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富士通とSAPが協業強化、日本企業初の「RISE with SAP」プレミアムサプライヤーに

クラウドERP「RISE with SAP, Higher with Fujitsu」を展開

 富士通が日本企業として初めて、SAPの「RISE with SAPプレミアムサプライヤー」の契約を結んだ。これにあわせて、クラウドERPソリューションである「RISE with SAP, premium supplier option via Higher with Fujitsu」を、Fujitsu Uvanceのビジネスアプリケーション領域のオファリングとして開発し、2024年1月から日本市場向けに提供を開始することを明らかにした。

(左から)SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏、富士通 執行役員 SEVPの高橋美波氏、SAP アジア太平洋日本地域プレジデントのポール・マリオット氏

 2030年にメインフレームからの撤退を発表している富士通が、今回の取り組みを通じて、SAP S/4HANA Cloudへの移行を促進することになる。2024年前半に一部海外展開を開始し、2025年から欧米を含めた本格展開を開始する。2026年度までに、全世界で200社への提供を計画し、そのうち3~4割を海外で見込んでいる。

プレミアムサプライヤーのビジネスモデル

 RISE with SAPプレミアムサプライヤーは、RISE with SAP S/4HANA Cloud領域において、SAPに代わり、インフラ環境の提供、BASIS領域の構築、運用を行うことになる。

 RISE with SAPは、2021年1月にグローバルで提供を開始した「Transformation as s Service」に位置づけられたもので、SAP S/4HANA Cloudを中心にしたサービスを組み合わせてオファリングを提供。付加価値の高い業務に社員が集中できる企業の在り方を実現する「インテリジェントエンタープライズ」になることを支援するものとなる。

 富士通が提供する「RISE with SAP, premium supplier option via Higher with Fujitsu」は、同社が長年に渡って培ってきた幅広い業種での基幹システムの構築、運用ノウハウと、SAPが持つ最先端のクラウド技術や、RISE with SAPに包含されたベストプラクティスを組み合わせることで、あらゆる業種の顧客に対して、モダナイゼーションやクラウド環境へのスムーズな移行を支援することになる。

 富士通では、日本の顧客向け専門デリバリー部門を活用し、富士通が持つSAPの構築および運用ノウハウ、自動化テクノロジーを活用することで、高品質な「RISE with SAP」のサービスを提供する。

 具体的には、富士通が、RISE with SAPのシステム構築や運用を担うほか、富士通が提供しているほかのSAP関連ソリューション群も組み合わせて提案。構想立案におけるコンサルティングサービスや、導入時のS/4HANAコンバージョンサービス、クラウド移行時のアセスメントサービスなど、各フェーズにおいて抱える課題に応じたソリューションなどを、プレミアムサプライヤーによる提供領域とあわせて提案し、企業のDXをトータルで支援するという。

プレミアムサプライヤー 富士通が提供する価値

 富士通 執行役員 SEVPの高橋美波氏は、「富士通は、国内ナンバーワンのBASISコンサルティング会社であり、日本のお客さまを知り尽くしたSAPコンサルタントを、2025年に向けて8000人に増員する。いまは陣容が足りていない。外部からの登用、リスキリング、買収などによって増やしていく。また、国内トップシェアのメインフレームビジネスで得た知見やノウハウを活用するほか、SAPとともにお客さまのDX化やモダナイゼーションを支援し、ミッションクリティカルをRISE with SAPでしっかりと巻き取っていく。そして、世界7拠点のGDCを通じたデリバリー力とインテグレーション力を生かして、世界に展開していく。これは富士通にしかできないことである」と述べ、「SAPとの連携は、グローバルにおいて、最重要のパートナーシップになる」と位置づけた。

富士通 執行役員 SEVPの高橋美波氏

 また、富士通 執行役員 SEVPの大西俊介氏は、「富士通は、2030年にメインフレームの製造、販売を終了し、2035年にこれに関するサービスの終了も発表している。これは大きなトリガーとなり、多くの企業がモダナイゼーションを計画し、実行している。モダナイゼーションの行き先としてデファクトスタンダードになるのがSAPである。モダナイゼーションが完了した際に、RISE with SAP導入の果実を最大限にするためには、導入後の徹底的な活用が求められる。今回の提携が、富士通のメインフレーム事業から始まるモダナイゼーションにおいて、最大のレスポンシブルになる」と語った。

