ニュース

富士通、2025年度までの新中期経営計画を発表 売上収益4兆2000億円を目指す

サービスソリューションにおけるUvanceの売上構成比を30%まで拡大へ

 富士通株式会社は24日、2025年度を最終年度とする新たな中期経営計画を発表した。2025年度の売上収益は4兆2000億円(2022年度実績は3兆7137億円)、調整後営業利益は5000億円(同3208億円)、調整後営業利益率は12.0%(同8.6%)を目指す。

2025年度の目標(財務)

 そのうち、サービスソリューションでは、売上収益は2兆4000億円(2022年度実績は1兆9842億円)、調整後営業利益は3600億円(同1629億円)、調整後営業利益率は15.0%(同8.2%)を掲げた。

企業価値向上に向けた財務戦略

 また、Fujitsu Uvanceの売上額は2022年度の2000億円を、2025年度には7000億円に拡大する。サービスソリューションにおけるUvanceの売上構成比は、2022年度の10%から、2025年度は30%と高まることになる。

 富士通の時田隆仁社長 CEOは、「富士通が目指す、2030年およびそれ以降の姿に向けて、持続的な成長と収益力向上に向けたモデルを構築する3カ年となる。事業モデルと事業ポートフォリオの変革、お客さまのモダナイゼーションの確実なサポート、サービスビジネスシフトによる海外ビジネスの収益性向上に取り組む」としたほか、「Fujitsu Uvanceを成長ドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指す」と述べた。

富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏

 また、コアフリーキャッシュフローは3000億円(2022年度実績は1500億円)、EPSの年平均成長率は2019~2022年度の12%に対して、2025年度までの3年間で14~16%を目指す。ベースキャッシュフローは、前中計での3年累計6500億円に対して、2倍となる累計1兆3000億円を計画。成長領域への投資を拡大しながら、最適なアロケーションを実施する。

 さらに、非財務指標として、環境分野においては、Scope1および2でのCO2排出量は、2020年度比で50%削減。Scope3では12.5%削減を掲げたほか、お客さまNPSでは2022年度比で20ポイント増加、1人あたりの生産性(営業利益)で40ポイント増加、従業員エンゲージメントでは75(2022年度実績で69)、女性幹部社員比率で20%(同14%)を目指す。

2025年度の目標(非財務)

 Fujitsu Uvanceは、2021年10月に発表した事業モデルであり、「単なるソリューションの集合体ではなく、社会課題を起点として、クロスインダストリーで、お客さまの成長に貢献するデジタルサービスを提供する仕組み」と位置づけている。

 サステナブルな世界を実現する7つのKey Focus Areasを設定。そのうち、社会課題を解決するクロスインダストリーを推進するVertical Areasとして、「Sustainable Manufacturing」、「Consumer Experience」、「Healthy Living」、「Trusted Society」の4分野、クロスインダストリーを支える3つのテクノロジー基盤となるHorizontal Areasとして、「Digital Shifts」、「Business Applications」、「Hybrid IT」の3分野がある。

 2023年度には、Vertical Areasの品ぞろえを進め、Fujitsu Uvanceのポートフォリオが出そろうことになる。2024年度以降に、Vertical Areasのビジネスが大きく立ち上がると見込んでいる。

Fujitsu Uvance

 富士通 取締役執行役員 SEVP/CFOの磯部武司氏は、「現在、2000億円のうち、Vertical Areasは100億円規模にとどまっており、Business ApplicationsやHybrid ITなどのHorizontal Areasがほとんどを占める。SAPやServiceNowなどの案件が中心となっている。SAPへの対応は、リソースを増強しなくてはならないほどの状況にあり、注残もある。その一方で、今後期待をしているのはサプライチェーンを中心としたSustainable Manufacturingであり、さらに、Consumer Experienceでは、GK Softwareの買収によるオファリングの品ぞろえを進める。Vertical Areasは2025年度までに4000億円に拡大したい」とした。

