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富士通、パーパス実現のために取り組む「お客様への価値創造」と「自らの変革」の進捗を説明

2022年度のテクノロジーソリューション事業の売上収益は3000億円下方修正

 富士通株式会社は28日、2021年度業績について発表。そのなかで、2022年度のテクノロジーソリューション事業の業績見通しを発表した。売上収益は3兆2000億円、本業ベースでの営業利益は3200億円、営業利益率は10%を目指す。

 2022年度は中期経営計画の最終年度となり、テクノロジーソリューション事業で営業利益率10%、売上収益3兆5000億円を目指していたが、営業利益率は計画を維持したものの、売上収益は下方修正した格好だ。

2022年度の業績見通し
2022年度の経営目標達成に向けて

 富士通の時田隆仁社長は、「現在進めている変革の達成が延伸となる見込みであり、売上収益は当初の見込みから3000億円下方修正した。For Growthにおける売上収益の拡大と、For Stabilityにおける採算性の改善を中心に施策を着実に実行していく」と述べた。

富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏

 For Growthは、DXなどにより、事業の変革や成長に貢献するデジタル領域であり、富士通では成長分野に位置づけて、規模の拡大と収益性の向上に取り組んでいる。また、For Stabilityは事業の安定化に貢献する従来型IT領域として、効率性を高め、利益率を高めることに注力している。

 富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏は、「2022年度は利益を大きくジャンプアップさせる計画だが、最大のポイントは売上収益の拡大をしっかりと進めることである。オフショアの拡大、オフィスの効率化などの成長投資の成果も見込まれ、十分に実現できる水準だと考えている。言い訳にはならないが、コロナ禍の影響や部品供給遅延の影響もあり、売上はかなり足踏みをしてしまった。計画に掲げていた3兆5000億円の達成は1年遅れのイメージである。だが、営業利益率10%は必ず達成できる」と述べ、「目線を高くおき、2022年度の目標達成に向けてしっかりと取り組んでいく」と意欲をみせた。

富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏

2022年度通期の全社業績見通しは増収増益、本業ベースの営業利益は3900億円を計画

 2022年度通期の全社業績見通しは、売上収益が前年比3.7%増の3兆7200億円、営業利益は82.5%増の4000億円、当期純利益は同53.3%増の2800億円とした。本業ベースの営業利益は3900億円を計画している。

 「営業利益、当期利益ともに過去最高を計画している」(磯部CFO)という。

連結業績見通し

 セグメント別業績見通しは、テクノロジーソリューションの売上収益が前年比4.7%増の3兆2000億円、営業利益は同144.4%増の3300億円としている。

 テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービス事業の売上収益が前年比1.1%増の1兆8600億円、営業利益が40.4%増の1887億円。システムプラットフォーム事業の売上収益は同10.1%増の6175億円、営業利益は59.0%増の900億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益が同11.8%増の4300億円、ネットワークプロダクトが同7.4%増の2500億円とした。また、海外リージョンの売上収益は同9.7%増の8000億円、営業利益は25.5%増の300億円とした。

 「テクノロジーソリューションでは、市場の成長に加えて、部材調達影響のリカバリー、DXの確実な伸長を見込んでいる」(磯部CFO)としている。

 ユビキタスソリューションの売上収益は前年比3.0%減の2300億円、営業利益は同58億円減のブレークイーブン。デバイスソリューションは、売上収益は前年比3.8%増の3900億円、営業利益は同7.7%減の700億円とした。

 「ユビキタスソリューションは円安による部材価格の上昇により減益を予測。デバイスソリューションは半導体への強いデマンドが継続すると見ているが、光コンポーネントの減収影響が見込まれる」(富士通の磯部CFO)としている。

2022年度連結業績予想 事業別セグメント情報

 また、非財務指標として、2022年度に、お客様NPSを3.7ポイント上昇させるほか、従業員エンゲージメントを75ポイントとすること、さらにDX推進指標を3.5にすることを目指す。「非財務指標が、財務指標にどう寄与するのかといった点も、データドリブン経営の観点から分析している」(富士通の時田社長)と述べた。