富士通 執行役員 SEVPの大西俊介氏

 一方、SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏は、「RISE with SAPは、規模や業種に関わらず、クラウドへの移行を加速するために適切なソリューションとサービスをひとつのパッケージとし、ひとつの契約として提供する。サイバー犯罪や気候変動、地政学的課題などに対応することができ、強靭性や効率性、安全性、俊敏性の向上を支援することになる。また、富士通がRISE with SAPプレミアムサプライヤーとして、ハイブリッドなクラウドアプローチにより、基幹系システムをクラウドへ移行するためのテクノロジーやコンサルティングを包括的に提供し、日本企業のデジタル変革を加速することを期待している」と語った。

SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏

 富士通は、1996年にSAPジャパンとパートナー契約を結び、2000年には独SAP本社とグローバル・テクノロジー・パートナーとして契約。2017年にはグローバルなパートナーシップを拡大し、2018年にはPartnerEdge Platinum Partner 契約を結んでいる。また、2023年から、SAP Regional Strategic Services Partnerに参画している。シーメンス時代を含めると約40年間に渡る関係があるという。

SAP社と富士通の関係

 また、Fujitsu Uvanceで定めるバーチカルエリアのSustainable ManufacturingにおいてSAPソリューションを提供。川崎重工に導入したSAP PEOソリューションは、この業務ノウハウや導入ノウハウをサービス化してSaaS展開している例もある。

Fujitsu Uvance × SAP 連携事例

 一方、富士通では、Fujitsu Uvanceの事業計画として、2025年度に売上高7000億円を計画している。そのうち、Horizontal領域では、1000億円の増加を見込み、その3割強がSAPビジネスになるという。また、Vertical領域においても、RISE with SAPに関連して、3桁億円の事業創出を見込んでいる。

Fujitsu Uvance 数値目標

 なお、ビデオメッセージを寄せたSAP SE エグゼクティブボードメンバー プロダクトエンジニアリング統括のトーマス・ザウアーエシッヒ氏は、「SAPと富士通は、顧客として、サプライヤーとして、パートナーとして、長年に渡る協力関係がある。今日は、富士通が日本企業初のRISE with SAPプレミアムサプライヤーとなり、これまでのパートナーシップを次の段階へと進める特別な日になった」とした。

 このほか、「クラウドへの移行はかつてないほどに重要になっている。それにより企業は変化に対応し、イノベーションを醸成することができる。2021年にRISE with SAPを導入して以降、日本で採用した企業は、ハイテク、エレクトロニクス、運輸、製造、など幅広い業界に広がっている。富士通との協力関係が新たなビジネス変革の機会を提供する。富士通の確固たる実績と卓越した専門知識が、よりよいサービスを提供することに貢献する。高品質なRISE with SAPサービスをグローバルに提供できることを確信している」とも語っている。

SAP SE エグゼクティブボードメンバー プロダクトエンジニアリング統括のトーマス・ザウアーエシッヒ氏

 また、SAP アジア太平洋日本地域プレジデントのポール・マリオット氏は、「両社の関係は、イノベーション、信頼、お客さまの成功という共通の価値観、優れた人材と技術の上で成り立っている。SAPにとって、クラウド事業が最も成長しているのは、アジア太平洋日本地域であり、市場機会は大きい。また、RISE with SAPは世界で3000社への導入実績があり、最新四半期おけるSAPのクラウド関連収益は79%増加している。強い需要に応えるには、富士通とのパートナーシップが重要である。今回のパートナーシップは、エコシステムを通じて、お客さまに対して選択肢を提供するという姿勢を示すものであり、富士通とともに、世界中のお客さまのビジネス変革を加速させるチャンスになる」と述べた。

SAP アジア太平洋日本地域プレジデントのポール・マリオット氏