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富士通、SXブランド「Fujitsu Uvance」を推進 2025年度に7000億円の売上を目指す
2023年9月27日 06:15
富士通株式会社は25日、「Fujitsu Uvance」の取り組みについて説明した。
Fujitsu Uvanceは、2021年から同社が推進しているSX(サステナビリティトランスフォーメーション)のための事業ブランドで、社会課題を起点とした市場創造と高付加価値化を進めるためのビジネスモデルと位置づけている。
富士通 執行役員 SEVP グローバルビジネスソリューションビジネスグループ長の高橋美波氏は、「Fujitsu Uvanceは、富士通の事業の中核を担うブランドになる」と語り、「社会課題を解決する富士通のサービスおよびソリューションであり、従来の業種業態にとらわれないクロスインダストリーによる提案を行うこと、従来型のSIとは異なり、クラウド型アプリケーションにより、1対複数のサービスを提供し、機能拡張を容易にするのがFujitsu Uvanceの特徴である」と位置づけた。
また、「SXの領域に、ここまで本格的に参入している企業は富士通しかない。ファーストペンギンであり、ベンチマークの対象になる企業はない」と語る一方、「2年を経過したものの、お客さまにおけるFujitsu Uvanceのブランド認知度や理解度が足りないといった課題を感じている。社内および社外に対して、Fujitsu Uvanceを理解してもらうための活動を活発化させたい」と語った。
Fujitsu Uvanceでは、「Sustainable Manufacturing」、「Consumer Experience」、「Healthy Living」、「Trusted Society」の4つをVertical Areasとし、「Digital Shifts」、「Business Applications」、「Hybrid IT」の3つをHorizontal Areasにとらえ、それぞれにオファリングを用意している。
Vertical Areasは、2022年度実績の約100億円から、2025年度には4000億円にまで増加させる計画であり、Horizontal Areasは2022年度実績の約1900億円の規模から、2025年度には1000億円の上乗せを目指す。Uvance全体においては、今後、3年間で5000億円を増加させ、売り上げで7000億円を達成する計画だ。
高橋執行役員は、「富士通は、1970年代にマネージドインフラサービスの提供を開始して以降、10~15年ごとに、新たな市場を形成し、社会に役立つ価値を提供してきた経緯がある」としながら、「これからの10年間は、デジタルイノベーションがサステナビリティに寄与する時代になる。住環境やサプライチェーン、自然災害などの課題が顕在化しており、将来、SX市場は80兆円規模に達するという予測もある。これらの課題をFujitsu Uvanceで解決したい。また、1769人のビジネスリーダーを対象に調査をした結果、サステナビリティをコストではなく、ビジネス機会としてとらえていることがわかった。企業にとっても利益追求型だけではなく、社会に対する貢献が重要になる」と語る。
調査では、持続可能なエネルギー消費や、廃棄物の削減およびリサイクル、防災や社会の安心・安全への取り組みなどが、ビジネス機会につながると判断しているビジネスリーダーが多いという。
さらにFujitsu Uvanceでは、ビジネスモデルを変革する役割も担い、従来の業種業務軸の商品から、社会課題軸のオファリングへと移行。さらに、顧客IT部門の要件主導から、イシュードリブンおよびコンサルリードに変革し、個社対応のSIからグローバル共通サービスへと移行することを狙っているとし、「以前からのSIがなくなるわけではない。これを継続しながら、新たな領域への転換と、ポートフォリオの変革を進めていくことになる」と述べた。
また、データ基盤やデータ利活用といったSX領域における技術の標準化やロビー活動のほか、富士通が持つ顧客基盤や業種の知見、テクノロジーの強み、パートナーとの連携を推進。戦略パートナーであるマイクロソフト、AWS、ServiceNow、SAP、Salesforceが持つテクノロジーとの連携を強化していくのに加えて、Uvance新規パートナーとして、脱炭素化実現に向けたワンストップサービスを提供するAnthesis、デジタルツイン技術を持つHexagonと連携していることも示した。
Fujitsu Uvanceの具体的なオファリング
今回の説明会では、Fujitsu Uvanceの具体的なオファリングについても説明を行った。
Fujitsu Uvanceでは、地球環境問題の解決(Planet)、デジタル社会の発展(Prosperity)、人々のウェルビーイングの向上(People)を「必要不可欠な貢献分野」に定義して、顧客や社会に価値を提供。これを下支えするカテゴリーとして、テクノロジー(Technology)、経営基盤(Management Foundation)、人材(Human Capital)を位置づけ、「持続的な発展を可能にする土台」にとらえて、持続的な成長に向けて解決すべき重要課題をテーマとして特定していくことになるという。