企業価値の持続的な向上に向けて

2021年度の連結業績は減収減益も、特殊要因を除いた本業での営業利益は11.5%増

 富士通が発表した2021年度(2021年4月~2022年3月)の連結業績は、売上収益は前年比0.1%減の3兆5868億円、営業利益が同7.7%減の2192億円、税引前利益が同17.8%減の2399億円、当期純利益が同9.9%減の1826億円となった。特殊要因を除いた本業での営業利益は同11.5%増の2756億円とした。

2021年度の決算概要

 磯部CFOは、「コロナ禍や半導体不足によるマイナス影響がある厳しい状況のなかで、本業ベースでは10%を超える増益となった。SIサービスの受注が国内外ともにプラス成長になり、特に海外で大きく成長したこと、ソリューション・サービスの採算性改善が進んだほか、電子部品が強いデマンドを背景に安定。グロスマージン率が前年度から1.1ポイント改善し31.2%になったこと、成長に向けた戦略な投資を前年度から倍増したことが、今年度のトピックスになる」と総括した。

 また、成長投資に前年比450億円増の850億円とし、そのうち、グローバルオファリング開発やサービスデリバリー変革、5Gなどの新規事業創出などの価値創造に向けた投資が350億円、One Fujitsuの社内DX投資やWork Life Shiftなどの自らの変革に向けて500億円を投資した。

 「キャリア形成と適所適材を進める施策のひとつとして、グループ外などの新たなキャリアにチャレンジする場合の支援制度を拡充し、DX企業への変革を加速するための人材施策を実行。一過性の損益として650億円を計上した」(磯部CFO)という。

成長投資

 一方、部材供給遅延により、売上収益でマイナス780億円、営業損益でマイナス310億円の影響があったとし、「半導体を起因とする部材供給遅延の影響は第4四半期も継続した。調達ルートの変更、別部品への切り替え、価格転嫁といった対策を進めたが、十分なリカバリーには至らなかった」と説明した。

 さらに、「2021年度上期末から第3四半期にかけては部品ベンダーのデコミットが頻発し、影響範囲がかなり拡大した。第4四半期は不足している部材の種類が絞り込まれつつある。製品価格への転嫁を進めてきたことも損益には少しずつ効いている。だが、部材供給の問題は足もとでも継続しており、2022年度第3四半期までは影響が続くと見ている。それでも、2022年度後半にはグローバルの需給バランスは緩やかながら改善方向に向かうと想定している。マイナス影響は軽減できると考えている」とも述べている。

部材供給遅延の影響

 セグメント別業績は、テクノロジーソリューションの売上収益が前年比1.0%減の3兆563億円、営業利益は同30.2%減の1350億円となった。本業での営業利益は同3.4%減の1939億円となり、営業利益率は6.3%だった。

 テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービス事業の売上収益が前年比2.3%減の1兆8405億円、営業利益が同1.0%減の1887億円。システムプラットフォーム事業の売上収益は同2.6%減の6175億円、営業利益は同46.0%増の566億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益が同11.1%減の3847億円、ネットワークプロダクトが同15.8%増の2328億円となった。また、海外リージョンの売上収益は同0.8%増の7293億円、営業利益は同106.2%増の239億円。

 テクノロジーソリューションにおけるFor Growthの売上収益は前年並みの1兆508億円となり、構成比は34%。For Stabilityは、2%減の2兆55億円、構成比は66%となった。

 「ソリューション・サービスでは費用の効率化、採算性改善により、利益は改善したが、成長投資の拡大と部材供給遅延影響により、前年実績を若干下回った。システムプラットフォームは部材供給遅延による減益影響はあったが、ネットワークの増収効果、前年度にあった国内工場再編のビジネスモデル改革費用の負担減などにより増益となった。海外は為替の効果と子会社の譲渡益などもあり、すべての地域で黒字化した。だが十分な水準とは見ておらず、引き続きサービスビジネスの拡大と採算性の改善を進める」と述べた。

テクノロジーソリューションの概況

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年比25.7%減の2371億円、営業利益は同86.4%減の58億円。デバイスソリューションは、売上収益は前年比27.9%増の3759億円、営業利益は同162.8%増の783億円となった。

 ユビキタスソリューションは、前年のテレワーク需要やGIGAスクール商談の反動があり、またデバイスソリューションは半導体需要の高まりに連動して好調に推移。操業の改善により採算性が大きく改善したという。