富士通 取締役執行役員 SEVP/CFOの磯部武司氏

中期経営計画における4つの重点戦略

 中期経営計画における重点戦略として、「事業モデル・ポートフォリオ戦略」、「カスタマサクセス戦略/地域戦略」、「テクノロジー戦略」、「リソース戦略」の4点を挙げた。

中期経営計画における重点戦略

 ひとつめの「事業モデル・ポートフォリオ戦略」では、成長領域への投資や効果をより明確にし、事業ポートフォリオのマネジメントを強化。それに向けて、事業セグメントを変更した。

 従来のテクノロジーソリューションを、サービスソリューションとハードウェアソリューションに分類。サービスソリューションは、Fujitsu Uvanceを中心とした「グローバルソリューション」と、各リージョンが提供するサービスビジネスの「リージョンズ」に分かれる。

事業セグメントの変更

 またサービスソリューションでは、Fujitsu Uvanceによるオンクラウドサービスと、従来型のオンプレミスサービスを、それぞれ提供。オンクラウドのデジタルサービスは、利益性が高い領域での売り上げ拡大に注力。それに向けてコンサルティングの強化やバートナーとの戦略的アライアンスの強化、先端テクノロジーの強化およびビジネスへの実装、デジタルサービスを提供するための人材育成を進める。オンプレミスサービスでは、デリバリーの標準化による生産性向上、クラウドシフトにつながるモダナイゼーションの拡大により、安定的に利益を確保。不採算プロジェクトの撲滅にも取り組むという。

 顧客との長期的なエンゲージメントを構築するために、ステージに応じた関係構築を推進することにも力を注ぐ。事業課題に向き合うコンサルティングフェーズ、最適なITオファリングを提供するデリバリーフェーズ、クラウド移行やアプリケーションのモダナイズを進めるモダナイゼーションフェーズに分け、顧客の課題に向き合い、最適なソリューションを継続的に提供。モダナイゼーションやクラウドシフトなど、DX実現に向けた長期的な支援を行う。

 「中期経営計画のなかでは、特にコンサルティングを強化し、断片的になりがちだった3つのフェーズをつなげ、よりお客さまの状況に適した包括的なソリューションを提供することで、お客さまエンゲージメントを高める」とした。

お客さまとの長期的なエンゲージメントを構築

 2つめの「カスタマサクセス戦略/地域戦略」では、顧客の課題を解決するコンサルティングの拡充を重点テーマに挙げた。

 Fujitsu UvanceのHorizontal Areasをはじめとするテクノロジー・コンサルティングと、Vertical Areasを中心としたビジネス・コンサルティングの両軸で展開。現在2000人のコンサルティングスキルを持つ人員を、2025年度までに、テクノロジー/ビジネスをあわせて1万人体制にまで増強する。

お客さまの課題を解決するコンサルティングの拡充

 また、モダナイゼーションビジネスでは、テクノロジーとビジネス両面でのコンサルティング力や、メインフレームの構築などで培ったエンジニアリング力、モダナイゼーション専任組織やグローバルでのデリバリー体制といった独自の強みを生かして、既存資産を受け継ぎながら、最適なソリューションを提供する。「将来のあるべき姿に向けてグランドデザインを示し、業務や資産の可視化、モダナイゼーションの実行までをトータルで支援する。情報システムの最適化と、DX、GXを支援することに力を注ぐ」と語った。

お客さまの最適なモダナイゼーションを実現

 地域別の主な取り組みとしては、収益性の向上を目指し、グローバルでのサービスビジネスの強化に取り組むほか、日本では、全業種のモダナイゼーションをサポートするとともに、日本を起点に世界で事業展開する顧客に対しては、グローバル標準のサービスやサポートを提供する体制を強化。海外リージョンでは、Fujitsu Uvanceを中心としたグローバルなソリューションやサービスの提供を拡大し、海外サービスに占めるFujitsu Uvanceの売上比率を、2022年度の20%から、2025年度には45%にまで拡大する。

