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NECの2021年度上期連結業績は増収増益、国内はIT/5G事業が好調

 日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、2021年度上期(2021年4月~9月)の連結業績を発表した。

 売上収益が前年同期比5.2%増の1兆3828億円、営業利益は同16.2%増232億円、調整後営業利益は同45.0%増の421億円、税引前利益は同33.0%増の185億円、当期純利益は同21.2%増の133億円となった。

第2四半期累計(上期)実績サマリー

 NECの藤川修執行役員常務兼CFOは、「国内、海外ともに増収となった。国内は市況の回復もあり、IT事業および5G事業が好調。グローバルは、Avaloqの連結もあり、デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス(DG/DF)を中心に拡大した。調整後営業利益は、市況の回復を着実に取り込んだことで改善したほか、グローバルのポートフォリオ改革も寄与した」と総括した。

NECの藤川修執行役員常務兼CFO

 なお上期には、戦略的費用として130億円を投入した。内訳はグローバル5Gで70億円、コアDXが20億円、社内DXが20億円、人材が20億円となっている。また、上期には不採算案件があり、利益面では30億円のマイナス影響があったという。ただし第2四半期の営業利益は、計画値に対して実業ベースで25億円上振れたとのこと。

セグメント別の業績

 セグメント別業績では、社会公共事業の売上収益が前年同期比3.0%減の1718億円、調整後営業利益は7億円減の40億円。公共向けや地域産業向けが減少するとともに営業関連費用が増加し、減収減益となった。

 社会基盤事業は、売上収益が前年同期比3.3%増の2908億円、調整後営業利益は38億円増の204億円。「放送・メディア向けが端境期にあり減少したが、連結子会社の日本航空電子工業が増収に貢献。不採算案件が増加したものの、売上増に伴って増益になった」という。

社会公共事業の概況
社会基盤事業の概況

 エンタープライズ事業は、売上収益が前年同期比18.5%増の2822億円、調整後営業利益は42億円増の222億円。「製造業向け、流通・サービス業向け、金融業向けのすべての領域で堅調に推移し増収増益になった」と説明した。

 ネットワークサービス事業は、売上収益が前年並の2255億円、調整後営業利益は22億円増の84億円。「国内5G事業が大幅に増加。グローバル5G展開に向けた戦略的費用増もカバーできた」という。前年のGIGAスクール案件の反動を受けたNECネッツエスアイは減少したという。

エンタープライズ事業の概況
ネットワークサービス事業の概況

 グローバルは、売上収益が前年同期比7.3%増の2352億円、調整後営業利益は158億円増の124億円と黒字転換した。「DG/DF領域を中心に増収となったほか、Netcrackerが好調であり、サービスプロバイダーソリューションも増加。ポートフォリオ改革により黒字化した」とのこと。

 その他事業は、売上収益が前年同期比2.2%増の1773億円、調整後営業利益は95億円減の23億円の赤字となった。

グローバル事業の概況

 2021年度上期の受注動向についても説明。全体では、前年同期比3%減となっているが、海洋システムとディスプレイを除くと2%増だという。

 セグメント別では、社会公共は、公共、医療向けは好調だが、消防、防災が減少し、前年同期比2%減。社会基盤(JAE除く)は6%減となったが、前年同期のGIGAスクール需要の影響を除くと6%増だった。

 エンタープライズは、金融、製造向けが堅調に推移して4%増。前年にデータセンター案件があったNECファシリティーズを除くと6%増になるという。ネットワークサービスは5G需要が拡大して5%増。グローバルは29%減となったが、海洋システムとディスプレイを除くと前年並になっている。また、ハードウェアの受注は2%減だった。

 「ITサービスは、金融、製造業を中心に堅調。公共、医療も引き続き好調である。中堅中小企業は市況の回復が見えていない。流通業は前年同期に大型案件があり、その反動減がある」とした。また、アビームコンサルティングは、「大型案件を受注しており、第1四半期、第2四半期ともに、前年同期比1割増で推移している」という。

受注動向(ハードウェア含む)

通期業績見通しは計画を据え置き

 2021年度(2021年4月~2022年3月)通期業績見通しは期初計画を据え置き、売上収益は前年比0.2%増の3兆円、営業利益は同22.0%減の1200億円、調整後営業利益は同13.0%減の1550億円、当期純利益は同55.2%減の670億円とした。

 「DXや5Gの需要が旺盛である一方、半導体を中心にした部材供給のリスクなど、マクロ経済の不透明感があることから、業績予想は据え置いた」と説明した。

業績予想サマリー

 なお同社では、半導体を中心とした部材不足が2022年度以降まで長期化することを前提に、これに伴う出荷遅延や部材価格の上昇、販売機会損失のリスクについても言及している。

 「上期は部材不足の影響で、売り上げでは100億円、調整後営業利益では30億円のマイナス影響があった。特に、サーバー、ストレージといったITサービス関連の汎用品で影響が出ている。市場では部材の供給不足を懸念し、在庫の積み増しがより顕著になっているとみられる。ここに強い問題意識を持っている。上期に発生した遅延の影響は下期に回収するが、上期に比べて下期の方が影響を受けると見ている。ただ、通期見通しを変更するほどの影響はない。また、半導体だけでなく幅広い部品に広がっている。ネットワーク製品では一部価格転嫁を行った。上期はサプライチェーンの混乱もあり、対応が後手に回ったが、下期は、部材が不足しているところは、部材確保の促進だけでなく、代替え製品への切り替え、設計変更、構成変更などで影響を抑えていく」とした。

 同社では、今後の対応策を発表。「代替品への切り替えおよび代替部材への設計変更」、「費用抑制に加えて、販売価格の適正化により部材価格の上昇に対応」、「オンプレミス案件を、クラウドシフトの提案を加速することでビジネス領域を拡大し、販売機会の損失を回避する」という3点を徹底して実行する考えを示した。「部材不足を機にクラウドシフトを加速させることも考えたい」との姿勢も明らかにした。

2021年度の成長事業領域におけるトピックス

 このほか、2021年度の成長事業領域におけるトピックスを挙げた

 グローバル5Gでは、テレフォニカと4カ国(スペイン、ドイツ、英国、ブラジル)におけるOpen RANのプレ商用実証に合意。「海外市場におけるOpen RANベンダーとしてのリーディングポジション獲得に向けての取り組みを強化する」と述べた。

 DG/DFでは、NEC Software Solutions UKが、英Capitaグループの警察向けソフトウェア事業の買収を発表し、2021年12月までに手続きを完了する予定とした。「ボルトオンM&Aにより、強みとなるアセットを拡充し、市場での顧客基盤を強化、拡大していく」と述べた。コアDXでは、AWSとグローバル5GやDGなどの領域にまで協業を拡大。「通信事業者を含む企業へのDXを加速する」という。

 またグローバル事業では、欧州と米国を結ぶ超大容量の海底ケーブルのシステム供給契約を、Facebookと締結。世界初となる48心の海底ケーブルを採用したほか、NECとして初めての北大西洋横断ケーブル敷設案件になったとした。

 なおデジタル庁の発足に伴うビジネスへの効果は「現時点では大きな影響は出ていない」としたが、「中期的には、行政のデジタル化の機会を確実に取り込みたい。手続きのデジタル化、新システムの開発、新規需要の拡大、クラウドシフトの促進、既存システムの改修などの事業機会をとらえたい」と述べた。

成長事業:2021年度の施策