テクノロジーソリューションの概況
デバイスソリューションの概況

 2021年度の受注状況は、全体では3%減。そのうち、エンタープライズ(産業、流通)が前年比1%減、ファイナンス&リテール(金融・小売)が3%増、JAPANリージョン(官公庁、社会基盤など)が4%減、富士通Japan(自治体、ヘルスケア、文教、中堅民需など)が10%減となっている。

「お客様への価値創造」に向けた4つの取り組み

 また富士通の時田社長は、同社のパーパス実現のために取り組んでいる「お客様への価値創造」と「自らの変革」について、その進捗状況に時間を割いて説明した。

 「お客様への価値創造」への取り組みとしては、2021年度および2022年度の成果について、4つの観点から話した。

 「グローバルビジネス戦略の再構築」では、利益体質の改善に向けて各リージョンでの構造改革を推進し、アメリカズリージョンでは、オペレーション構造やサービスの採算性改革により、2021年度に黒字化を達成した。

 オファリング強化では、パートナーソリューションを拡充しながら、グローバルでの拡大を図っている。例えば、GDC(グローバルデリバリーセンター)のプリセールス機能を強化して、業務の標準化を提案。2022年度はグローバルでより機動性を高めるため、2022年4月からリージョンを再編成し、欧州の2リージョンを統合したヨーロッパリージョン、アジアとオセアニアを一体化したアジアパシフィックリージョンと、アメリカズリージョン、ジャパンリージョンを加えた4リージョン体制にするとともに、事業責任者のグローバル配置にも着手し、2021年度には欧州にソリューションの責任者、2022年度には北米にネットワークの責任者を配置しており、今後も市場性を見ながら最適な配置を行うという。

 さらに、価値創造やモダナイゼーション領域でのリージョン横断的なサポートを強化。事業ブランドであるFujitsu UVANCEのグローバルでの本格始動にも取り組む。

グローバルビジネス戦略の再構築

 「日本国内での課題解決力強化」では、2021年度に、日本市場を担当する富士通Japanのビジネス基盤づくりに着手し、ソリューションビジネスへのシフトを加速する。あわせて、持続可能なデジタル社会への実現に向け、企業や自治体との提携を強化したことを挙げた。

 また、「PFUのリコーグループへの参画を機に、リコーとの国内での協業も進める」とした。さらに、2022年度もエコシステムの拡大に取り組み、社会インフラを中心に日本のDXを促進するとも述べている。

 人材育成の強化では、8000人を対象に、ビジネスプロデューサーへのリスキリング研修を完了。データを活用して現場部門やCxOに対して、パーソナライズしたアプローチを行うデジタルセールスを開始した。2022年度以降は、ビジネスプロデューサーを中心に商談スタイルの変革に取り組むという。

日本国内での課題解決力強化

 3つめの「お客様事業の一層の安定化に貢献」では、2021年度中に、重大トラブル防止に向けた全社探索を完了するとともに、データ分析プラットフォーム「Palantir」やAIを活用した品質低下の予兆を検知する取り組みを開始。リスク検知のためのダッシュボードの整備も行い、未然防止の高度化を進めるという。

 なお、決算会見の冒頭に時田社長は、2021年度に発生した同社のプロジェクト情報共有ツール「ProjectWEB」への不正アクセスによる被害について陳謝。「多くのお客さまにご迷惑をおかけしたことをおわびする。再発防止に取り組んでおり、引き続き、本事案の反省を持って、安心、安全なサービスの提供に努める」と述べた。

 専任のCISO(Chief Information Security Officer)を配置するとともに、情報セキュリティ本部を立ち上げ、再犯防止とリスク管理の強化を目指していることも明らかにしたほか、2022年度はCISOをグローバルに配置し、グローバル共通の戦略の策定と、プロアクティブな実行、一貫したリスク管理を推進するとしている。

 一方で、グローバル標準の開発を拡大するために、GDCの人員数を2万人に増強。Palantirを活用して、人的リソースのアサインメントの大幅な効率化と有効活用を進めているという。「4000人のリソースから、案件に適した人材を5分でマッチングし、プロジェクト組成することができる。これをグローバルで標準化し、活用を拡大する」という。