 調整後営業利益率は、日本では2022年度の12%から、2025年度には19%に拡大する一方、海外リージョンでは1%から3%に拡大させる。時田社長 CEOは、「海外ビジネスの質の変革を加速する」と述べるとしたが、「この3年間の海外ビジネスは伸びないと見ている」と語った。

地域別の主な取り組み

 戦略的アライアンスの強化では、マイクロソフトとの戦略的パートナーシップの拡大のほか、AWSとは強みを持つ特定業種での取り組みに加えて、オファリング開発や人材育成で連携し、全社的に協業を拡大。SAPとは、ERPデータやプロセスをクラウド移行するためのオファリングである「RISE with SAP」を、自社実践をベースにビジネスを拡大する。ServiceNowとは、富士通グループの全社員が教育を受講できるようにし、2023年度にはServiceNow資格取得者を1万人以上に拡大し、グローバルでのビジネス拡大につなげる。また、セールスフォースとは製造、ヘルスケア領域での共同ソリューションの開発をスタートしており、さらなる連携強化とビジネス拡大を図る考えだ。

戦略的アライアンスのさらなる発展

 さらに、情報セキュリティインシデントや、システム品質問題の再発防止に向けて、全社を挙げた施策を実施。体制強化や情報セキュリティ対策強化、システム品質の改善、向上にも取り組む。

 3つめの「テクノロジー戦略」においては、Fujitsu Uvanceを支えるキーテクノロジーとして位置づけている「コンピューティング」、「ネットワーク」、「AI」、「データ&セキュリティ」、「コンバージング」には、今後も重点的に投資しながらも、「今後は、AIを核にコアテクノロジーを強化し、付加価値としてビジネスに実装する」と語った。

テクノロジーを起点とした付加価値の創出

 ここでは、理化学研究所や東京工業大学とともに、富岳を活用して生成AIの中核となる大規模言語モデルの学習手法を共同開発したり、英国ワイト島のシェアードeスクーターにおいては、行動経済学とAIを組み合わせて、人の行動を高精度にデジタルツイン上に再現し、行動の変化を予測し、施策の効果などを事前に検証したりできる例を挙げた。

テクノロジー活用の事例

 そして、4つめの「リソース戦略」では、事業と連動した人材ポートフォリオをグローバルで実現する。グローバル統一のジョブロールを定義し、人材ポートフォリオの見える化や事業と連動した人材育成計画をグローバルで推進する。リスキリングやアップスキリングを中心とした施策で成長領域のリソース拡充につなげる考えだ。

事業と連動した人材ポートフォリオの実現

 また、生産性の向上や経営基盤の強化に向けては、人材とデジタルテクノロジーで事業を支える経営基盤へと高度化。事業ポートフォリオに連動した人的資本経営を推進し、個人にフォーカスした成長の仕組みづくりや、自律性や自主性を重視した施策を展開。さらに、One Fujitsuプログラムを中心にデータドリブン経営の強化を進める。「社内実践を通じた 経験やノウハウをリファレンスとして、お客さまに提供し、社会全体のDXを促進する」と語った。

経営基盤の強化によるお客さまへの提供価値の向上

 時田社長 CEOは、「富士通の目指す姿」についても言及。気候変動などを重点分野とする「地球環境問題の解決」、情報セキュリティ確保などによる「デジタル社会の発展」、QoL向上に向けた医療ヘルスケアの推進などの「ウェルビーイングの向上」の3点をマテリアリティとし、それらにおいて11の課題を設定。「先端テクノロジーや多様な人材といったケイパビリティを活用するとともに、課題解決のためのテクノロジーやオファリングを創出しながら、社会に貢献していきたい」と語った。

富士通のマテリアリティ

 また、2030年に向けた価値創造の考え方として、ビジョンを新たに制定したことを発表。ビジョンでは、「クロスインダストリーで、サステナビリティに貢献するデジタルサービスを提供し、社会、お客さま、株主、社員などのステークホルダーにとって、ネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニー」を掲げた。

