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NECの2022年年度連結業績は増収増益、すべてのセグメントで増収を達成
2023年4月28日 22:30
日本電気株式会社(以下、NEC)は28日、2022年度(2022年4~2023年3月)の連結業績を発表した。
それによると、売上収益は前年比9.9%増の3兆3130億円、営業利益は同28.6%増の1740億円、調整後営業利益は同20.2%増の2055億円、税引前利益は同16.1%増の1676億円、調整後当期利益は同17.1%減の1386億円、当期純利益は同19.0%減の1145億円となった。
NEC 代表取締役 執行役員社長兼CEOの森田隆之氏は、「売上収益はすべてのセグメントで増収となり、調整後営業利益はネットワークサービスを除くすべてのセグメントで増益。調整後当期利益は実質ベースで増益となった。また、売上収益、調整後営業利益、調整後当期利益は1月公表の予想値を上回った」と総括した。
調整後営業利益では、第4四半期に実行したグローバル5Gの費用構造の最適化など、通期で55億円の構造改革費用を計上。為替変動は年間で165億円のプラス影響、部材不足は下期以降に解消したことで、前年比40億円の増益要因になったという。
セグメント別の業績
セグメント別業績では、社会公共事業の売上収益が前年比3.2%増の4567億円、調整後営業利益は前年から67億円増の427億円。中堅中小企業向けの市況が底打ちして、事業全体の増収トレンドが継続。公共、医療向けビジネスも堅調に推移した。
社会基盤事業は、売上収益が前年比6.8%増の6497億円、調整後営業利益は81億円増の673億円。宇宙・防衛向けでの案件増加により増収となったほか、プロジェクトマネジメント強化による、不採算案件の抑制の成果があったという。
エンタープライズ事業は、売上収益が前年比6.9%増の6144億円、調整後営業利益は前年から159億円増の734億円。金融業、製造業、流通・サービス業向けのすべての領域で好調に推移したほか、オファリングメニューの充実やSI案件のリスク管理の強化などにより収益性が向上したという。同事業の営業利益率は11.9%になっている。
ネットワークサービス事業は、売上収益が前年比6.2%増の5434億円、調整後営業利益は前年から113億円減の241億円。国内外の通信事業者の投資抑制があったものの増収を達成。第3四半期に知財収益として100億円を計上したことも貢献した。調整後営業利益の減益要因として、資産クリーンアップで84億円減、戦略受注で55億円減、戦略的費用で45億円減、構造改革必要などで33億円減となった。
グローバルは、売上収益が前年比20.8%増の5863億円、調整後営業利益は166億円増の429億円。Netcrackerが手掛けるOSS(Operation Support System)やBSS(Business Support System)、海外で買収した企業が手掛けるソフトウェア関連事業および海洋事業といった重点領域が増収。ポートフォリオ変革の進展と、重点領域の収益性向上により増益となった。
その他事業は、売上収益が前年比18.2%増の4626億円、調整後営業利益は前年から14億円増の147億円となった。
通期の全社受注状況は、変動が大きい海洋事業を除くと、前年比12%増となっており、特にITサービスは、企業向けの旺盛な需要が牽引し、受注実績は9%増となった。
セグメント別の受注状況は、社会公共では都市インフラや中堅中小企業向けが好調を継続し、前年比10%増となったほか、社会基盤(JAE除く)は防衛向けが増加して8%増。エンタープライズ(NECファシリティーズ除く)は、旺盛なIT需要を背景に好調を継続して12%増。ネットワークサービスは、5G需要が拡大して10%増となり、知財収益を除いても8%増となる。グローバル(海洋事業を除く)は、Netcrackerによる大型案件が牽引して、15%増となっている。
「受注トレンドには陰りは感じられない状況が続いている。投資抑制をするといった議論もない。エンタープライズ領域がいち早く回復し、金融、流通サービスでの大型案件を受注しており、好調なトレンドが続いている。ハードウェアも供給不足は下期から回復しており、SIサービスの利益も向上。NECソリューションイノベータの稼働率も好調であり、上振れが続いている。ネガティブな要素は見えない」(NEC 代表取締役 Corporate EVP兼CFOの藤川修氏)とした。
2023年度の通期業績見通しは増収増益
一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)通期業績見通しは、売上収益は前年比2.0%増の3兆3800億円、調整後営業利益は同7.0%増の2200億円、調整後当期純利益は同1.0%増の1400億円とした。「すべての主要セグメントで増益を計画している」(森田社長兼CEO)という。
セグメント別業績見通しは、社会公共事業の売上収益が前年比5.1%増の4800億円、調整後営業利益は前年から24億円増の450億円。社会基盤事業は、売上収益が前年比1.6%増の6600億円、調整後営業利益は前年から37億円増の710億円。
エンタープライズ事業は、売上収益が前年比4.2%増の6400億円、調整後営業利益は前年から56億円増の790億円。ネットワークサービス事業は、売上収益が前年比5.8%増の5750億円、調整後営業利益は前年から179億円増の420億円。
グローバルは、売上収益が前年比4.5%減の5600億円、調整後営業利益は前年から71億円増の500億円。その他事業は、売上収益が前年比0.5%増の4650億円、調整後営業利益は前年から37億円減の110億円としている。