 加えて、日本固有の商習慣を踏まえてデリバリーを標準化したJGG(ジャパングルーバルゲートウェイ)とGDCを連携し、グローバルに展開する顧客を支援するという。ロシアに配置しているGDCについては、安定的なサービス提供を継続するために、ほかのGDCに業務の移管を開始しているという。なお、ウクライナ情勢の業績への影響は軽微であるとしている。

お客様事業の一層の安定化に貢献

 4つめの「お客様のDXベストパートナーへ」の取り組みでは、「富士通は、お客さまの事業や変革の達成を『カスタマーサクセス』と定義し、実現に向けたサポートの強化に取り組んでいる」と語り、2021年度に開発と営業機能を一体化した組織により、顧客サポートを一元化したほか、中長期の視点で顧客と伴走するAccount General Manager(AGM)を育成。商品ポートフォリオ全体の見直しにより、社会課題の解決やサステナブルな経営を支えるオファリングに注力していく姿勢を強調した。

 また、Ridgelinezでは受注高が前年比20%増と堅調に推移。社員のパフォーマンスを最大化するために第三者の視点を取り入れた評価制度や女性の積極登用を進めており、2022年度は、プロジェクトをリードするプリンシパルが持つ強みを掛け合わせてチームとして課題解決力を強化。ダッシュボード経営などのマネジメントの高度化も実践するという。

 具体的な事例として、大和ハウス工業は、富士通のAGMの提案により、グローバル経営の強化に向けた経営統合基盤を導入。英国のBotanical Water Technologiesは、果物などを圧縮する際に発生する水分を加工して生産した飲料水などの水取引プラットフォームを、富士通のブロックチェーン技術を用いて構築した。

 オルビスでは、スキンケアに関する新サービス創出に向けてRidgelinezがサポートし、パーソナライズしたカスタムメイドの化粧品を楽しめる提案をしているという。

お客様のDXベストパートナーへ

富士通自らの変革を3つの観点から説明

 一方、富士通自らの変革については、3つの観点から説明した。

 ひとつめの「データドリブン経営の強化」では、データを活用してグループ全体の経営を高度化する「One Fujitsu」プログラムを、全リージョン横断で推進する。2021年度は、Palantirを活用した経営ダッシュボードを実用化するとともに、データ分析の専任組織であるデータアナリティクスセンターを設立。2022年4月からは「One CRM」活動を始動し、最優先テーマとするパイプラインマネジメントのグローバル標準化に向けて、全リージョンのCRMシステムを移行する。

 同時に、グループ全体のERPを統合する「One ERP+」を、英国およびアイルランドで先行稼働させ、今後、グローバル標準化に向けた取り組みを開始するという。

データドリブン経営の強化

 2つめの「DX人材への進化・生産性の向上」では、2021年度にはポスティング(社内募集制度)を国内グループ会社へ拡大したり、報酬制度を強化したりといった取り組みを通じて人材の流動性を向上させたとのこと。約2700人がポスティングを利用した実績があったという。

 2022年度はグローバルでの人材の流動性を高めるため、ポスティングの拡大やパーパス実現への貢献を評価するグローバル共通の評価制度「Connect」を幹部社員に適用。同時にジョブ型人事制度の一般社員への適用拡大も進めるとした。

 また、男性社員の育児休暇の取得拡大や地方自治体と連携したワーケーションを進め、同時に新たな働き方に適したオフィスへの変革も進める。

 「ボーダーレスオフィスをグローバル展開するほか、最先端技術を自社で実践するために、Fujitsu Uvance Kawasaki Towerでは生体認証を取り入れ、ネットワークの利用状況、フロアの混雑状況、社員の居場所が検索できるようにしている。社員がいきいきと働けるように、心理的安全性を高める施策にも着手していく」と述べた。

 さらに、「お客さまの変革を支援するには人材が必要である。全員が同じ教育を受けることはやめた。9000を超える教育カリキュラムを提供し、自らのパーパスやゴールに向けて必要なスキルや経験を選択して、成長する、自律型の人材育成にも取り組んでいる。人材への投資は今後も継続していく」とも話している。

DX人材への進化・生産性の向上

 3つめが「全員参加型・エコシステム型のDX推進」である。2020年10月に開始した全社DXプロジェクト「FUJITRA(フジトラ)」を通じて、マインドセット変革や制度改革など、30件のDXフレームワークを創出した。