 「富士通にとってのネットポジティブとは、財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決やデジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上に取り組み、テクノロジーとイノベーションによって社会全体へのインパクトをプラスにすることを指す」とし、それに向けた2030年の各種指標を設定。財務および非財務の両面で生み出したアウトプットをもとに、インプットへと循環させ、提供価値の向上を図る考えを示した。

2030年に向けた価値創造の考え方

前中期経営計画の振り返り

 一方、前中期経営計画を振り返り、時田社長 CEOは、「この3年間で、収益性は確実に向上しており、2022年度は営業利益で過去最高益を達成した。非財務目標でも、お客さまNPSとDX推進指標では目標を達成した。お客さまの価値創造と、自らの変革を軸に7つの課題を定めて取り組んできた成果として、Fujitsu Uvanceは2022年度で2000億円の売り上げを達成し、世界1万1000人の営業担当のうち、8000人のリスキリングを完了。GDC/JGGの陣容は3万人に拡大し、グローバルビジネスを拡大する基盤が強化できた。Ridgelinezを起点にして、グループ全体のコンサルティング体制も強化することができた。1人あたりの営業利益は2019年度と比較して60%増加した」と総括。

 その上で、「2022年度までの3年間で事業や組織体制、人事制度、社内システム、従業員のマインド、企業文化まで大きく変えることができた。新たな中期経営計画でも、さらなる変革を進め、結果を出す準備が整っている。持続可能な企業としての礎をしっかりと築くためにも、新たな中期経営計画を着実に実行していく」と語った。

前中期経営計画の振り返り

 なお、Ridgelinezは設立3年を経過し、黒字転換を果たしたことを報告。現在、400人弱のコンサルタントが在籍しているという。「当初は富士通の社員を母体にしていたが、いまでは社外から採用したコンサルタントに入れ替わっている。コンサルティング会社としての魅力づくりや、外資系コンサルティングファームに近い、富士通とは一線を画した人事制度によって構築された組織能力がある。そこからの学びは大きい。この経営ノウハウを富士通グループ全体に拡充したい」と語った。

情報セキュリティインシデントの発生について謝罪

 会見の冒頭に、時田社長 CEOは、「Fujitsu MICJET コンビニ交付」システムによる証明書の誤発行や、それに伴う個人情報の漏えいについて説明。「当社およびグループ会社における度重なる情報セキュリティインシデントやシステム品質に関する問題について、お客さまをはじめ関係者に多大な心配、迷惑をかけており、深くおわび申し上げる」と陳謝。また、ProjectWEBへの不正アクセスや、FJcloud-Vおよびニフクラ、FENICSインターネットサービスにおいて、情報セキュリティインシデントが相次いで発生していることにも触れた。

 時田社長 CEOは、「Fujitsu MICJET コンビニ交付に関連した一連のシステムトラブルにより、住民が利用する行政サービスにおける信頼を損ねる事態となった。システム停止を伴う一斉点検を各自治体にお願いしており、サービスが利用できない期間が生じることで、多くの人々に不便をかけることになる。原因分析、再発防止策の徹底については、最高品質責任者を新たに任命し、システム品質の統制を仕組みとして整備する。私が委員長を務めるリスクコンプライアンス委員会においては、各種施策や個別事象への対応を含め、具体策にまで踏み込んで決定し、実行していくことになる。今回の事案によった損なわれたお客さまや、社会からの信頼を回復し、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にするというパーパスの実現に向けて尽力していく」と述べた。

 新たな中期経営計画への影響や業績への影響、役員の処分などについては、「いま申し上げる時期ではない。対応することに全力を向けている。大きな影響があれば、適宜、開示をする。事態がしっかりと収まり、状況を振り返り、決めるべきことがあれば決める」と語った。

陳謝する時田社長