こうしたテーマのなかから、「気候変動(カーボンニュートラル)」、「責任あるサプライチェーンの推進」、「顧客・生活者体験の向上」、「QoL(生活の質)向上に向けた医療ヘルスケアの推進」の4つのテーマについて紹介した。
「気候変動(カーボンニュートラル)」では、企業価値の最大化に向け、財務および非財務の両面からファクトに基づいて、最適なESG経営を実現するためのサービスとして、ESG Carbon Neutrality Offeringを用意しているという。富士通が培ってきたデータ統合のノウハウ、データを利活用する分析基盤やシミュレーションツールにより、CO2排出量を可視化し、コンプライアンス対応をしながら、次の意思決定につなげることができるようになる。
「責任あるサプライチェーンの推進」では、コロナ禍においてサプライチェーンが分断され、最適化だけを求めていた考え方が終焉。パンデミックや地政学リスクをとらえた柔軟なサプライチェーンを担保することが重視されていることに対応したオファリングとして、Digital Resilience/Sustainable Supply Chainを提案しているという。業種間のホワイトスペースをつなぐクロスインダストリーマネジメントと位置づけ、トレーサビリティをブロックチェーン技術で確保。災害対策のシミュレーションにスーパーコンピュータ計算技術を活用したり、説明可能なAIやアンサンブルモデルを駆使した需給バランスの最適化による機会損失や廃棄の削減を実現したりする。
3つめの「顧客・生活者体験の向上」では、Omni Channel Servicesを提供。デマンドコントロールによる顧客体験向上と廃棄ロス削減を両立する。AIやデータ処理技術を活用したダイナミックプライシングや需給予測、オムニチャネルによる顧客接点の多様化にも対応。最終消費者が望むものを、望んでいるときに、適切な価格で提供する環境を実現するという。ここでは、2023年3月に買収した独GK Softwareのフロントテクノロジーも活用する。
4つめの「QoL(生活の質)向上に向けた医療ヘルスケアの推進」では、個人起点のデータ連携と多業種との共創により、日常生活に溶け込むヘルスケアを実現するDigital Care Platformsを提案。個人がヘルスケアデータを保持することで、医療機関、製薬企業、保険会社、健保組合、自治体、食品メーカー、小売店などが、個人に最適化したサービスを提供できるようにする。富士通は電子カルテでは国内トップシェアを持ち、HL7 FHIR JP Coreに準拠したデータ連携も行っている。その環境を生かしながら、最適な医療サービスの実現を目指すという。
富士通 Solution Service Strategic本部 Co-Headの青柳一郎氏は、「Fujitsu Uvanceのビジネスのとらえ方、オファリングの作り方の1丁目1番地は、社会課題である。エネルギー不足やパンデミック・自然災害、高齢化・人口減少・貧困といったグローバルな社会課題をSXのテーマとし、Fujitsu Uvanceのオファリングで解決していくことになる」と語った。
現在、Fujitsu Uvanceでは、Vertical Areasにおいて26のオファリングを用意している。
「Sustainable Manufacturing」では、川崎重工業が製造業DXプラットフォームを導入し、これをリファレンスとして横展開。帝人では環境価値化プラットフォームを導入し、これも横展開していくことになるという。大手製造企業は、GHG排出量の可視化だけでなく、スコープ3でのGHG排出量の最小化を行っている例があるという。
「Consumer Experience」では、トリドールホールディングスがAIを活用した需要予測により食品ロスを削減。アパレル企業のtex.tracerでは、ブロックチェーン技術を活用して、サプライチェーンを透明化。材料の原産地の証明を行っており、ここに新たな機能を追加しながら、ほかの企業にも展開していくとのこと。
また、「Healthy Living」では、ペプチドリームが、創薬プロセスの変革に挑戦しているほか、「Trusted Society」では、独シュトゥットガルト市でデジタルツインプラットフォームを活用したレジリエントな都市づくりが進んでいるという。
さらに、Fujitsu Uvanceにおいては、外部団体との連携も進めており、JEITAが事務局を務めるGreen×Digitalコンソーシアムは、サプライチェーン全体でのCO2排出量の見える化により、削減に向けた仕組みづくりを共同で検討。WBCSD PACTプログラムでは、サプライチェーン全体のCO2排出量の可視化とデータ連携を通じてネットゼロを目指す実証を開始している。
なお、説明会場の横では、Fujitsu Uvanceのさまざまなオファリングが展示されていたので、その様子を写真でお届けする。