 2021年度は対話によって個人のパーパスを掘り起こすパーパスカービングを役員からスタートし、これを全社員に拡大。社員の声を集めてデータ化するVOICEプログラムでは、これまでに1200回以上実施し、各種施策に反映しているという。

 また、新たな取り組みとしてFujitsu Innovation Circuitを開始。次の成長に向けてイノベーションを生み出すイントレプレナーを社内に育てる。「新規事業となる可能性があるアイデアは、会社が全面的に支援する。このプログラムを通じて、よい失敗を繰り返し、そこから学ぶ企業カルチャーを醸成したい」と語った。

 さらに2022年度は、DX推進指標達成に向けた取り組みを加速していくとしている。

 富士通では、時田社長が就任して以降、IT企業からDX企業への変革を打ち出している。

 時田社長は、「進捗は5合目に達している。自動車であがれるところまでは来た。だが、その道のりも曲がりくねった道であった。今後は、自分の足で登らなくてはならないところに入っていく。87年の歴史を持つ富士通の諸先輩が築いたところにあぐらをかいているわけではないが、これまでの基盤で事業がなしえている。満足することなく変革と成長を進めていきたい」と述べた。

全員参加型・エコシステム型のDX推進

 一方、サステナビリティへの取り組みとしては、人権・多様性、環境、ウェルビーイングなどの7つを重要課題に設定して、役員を推進責任者として活動を開始。2022年度をゴールとする9つの目標を掲げているいるという。

 また、2021年10月に策定した事業ブランド「Fujitsu UVANCE」では、7つの重点注力分野を定めたほか、2022年4月にはグローバルな専任組織を1000人規模で立ち上げ、2022年度を始動の年と位置づけ、2023年度から事業を本格化させることを示した。

 さらに研究開発分野では、5つのキーテクノロジーに投資を集中。インドとイスラエルに新たに研究科発拠点を設置し、世界8カ国850人以上のグローバル研究体制を確立。拠点ごとにフォーカス領域を定めて研究を行っている。

 「各国の研究機関やアカデミアと連携するとともに、共同研究も推進や、優秀な人材の確保も進めている。Fujitsu UVANCEを軸に、サステナブルな社会の実現を支える先端テクノロジーを開発していく」と述べた。

5つのキーテクノロジー

 なお会見では、この日発表したPFUの株式の80%をリコーに売却することについて、時田社長が言及。「PFUは、富士通のなかでしっかりとした位置を占める大事な会社であり、イメージスキャナーやコンピュータプロダクト、サービスを提供してきた。だが、富士通はDX企業に変わるという方針のなかで、ソリューション・サービスを軸として、よりグローバルにビジネスを展開していく方向で歩みを進めている。そうしたなかにおいて、PFUの今後の歩み方に適しているのかを考えた。リコーはデジタルサービスを中核として、エッジ領域のプロダクトやサービスがあり、PFUとの親和性は高いと考えている。PFUにとってもいい組み合わせであり、富士通にとってもエッジの領域に力を持つリコーと協業していくことで、エンドトゥエンドでソリューションを提供し、顧客に新たな価値を届けられる」と述べた。

 また、デバイスソリューションの考え方については、磯部CFOが説明した。「富士通はテクノロジーソリューションにリソースを集中し、ノンコア事業については独立化を進めている。この方針に変更はない。より強いビジネスとしてカーブアウトするために、どこと組むか、より高い価値を出すスキームはなにかという観点から多面的な検討を行っている」と前置き。

 「現時点では、デバイスビジネスは好調であるが、富士通グループとしてどんなシナジーがあるのかを冷静に考えなくてはいけない。富士通の企業価値を最大かるためにどんなポートフォリオが必要かという考え方をもとに、ボラティリティが高いビジネスであったり、ほかのものと組んだ方がよりよい成長が期待できるものであったりする事業は独立を進めていく。PFUに関しても、企業価値の最大化を追求するという点で判断したものである。投資が必要なタイミングで、資金がまわらないということが生まれてはいけない。デバイスソリューションも、いまもうかっているから手放さないという短期的な思考で動いているわけではない。時間がかかっているのは確かだが、独立させる方針には変更がない」と述べた。