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データを活用した生成AIを実現なのがSnowflakeだとCEO強調~KDDIがSnowflakeを用いて複数企業間データ利活用を実現する基盤の実現を目指す

 データクラウドサービスを提供するSnowflake(スノーフレイク)は、9月8日に「DATA CLOUD WORLD TOUR 2023」と銘打ったイベントを、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催する。その前日となる9月7日には同ホテルで記者説明会を開催し、同社 CEO フランク・スルートマン氏、製品担当 上級副社長 クリスチャン・クライナーマン氏などが同社の戦略などを説明した。

Snowflake CEO フランク・スルートマン氏

 また、Snowflakeの顧客となるKDDIからKDDI株式会社 執行役員常務 UQコミュニケーションズ 代表取締役社長 兼 パーソナル事業本部 マーケティング統括本部長 兼 サービス統括本部長 竹澤浩氏およびKDDI株式会社 執行役員、KDDI Digital Divergence Holdings 代表取締役社長 兼 ソリューション事業本部 グループ戦略本部 副本部長 藤井彰人氏の二人がゲストとして呼ばれ、Snowflakeのデータクラウドを活用した業界横断のデータプラットフォームの構築戦略などが語られた。

日本は2番目に大きな市場でかつ急成長している、生成AIのアプリケーションを構築する環境としての強みを強調

 Snowflakeは同社がデータクラウド(Data Cloud)と呼んでいる、複数のCSP(クラウド・サービス・プロバイダー、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのこと)をまたいで仮想的なデータレイクを構築するユニークなクラウドサービスを展開している。同時に、同社がウェアハウスと呼んでいるコンピューティング機能を別途提供することで、ハイパフォーマンスで伸縮自在な環境を提供している。いずれもハードウェアは、CSPが提供するインフラ(ストレージやCPU/GPUなどのこと、AWSで言えばS3ストレージとEC2インスタンスのこと)を活用しており、自前ではそうしたハードウェアを所有せず、ストレージやマイクロプロセッサーなどを仮想的に提供するという仕組みになっている。

 そのため、Snowflakeの仮想化されたデータレイクにデータを保存しておけば、複数のマルチクラウドにデータが分散化し、サイロ化(分散してどこにあるのかわからなくなるような状態のこと)してしまうことを防ぐことができ、マルチクラウドのように複数のCSPで複数のアプリケーションを走らせる場合には、データをCSPのストレージ間を行ったり来たりする必要がなくなり、セキュリティ上の懸念も小さくなるというメリットがある。

 また、そのデータレイクに保存されたデータを、ウェアハウスとして提供されるCPUやGPUなどのコンピューティングリソースと、マネージドサービスとして提供されるソフトウェアなどを組み合わせてさまざまなサービスを構築できることが大きな特徴で、同社が提供する「マーケットプレイス」ではデータやアプリケーションなどが流通しており、企業はマーケットプレイスで流通するデータやアプリを活用して、自社のデータクラウドを強化することが可能だ。

Snowflakeのアーキテクチャ(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

 Snowflake CEO フランク・スルートマン氏は「日本は米国に次いで3番目に大きな市場だ。4年前にビジネスを開始したばかりだが、すでに150名の社員を雇用するまでになっている。また500社もの顧客を得ており、今後の18カ月で2倍になるとわれわれは予想している。これは、われわれのデータドリブンやマーケットプレイスという戦略が支持されているためだと考えている」と述べ、Snowflakeが日本でも急速に成長していることを強調した。

 その上でスルートマン氏は「今や生成AIの話題は、ここ日本だけでなく世界のどこでも話題になっている。だからこそ、われわれのソリューションを知ってもらい、生成AIなど、さまざまなアプリケーションのプラットフォームとしてSnowflakeが最適であることをアピールしたい。そのために今日は、KDDIのような、われわれの顧客でありパートナーでもある企業に来ていただいている」と述べ、今回東京で開催されるイベントでは、生成AIを実現する環境としてSnowflakeの活用などをアピールしていきたいと説明した。

Snowflakeの生成AI環境は統合されたプログラミング環境と、サードパーティLLMの積極的な導入により強化

 Snowflake 製品担当 上級副社長 クリスチャン・クライナーマン氏は、同社が提供しているソリューションに関しての説明を行った。

Snowflake 製品担当 上級副社長 クリスチャン・クライナーマン氏

 クライナーマン氏は「従来Teradata、ビッグデータ、SQL Server、CSPなどからSnowflakeに乗り換えていただいたお客さまが多数いる。その理由は大きくいって3つあると思う。それがシングルプラットフォーム、デプロイ・ディストリビュート・マネタイズ、トレードオフのないAI/MLの提供だ」と述べ、それぞれの特徴に関して説明した。

従来型のデータクラウドからの移行が進む(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)
シングルプラットフォーム、デプロイ・ディストリビュート・マネタイズ、トレードオフのないAI/MLの提供という3つのポイント(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

 シングルプラットフォームに関しては、Snowflakeの特徴を書き連ねたスライドを表示させ、ダウンタイムなくウイークリーベースでアップデートできることや、12カ月単位での機能アップデート、コスト最適化を実現したコンピューティング機能の提供などを利点として挙げた。また、データベースのクエリ時間の改善として15%のパフォーマンス指数であることを紹介し、性能でもほかのデータクラウドと比較して大きなメリットがあると強調した。このほか、AI関連の機能としては独自のLLMを活用して構築しているドキュメントAI、マシンラーニングを利用した予測や異常検出などを紹介した。

