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NECの2022年度上期連結業績は増収減益、ネットワークサービスの一過性の損失などが影響

 日本電気株式会社(以下、NEC)は28日、2022年度上期(2022年4~9月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比5.2%増の1兆4553億円、営業利益は同40.2%減の138億円、調整後営業利益は同26.0%減の311億円、税引前利益は同6.4%減の241億円、当期純利益は同70.2%減の39億円となった。

上期業績サマリー

 NECの藤川修執行役員常務兼CFOは、「売上収益は前年比で増加したが、調整後営業利益では、ネットワークサービスにおいて、海外5Gの戦略的受注案件などで一過性の損失を計上したほか、キャリアの整備投資が下期偏重となり、上期が低調に推移したことが影響した。ネットワークサービスではオペレーションにおいて182億円の減益となったほか、全体の部材不足によりマイナス5億円、為替ではプラス65億円の影響を受けた」という。

 一方、コーポレートアクションとして、第1四半期の資産売却益およびNECエンベデッドプロダクツの株式譲渡益で、110億円の利益を計上。「想定通りである」とした。

NEC 代表取締役 執行役員常務兼CFOの藤川修氏

セグメント別業績

 セグメント別業績では、社会公共事業の売上収益が前年同期比4.9%減の1838億円、調整後営業利益は前年同期から13億円減の59億円。売上収益は前年度の都市インフラ向け大型案件の反動減があり減収となったが、受注は回復基調が継続していると述べた。

 社会基盤事業は、売上収益が前年同期比7.3%増の2889億円、調整後営業利益は前年同期から49億円増の220億円。航空宇宙、防衛領域での案件が増加。不採算案件の抑制により増益となった。

社会公共事業の概況
社会基盤事業の概況

 エンタープライズ事業は、売上収益が前年同期比2.4%増の2888億円、調整後営業利益は前年同期から41億円増の263億円。旺盛な需要により、受注、売上、営業利益ともに前年を上回って推移しているという。

 ネットワークサービス事業は、売上収益が前年同期比2.6%減の2196億円、調整後営業利益は前年同期から217億円減り、マイナス133億円の赤字となった。海外5Gの戦略的受注案件などの損失を55億円計上したほか、長期性棚卸しの引き当てにより20億円の損失を計上し、合計でマイナス75億円を一過性の損失とした。

 「戦略的受注案件は、初期の量産ロットを戦略的な価格で受注したもので、もともと厳しい原価構成であったが、そこに部材不足や為替の影響が加わり、想定以上に資材コストが上昇した。顧客での吸収などの施策も講じているが、保守的に評価して引き当てを行った。これは今後、ほかの案件では起きない。また、戦略的費用が上期偏重になっており、前年同期比で45億円増加したこと、部材不足の影響でマイナス20億円の影響、売上変動で52億円のマイナス影響があった」という。

 国内キャリアにおいては、ネットワーク障害への対応、組織統合を優先するといった動きがあったことで、上期はネットワーク投資に抑制がかかったと分析。下期以降の投資回復を期待しているという。

エンタープライズ事業の概況
ネットワークサービス事業の概況

 グローバルは、売上収益が前年同期比14.0%増の2682億円、調整後営業利益は前年同期から7億円減の117億円。為替影響により、NetcrackerとDG/DFを中心に増収。だが、一時的な費用増により若干の減益になった。

 その他事業は、売上収益が前年同期比16.2%増の2060億円、調整後営業利益は前年同期から56億円増の32億円となった。その他事業に含まれるアビームコンサルティングは、売上収益が前年同期比20%増、調整後営業利益が10%強の成長となっており、「DX市場は旺盛であり、第2四半期は、第1四半期からさらに10%ほど受注が増えている」という。

グローバルの概況

 上期の受注状況は、全社では、海洋事業を除いて前年同期比16%増となっており、特にITサービスは、2021年度下期から好調を維持。上期も企業向けの旺盛な需要が牽引して受注実績は11%増となった。

 「ITサービスは、公共、医療だけでなく、中堅中小企業の需要も戻ってきている。金融、流通サービスも好調を維持し、通信系も第2四半期以降は回復している」などとしたほか、「第4四半期までに売り上げが立つ有効受注残が、前年比で300億円ぐらい積みあがっている。これをしっかりとやることで、上期をリカバリーし、計画を達成したい」と意気込んだ。

 セグメント別では、社会公共では都市インフラ、中堅中小企業向けで好調が継続し、前年同期比14%増。社会基盤(JAE除く)は前年度に宇宙関連の大型案件があった反動で同4%増にとどまったが、これを除くと同17%増となっている。

 エンタープライズ(NECファシリティーズ除く)は、流通・サービス業向けの大型案件の計上に加えて、旺盛なIT需要を背景に好調を継続して前年同期比15%増。ネットワークサービスは、第1四半期の固定通信系の大型案件の反動減があったものの、第2四半期は5G需要が拡大し前年並みとした。

 グローバル(海洋事業を除く)は、Netcrackerによる大型案件やDG(デジタルガバメント)/DF(デジタルファイナンス)の牽引により前年同期比34%増の大幅増となった。

上期の受注動向

通期の業績見通しは据え置き

 一方、2022年度(2022年4月~2023年3月)通期業績見通しは据え置き、売上収益は前年比3.8%増の3兆1300億円、調整後営業利益は同8.2%増の1850億円、調整後当期純利益は同31.2%減の1150億円とした。

2022年度年間業績予想

 セグメント別では、7月公表値に比べて、社会基盤が調整後営業利益で50億円増、エンタープライズでは売上収益が100億円増、調整後営業利益で30億円増、ネットワークサービスで調整後営業利益が40億円減、グローバルは売上収益が500億円増、調整後営業利益で50億円増、その他では売上収益で600億円減、調整後営業利益で90億円増とした。

2022年度年間業績予想:セグメント別

 「7月予想で調整後営業利益の調整額に織り込んだ140億円増を、社会基盤、エンタープライズ、グローバルの各セグメントに反映した。社会公共では計画値の変更はないが、これをボトムとし、回復基調にある需要を取り込み、予想値からの改善を図る。社会基盤では、日本航空電子工業の増益効果を反映した。また、エンタープライズは好調な市場環境が継続していることを反映した。ネットワークサービスは、連結子会社のNECネッツエスアイの40億円減の業績予想修正を反映しているが、下期偏重の国内5G事業の取り込みと、海外5Gの出荷増などにより年間では270億円の営業黒字を見込んでいる。グローバルは、想定以上の円安影響により、売上収益、調整後営業利益ともに上振れを見込む」と述べた。

 また、「2023年度以降は、グローバル5Gに限らず、マクロ要因の影響により、事業環境は不透明な要素が含まれている。従来通り、変化に対して必要な措置を迅速に実施していく」と述べた。

年間見通しのサマリー