の金利動向には注視していく」と総括した。
セグメント別業績は、公共・社会基盤の売上高は前年同期比13.1%増の1467億円、受注高が同17.8%増の1645億円、営業利益は同37.2%増の155億円。金融の売上高は前年同期比1.3%増の1656億円、受注高は同48.6%増の1278億円、営業利益は同6.2%増の172億円。法人の売上高は前年同期比9.5%増の1303億円、受注高は同3.4%減の828億円、営業利益は同2.3%減の128億円となった。
「国内事業は堅調に進んでいる。国内におけるDXニーズが高まっている」とし、公共・社会基盤では中央府省向け案件の規模拡大、金融では地域金融機関向け案件の規模拡大、法人では小売・消費財向け案件の規模拡大が貢献。受注では、公共・社会基盤、金融ともに着実に案件を獲得しており、行政手続きの利便性向上や効率化の案件が増加すると見ている。また法人においては、前年同期に獲得した小売・消費財向け大型案件の反動減があったが、IT投資は拡大傾向にあり、コロナ前の状況を取り戻しつつあるという。
なお、法人での営業利益はマイナスとなっているが、「コンサルティングやアセットのオファリング強化などの成長施策への投資増があった」とした。
海外の売上高は前年同期比102.5%増の6182億円、受注高は同107.1%増の6036億円、営業利益は同12.8%増の150億円となった。海外のうち、北米の売上高は同1.2%増の1409億円、受注高は同4.3%減の952億円、EBITAが前年同期並みの101億円。EMEA・中南米の売上高は前年同期比17.7%増の1910億円、受注高は同3.4%増の1966億円、EBITAが同32.0%の81億円。NTT Ltd.の売上高が2854億円、受注高が3041億円、EBITAが114億円となった。
「海外事業は、北米やEMEA・中南米において、一部案件が第2四半期に繰り延べになった影響があった。北米では為替影響を除くと実質減収だが、収益性の向上を重視し、案件の選別を行っている影響がある。想定の範囲内の減収である」と説明した。
NTT Ltd.の前年同期実績は開示していないが、「EBITAは前年同期には99億円であり改善している」と述べた。
2023年度通期の業績見通しは据え置き
一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)の連結業績見通しは据え置き、売上高が前年比17.5%増の4兆1000億円、受注高(NTT Ltd.除く)が同4.6%増の2兆8500億円、営業利益は同12.7%増の2920億円、税引前利益が同1.2%減の2400億円、当期利益が同4.0%減の1440億円としている。海外売上比率は約6割を占め、海外従業員比率は8割になるという。
中期経営計画では、コンサルティング強化およびアセットビジネスの進化に注力しており、その成果として、サステナビリティ経営関連の案件が増加していることを示した。ここでは、戦略コンサルティングを切り口に、C-TurtleによるCO2排出量の見える化から、CO2削減につなげるまでの活動を一気通貫で提案。すでに、JR西日本グループでは、C-Turtleを導入した実績が生まれており、今後は、コンサルティングとアセットをつなげた提案のボリュームを増やしていく姿勢をみせた。
今後のさらなる事業拡大に向け、グローバル経営体制にシフト
なお2023年7月に、持株会社のNTTデータグループ、国内事業会社のNTTデータ、海外事業会社のNTT DATA Inc.の3社体制へと移行している。
「海外ビジネスの拡大に積極的に取り組んでおり、今後のさらなる事業拡大に向け、グローバル経営体制にシフトしていく。グローバルを前提とした戦略のもとで、事業環境の変化に迅速に対応することが急務になっている。持株会社は、グローバル戦略の策定やグローバルシナジー創出、グローバルガバナンスの強化を推進する」と説明。「国内事業において、分割損があってはいけない。顧客に対してサービスを提供していくことが原点であり、国内の機動性を損なうことなく、事業を進めている。事業統合や構造改革は順調に進んでおり、中期的な成長に向けて取り組みを進めていく」との考えを示した。
会見では、NTT Ltd.の統合以降の海外事業の進捗についても触れた。