データベースのクエリ時間の改善として15%のパフォーマンス指数
シングルプラットフォームのメリット(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)
MLを利用した機能(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

 デプロイ・ディストリビュート・マネタイズというでは、Snowflakeの特徴であるマーケットプレイスというデータ・アプリ市場において、Snowflake自身が提供するファーストパーティのアプリや、顧客が提供するサードパーティアプリが充実し始めていることを強調し、データを活用したアプリをサードパーティが提供し、かつそれをマネタイズできる環境が整っていると説明した。

デプロイ・ディストリビュート・マネタイズの例(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

 そして、最後のトレードオフのないAI/MLに関しては、Snowparkという、AI/MLを利用したアプリケーションを構築するための統合プログラミング環境を紹介し、それを利用すると、容易にSnowflakeのデータレイクに保存しているデータを利用して学習したAIアプリケーションを提供可能になると説明した。

Snowpark(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

 また、SnowflakeのコンテナサービスとなるSnowparkコンテナサービスにより、マイクロサービスがGPUを利用して学習したりすることが可能になるとしている。

Snowparkコンテナサービス(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

 現在Snowflakeが導入を進めるLLM(大規模言語モデル)では、NVIDIAやAI21labsなどのサードパーティが提供するLLMも利用可能であり、今後対応するサードパーティのLLMは増やしていくと説明した。

Snowflakeの生成AI環境、NVIDIAやAI21LabsなどのサードパーティのLLMも実装可能(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

KDDIがSnowflakeの環境を利用して複数企業が相互にデータ利活用できるプラットフォームを構築していくと明らかに

 Snowflake株式会社 社長執行役員 東條英俊氏は、Snowflakeを活用している日本での顧客事例などを紹介した。「すでに生成AIやLLMという話を聞かない日はないが、そうしたAIを実現する大前提としてデータ戦略が必要になる」と述べ、データを利活用できるような環境をまず整えることが重要だと強調した。

Snowflake株式会社 社長執行役員 東條英俊氏

 その上で、NTTデータやTRUESTARなどが、Snowflakeのマーケットプレイスにおいて、データ処理を可能にするアプリケーションを提供している事例を紹介した。東條氏は「例えばTRUESTAR社は、経度緯度から住所に変換するアプリケーションを無償で提供している。それを自分のアプリ組み込んでいる他社企業も出てくるなど、データの使い方が広がっている」と述べ、Snowflakeのマーケットプレイスにおいて、複数企業が横断的にデータを利活用する動きが広がっていると強調した。

日本の顧客事例(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

 その具体的な顧客例として、日本の通信事業者であるKDDIを紹介し、KDDI株式会社 執行役員常務 UQコミュニケーションズ 代表取締役社長 兼 パーソナル事業本部 マーケティング統括本部長 兼 サービス統括本部長 竹澤浩氏、KDDI株式会社 執行役員、KDDI Digital Divergence Holdings 代表取締役社長 兼 ソリューション事業本部 グループ戦略本部 副本部長 藤井彰人氏の二人を壇上に呼んだ。

KDDI株式会社 執行役員常務 UQコミュニケーションズ 代表取締役社長 兼 パーソナル事業本部 マーケティング統括本部長 兼 サービス統括本部長 竹澤浩氏

 KDDIの竹澤氏は「企業におけるデータの利活用を促進するため、1つの企業だけでなく、業界を横断した複数の企業を横断的に利用できる環境を構築することが重要だと考えている。6月には、ABEMA社とスポーツコンテンツ強化に向けてパートナーシップ締結したことを発表させていただいたが、そうした動きを今後加速していきたい」と述べ、KDDIは、複数の企業が持つデータを横断的に利用できる環境を整えていきたいという意向を持っており、それにより日本でのデータドリブンのマーケティングや経営戦略の策定などを実現していきたいと述べた。

KDDIがデータを軸に複数の企業をつないでいく、その基礎がSnowflakeに(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)

 さらに「実際にこうした構想を実現していくには、個人情報保護法のような法規制にも対応していく必要があるし、データのフォーマットのすりあわせなどさまざまなことをやっていかなければいけない。そこで、Snowflakeのようなデータレイクに、皆がデータをあげて安全にやりとりをする、そうした仕組みが必要だ」と述べ、安全かつ法規制にも対応した形でデータのやりとりを実現するために、Snowflakeを活用していると説明した。

 その具体的な役割を担っているのがKDDIのグループ企業であるKDDI Digital Divergence Holdingsで、代表取締役社長の藤井氏は「KDDIのこれまでの経験を生かして、高い信頼性とアジャイルな開発を行っていく」と述べ、KDDIの日本企業としての高い信頼性と、Snowflakeのソリューションを組み合わせていくことで、そうしたことが可能になると強調した。

KDDI株式会社 執行役員、KDDI Digital Divergence Holdings 代表取締役社長 兼 ソリューション事業本部 グループ戦略本部 副本部長 藤井彰人氏
データでの協業を実現する仕組み(出典:SNOWFLAKE DATA CLOUD WORLD TOUR 記者発表、Snowflake)