なお、2023年度第1四半期から開示セグメントを、従来の市場/顧客区分から事業領域による区分へと変更する。これによると、クロスインダストリーやDG/DF、パブリック、エンタープライズ、デジタルプラットフォームで構成する「ITサービス」は、売上収益が1兆8000億円、調整後営業利益は1770億円。テレコムサービスやエアロスペース、ナショナルセキュリティで構成する「社会インフラ」は売上収益が1兆850億円、調整後営業利益は950億円とした。グローバルイノベーションなどで構成するその他/調整額は売上収益が4950億円、調整後営業利益はマイナス520億円とした。
さらに、Non-GAAP損益を新たに開示することを示し、2023年度のNon-GAAP営業利益は2200億円、Non-GAAP当期利益は1400億円を見込んでいる。セグメント別のNon-GAAP損益は開示しない。
「2023年4月に実施した組織変更に伴うものであり、NECの姿がわかりにくいという声に対応したセグメント変更になる。また、Non-GAAP損益の開示により、グローバル市場における競合他社との比較が可能になる」と位置づけた。
2025中期経営計画では、2025年度に売上収益が3兆5000億円、調整後営業利益が3000億円、調整後当期利益が1850億円、EBITDAは4500億円を経営指標に掲げている。
NECの森田社長兼CEOは、「ネットワークサービスは、国内事業通信事業者の投資抑制と、海外5G事業の立ち上がりの遅れにより、想定よりもビハインドしているが、エンタープライズや社会基盤、社会公共、グローバルは順調に進捗している」と述べ、「個別には課題もあるが、全体では着実に前進している」と、2025中期経営計画の進捗状況を説明した。
DG/DF(デジタルガバメント/デジタルファイナンス)、グローバル5G、コアDXによる成長事業については、「DG/DFでは2022年度に行った開発投資の成果の刈り取りや、日本を含むAPACやEMIAでのクロスセルの拡大、オフショア開発の推進により、収益性の向上に取り組む。グローバル5GはRUビジネスから、ソフトウェアおよびサービス領域の拡大を進めるほか、国内市場でのシェア拡大、海外市場における販売体制および開発体制の最適化により、損益水準を改善する。いまは厳しい戦いをしているが、オープン化、仮想化のなかで、ITとネットワークが融合するのにあわせて、ソフトウェアの重要性が高まるなかで、NECが力を発揮できるようになる。国内においても5Gコアは、NECしか提供できないという強みもある」とする。
さらに、「コアDXでは、共通基盤であるNEC Digital Platformの売上比率をさらに拡大することで収益性が高いビジネスモデルへのシフトを推進する。デジタルIDやモダナイゼーションのほか、2023年4月に発表したNECセキュリティをベースにしたマネージドサービスを拡大することで、個別SIで対応していたビジネスの転換を図る。また、アビームコンサルティングとの連携強化により、戦略顧客へのアプローチを推進する」などと述べた。
一方、営業利益率7%以下の低収益事業を指す課題事業については、2022年度に調整後営業利益率で前年比2.4%の改善を図り、オペレーション改善の半数に貢献したことを報告。「2021年度からは、CFO主導で、16事業を対象にモニタリングを行ってきた。2022年度には4事業が収益改善により、モニタリング対象から外れた。残りの対象事業は継続して施策の実行と効果をモニタリングしている。また、ノンコア事業は、売却やジョイントベンチャーを含め、事業価値を拡大するための意思決定を的確に行う」(森田社長兼CEO)と述べた。
また、NECの藤川CFOは「収益が改善した4事業は、社会公共で1事業、エンタープライズで2事業、グローバルで1事業であり、2年間連続で7%を超え、課題事業を卒業し、高収益事業になった。これらの事業は2025年度には10%以上の営業利益率を想定している。また、これ以外に卒業の一歩手前の事業もある」とコメント。
森田社長兼CEOは、「課題事業は、2025年度には結論を出すことになる。定量および定性目標に対して、達成することが困難な場合には早く手を打つ。2022年度にはNECエンベデッドプロダクツを事業売却した。2023年度および2024年度にも適宜アクションを取っていく」と述べた。
なお2025中期経営計画のKPIのひとつとしているエンゲージメントスコアは、2020年度の25%から2022年度には36%まで上昇。森田社長兼CEOは、「人やカルチャーの変革として、ジョブ型マネジメントを推進しており、2023年度には統括部長以上に導入し、2024年度からは全社員に拡大する。事業戦略に則したベストな人材、チームでなければグローバルで戦えない。適時、適所、適材の要員配置がジョブ型の導入の目的である。社員にとって、自分の成長が見通せる会社で働くことができ、やりがいを実現する場がNECにあるということが大切であり、それがエンゲージメントを改善する上で重要になる」とした。
また、問題解決実践を通じて、スピード変革に取り組む「RISE Fast」を展開。「現場プロセスのシンプル化と社員の主体性を強化する活動として推進している。こうした現場活動をさらに推進したい」と述べた。ここでは、2022年度に、48の全部門で200テーマの課題解決を実践しており、参加者数は約1300人、現場の無駄の排除などによる金額効果は17億円に達したという。
さらにSmart Work 2.0では、「チームとして最適な働き方を選択できるようにし、チームの生産性を最大化する」とコメント。ビジネスインフラの整備では、「グローバルトップレベルの経営基盤を構築し、すべての情報をデジタル化することで、データドリブン経営を可能にする。環境変化に対して、柔軟で、スピーディな事業運営を実現し、事業価値のアウトプットの最大化を目指す」とした。