中山副社長は、「海外事業においては、これまでの『つくる力』に『つなぐ力』を加えることで、NTTデータグループだからこそ提供できる仕組みや価値をグローバルで創造していくという狙いのもとで、海外事業の統合を進めている。第1四半期においても新たな連携案件が出てきている」と語った。
連携提案の事例として挙げたのが、大手多国籍企業の案件だ。親会社からのスピンアウトに伴うIT環境の構築を行っており、2024年初めまでに、親会社のシステムからアプリケーションおよびインフラを切り離して、スタンドアロン型で稼働させることになるという。北米のNTT DATA ServicesとNTT Ltd.が連携し、NTT DATA Servicesが強みとするERPやHCM、経費精算、ITサービスマネジメントなどのアプリケーションサービス領域と、NTT Ltd.が得意とするネットワークやセキュリティ、業務環境、クラウド基盤などのインフラサービス領域を組み合わせて、One NTT DATAとして、フルスタックでサポートしていくという。
「引き続き海外の事業統合を進め、2024年からの新たなオペレーティングモデルを推進することで、さらなるシナジーを創出したい」と語った。
データセンター事業には今後も積極的に投資
また、データセンタービジネスについても説明した。
NTTデータグループは、海外事業の統合により、世界第3位のグローバルデータセンター事業者となっており、「データセンター市場は高い成長率が見込まれ、引き合いも旺盛である。データセンター事業を中長期的な収益源にとらえるとともに、事業基盤の重要な柱と位置づけて、今後も積極的な投資を進める方針である」とした。
2023年度も約3500億円の投資を計画し、市場全体の成長率と同等か、それを上回る事業成長を目指すという。
NTT DATAでは、全世界約30都市に、100カ所以上のデータセンターを設け、ハイパースケーラーおよびエンタープライズ向けに提供するための堅牢なファシリティと、豊富な電力供給を誇る環境を確保。各地域の特性や規制に応じた成長戦略を設定し、投資の拡大とビジネス拡大を進めているという。2023年度は、インドやドイツ、マレーシア、米国に10カ所以上のデータセンターを竣工する予定だ。
北米では、フットプリントの拡大により、ハイパースケーラーの旺盛な需要を取り込んでいるほか、第1四半期においても、大手ハイテク企業や金融機関から大口受注を獲得しており、中南米やカナダ市場への拡張も検討しているという。
また、データセンターの電力使用量は、NTTデータグループ全体の約7割を占めており、省エネルギー化への取り組みは避けては通れないとし、「2030年までにすべてのデータセンターで、再生可能エネルギーの活用100%の目標を設定している。計画達成に向けて省エネ化、再生可能エネルギー調達、設計の標準化プロジェクトなどを立ち上げ、プロジェクトの実行管理、現場オペレーションの実装を進めている」と述べた。
一方、生成AIについても言及。中山副社長は、「生成AIの活用によって、事業へのインパクトが出ると想定している。システム開発の際のコーディングへの活用による効率化に加えて、顧客に提供するサービスに組み込むことで付加価値を高めることを期待している」とコメント。
NTTデータグループの西村忠興執行役員は、「国内外の複数のプロジェクトで、生成AIの試行適用を考えている。2023年6月にはGlobal Generative AI LABを設置したほか、文書読解AIであるLITRONと生成AIを連携した新サービスを提供することも発表している。それ以降、大手金融機関を含めて、多数の引き合いがある。PoCを含めて、新たな価値の共創に取り組んでいく」とした。
また、「NTTデータグループの強みは、パートナーとの戦略的連携により、さまざまな大規模言語モデルを最適に組み合わせて提供できる点にある。今後は、企業特化型や特化型など、小さくてセキュアな大規模言語モデルのニーズが増加すると考えており、NTTグループの研究成果を活用しながら構築していく。また、企業特化型AIなどでは、自国のなかにデータを置きたいというニーズが出てくるだろう。NTTデータグループが持つデータセンターの利用も広がると期待している」と語った。