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Boxのアーロン・レヴィCEOが来日、Box AIへの取り組みを説明

日本法人の古市社長は国内の事業方針を解説

 Box 共同創業者兼CEOのアーロン・レヴィ(Aaron Levie)氏が来日し、8日に報道関係者を対象にしたラウンドテーブルを行った。

 日本法人であるBox Japanは、2023年8月7日で設立10周年を迎えており、それにあわせて、日本における取り組みなどについて説明。さらに、2023年5月に発表したBox AIによる同社のAI戦略についても説明した。

Box 共同創業者兼CEOのアーロン・レヴィ氏

 レヴィCEOは、「日本はインターナショナルにおいて最も急成長した市場であり、最大規模のビジネスになっている。日本の企業のイノベーションを支援することができている」とし、「ミッションに掲げているのは、『人や組織の働き方を変革する』であり、2005年に創業して以来、どこからでも簡単に、安全に、コンテンツやデータにアクセスすることができる環境を実現し、エンタープライズ企業やスタートアップ企業まで、新たな働き方を支援している。全世界で11万5000社以上が導入しており、日本では、コマツ、日本郵政、第一三共などが導入している」と述べた。

Boxの導入企業

 その一方で、51%の企業がサイロ化したコンテンツを保有していること、データがサイロ化している企業のうち96%がどんな情報があるのかを把握できていないことを示しながら、「コンテンツは企業において最重要データである。だが、多くの企業において、データがサイロ化しており、データの価値を活用できていない現状がある。これを解決する必要があり、そこにBoxは貢献できる」と語った。

 Boxは、「きめ細かなアクセス制御」、「法人向けの万全なセキュリティ」、「モデルの分離の実現」、「すべてのコンテンツ上で作動」、「あらゆるAIモデルに対応」の5つがアーキテクチャとしての特徴だとする。

Boxのアーキテクチャ

 その上で、「企業がコンテンツの価値を発揮させるためにはAIの活用が不可避である。Box AIにより、エンタープライズデータとAIモデルを、セキュアに、法令に準拠した形でつなげ、コンテンツに質問を投げかけ、回答を得たり、コンテンツを抽出したり、まとめたりして、コンテンツの価値を高めることができる。いち早く意思決定ができ、ワークフローの自動化も可能になる。AIによって、あらゆるコンテンツを有効活用できるようになる」とした。

 Box AIは、同社で提唱するコンテンツクラウドに統合する方針を表明。いまは、Open AIのGPT-3.5およびGPT-4を活用しているが、さまざまなAIモデルを活用できる設計にしているのが特徴だ。現時点では、特定のユーザーに提供。今後3~6カ月間で一般提供を開始する予定だという。

 「Microsoftとは深いところでつながっていくことになるが、Box AIは、どんなAIプロバイダーとも連携できるのが特徴である。GoogleやAmazon、MetaなどのAIが利用でき、世の中で最高のAIを提供できる。Box AIは、コンテンツにおいて深堀をしていくことになる」と語った。

 なお2023年7月には、Microsoftとの協業により、Box for Microsoft 365 Copilotを発表している。

 今回のラウンドテーブルで、レヴィCEOは、日本銀行がまとめた日本語の経済レポートに対し、Box AIを使って英語で質問。英文で要約するように指示し、メールで送信するといったデモンストレーションを行ったほか、経済レポートから子供向けポエムを作り出すというユニークなデモンストレーションも行った。

Box AI
Box AIでコンテンツに関連する働き方を変革
Box for Microsoft 365 Copilot

 一方、Box Japanの古市克典社長は、2013年8月に、Box Japanの1人目社員として入社し、自ら日本法人の登記を行ったエピソードに触れながら、日本における10年間の歴史を説明。現在、国内の顧客数は1万5000人以上、販売パートナーは300社以上、社員数は200人以上になったほか、ARRは9期連続で上昇し、日本の売上高は全世界の19%を占めていること、日本における連携ソリューションが220以上になっていることなどを紹介した。

Box Japan 代表取締役社長の古市克典氏

 「円安によって日本の売上比率は若干減ったが、19%という構成比は、他の外資系企業の3倍から4倍であり、Boxにとって、日本は重要な市場である」とし、「2015年の年金機構で125万件の個人情報が流出したことによって、セキュリティという観点からBoxに注目が集まった。その後、働き方改革が第2の波となり、新型コロナウイルスの広がりによりテレワークが浸透したことが第3の波となった。さらに、ランサムウェアの温床となっていたPPAPの廃止が政府や大企業で広がったことが第4の波となり、Boxのサービスを採用するケースが増えた。そして、第5の波としてデジタル庁の発足により、政府などでもデジタル化の動きが加速したことが追い風となった。日本社会のニーズに即応したことが、Boxの成長を支えてきた」と振り返った。

日本社会のニーズに即応

 また古市社長は、「イノベーションは、異なる知の結合によって新たな価値を生み出すことが大切である。企業においては、8割を占める非構造化データの活用が不十分である。これらを一元管理し活用することが大切であり、そのためには、デジタル技術で業務を効率化するCorporate X(Transformation)、関連会社や取引先との業務連携やコンテンツ共有および結合を促すCompany(仲間) X、顧客に新たな価値を提供し便益を高めるCustomer Xによる3つのCXに取り組まなくてはならない」と提言。

 「Boxは、3つのCXに最適である。コンテンツをアプリから分離し、セキュアな環境で一元管理できる」と述べた。また、「日本におけるデジタル化の取り組みには、経営者や事業部長によるITの理解、IT部門の強化およびX(Transformation)人材の育成、全社員による活用や社外人材の活用といったアナログが大切である」とも指摘した。

3つのCXによる新たな価値創造

 さらに「Boxコンサルティングチームにより、日本の企業がBoxをよりよく活用してもらうための支援も行っている。Box Japanは、シリコンバレー企業と日本企業のいいとこ取りをして、日本の企業の成長に貢献したいと考えている」と述べた。