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富士通、2021年度第3四半期累計の連結業績は増収減益 部材供給遅延の影響大きく

 富士通株式会社は27日、2021年度第3四半期累計(2021年4月~12月)の連結業績を発表した。

 それによると、売上収益は前年同期比0.7%増の2兆5435億円、営業利益が同5.8%減の1466億円、税引前利益が同3.4%減の1584億円、当期純利益が同8.6%増の1242億円。また、第3四半期(2021年10~12月)の売上収益は、前年同期比1.5%減の8805億円、営業利益が同30.3%減の651億円、税引前利益が同28.3%減の689億円、当期純利益が同6.1%増の713億円となった。

連結PL(9カ月累計)
連結PL(第3四半期)

 富士通 取締役執行役員専務兼CFOの磯部武司氏は、「デマンドは回復傾向にあるが、業種ごとにまだら模様があり、回復スピードは緩やかである。一方で、半導体不足に起因する部材供給遅延の影響が継続している。第3四半期は、テクノロジーソリューションが部材供給遅延の影響で減収、ユビキタスソリューションは前年のテレワーク需要やGIGAスクール商談の反動減の影響を受ける一方で、デバイスは電子部品のデマンドの増加がプラスになった」と総括した。

富士通 取締役執行役員専務兼CFOの磯部武司氏(過去の記者会見より)

 なお部材供給遅延の影響として、第3四半期累計では売上高で397億円のマイナス、損益で190億円のマイナスがあったとのことで、「部材供給の問題は第3四半期も継続している。さまざまなルートで部材調達を実施するとともに、設計変更を含めた代替部品への切り替えを進めているが、需給のアンバランスは続いている。売上延伸となる案件が第3四半期も発生しており、年間で1000億円程度のビジネスが延伸している。物量の減少に加えて、部材価格の高騰や航空便での出荷によるコストアップの影響も受けている。損益への影響は、上期末に想定した以上になっている」とした。

 また今後については、「少なくとも2022年度上期いっぱいはこの状況が続くと見ている。半導体需要は相変わらず旺盛だが、今年ほどの勢いはなくなると予測しており、供給が拡大すると、2022年年末ぐらいから緩やかに需給バランスが改善すると見ている。長期化するという見立てで事業計画を練り直している」と述べた。

部材供給遅延の影響

 富士通では2022年2月から、PCサーバー「FUJITSU Server PRIMERGY」の本体装置で約10%、オプション製品では約30%の値上げを発表しており、部品価格の高騰を製品価格に転嫁する措置を開始している。

 第3四半期の売上総利益率は30.1%となり、0.5ポイントの改善。営業費用は、前年同期から61億円増の2054億円。また、成長投資は570億円。内訳は、サービスビジネスの強化による価値創造で220億円、One Fujitsuによる社内DX投資やWork Life Shiftによる働き方の変革などの自らの変革に向けた投資に340億円とした。

セグメント別の業績

 第3四半期累計のセグメント別業績は、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比0.4%減の2兆1509億円、営業利益は同16.8%減の814億円となった。

 テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービス事業の売上収益が前年同期比1.1%減の1兆2830億円、営業利益が948億円。システムプラットフォーム事業の売上収益は同2.5%減の4309億円、営業利益は215億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益が同7.3%減の1847億円、ネットワークプロダクトが同25.4%増の1020億円となった。また、海外リージョンの売上収益は同2.2%増の5389億円、営業利益は166億円となった。

 「第3四半期は、サービスビジネスは引き続き堅調だが、ハード一体型ビジネスが大きく減少。システムプロダクトは部材供給遅延に加え、前年の公共向け大口商談の反動を受けた。ネットワークプロダクトは北米向けが増加した。また、海外リージョンは欧州向けプロダクトビジネスが部材調達遅延の影響でマイナスとなったが、円安効果を含めて全体では前年並になっている」という。

テクノロジーソリューションの概況
テクノロジーソリューション(ソリューション・サービス)
テクノロジーソリューション(システムプラットフォーム)

 なお、2021年度第3四半期のFor Growth(DXなどのデジタル領域)の売上収益は前年同期比1%減の6895億円となり、構成比は32%。For Stability(従来型IT領域)は、前年並の1兆4616億円、構成比は68%となった。

 「For Growthは、DXや効率化に対するデマンドは緩やかに回復しているが、前年の富岳の反動減が影響している。For Stabilityでは部材供給遅延の影響が出ている」という。

For GrowthとFor Stabilityの概況

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比24.0%減の1774億円、営業利益は同84.2%減の57億円。デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比29.4%増の2770億円、営業利益は同178.6%増の594億円となった。

 なお、第3四半期累計の受注状況は、全体では前年同期比3%減。そのうち、エンタープライズ(産業、流通)が同2%減、ファイナンス&リテール(金融・小売)が同2%増、JAPANリージョン(官公庁、社会基盤など)が同2%減、富士通Japan(自治体、ヘルスケア、文教、中堅民需など)が同9%減となっている。

 「エンタープライズはSIサービスが堅調であるが、個社ごとの投資意欲には強弱がある。一方で、第3四半期には保険、証券関連の基幹システム更新商談を複数獲得した。SIサービスは、大手製造、金融などの経営基盤が強い大規模ユーザーのDXに向けた投資が回復している。官公庁は第3四半期が前年並の受注であったが、キャリア向けが前年同期に高水準であったことから、大きなマイナスとなった。自治体は現場でのコロナ対応が続き、システム標準化の動きもこれからであり、低調に推移。ヘルスケアは前年並だが、延伸していた案件のリカバリーが進んでいる。文教は前年のGIGAスクールの反動減が大きく影響して低調。中堅民需も顧客自身が部材不足や資源価格高騰の影響を受けており、デマンドの回復が遅く、低調である」とした。

受注の状況

通期の業績見通しは据え置き

 2021年度通期の業績見通しは据え置き、売上収益が前年比1.1%増の3兆6300億円、営業利益は同3.3%増の2750億円、当期純利益は同1.1%増の2050億円とした。

 だがセグメント別では見直しを行っており、テクノロジーソリューションは売上収益で2021年10月の予想から500億円減の3兆1000億円、営業利益では同150億円減の2050億円。デバイスソリューションは売上収益が同300億円増の3800億円、営業利益は同150億円増の650億円とした。ユビキタスソリューションは据え置き、売上収益2300億円、営業利益50億円としている。

 「テクノロジーソリューションでは、部材供給遅延が想定より拡大。需給の改善が遅れており、もう一段の下振れを想定した。また、自治体、文教、中堅民需向けの低調な受注状況も下方修正に反映している。デバイスソリューションは、電子部品の好調ぶりが、第4四半期も継続することを見込んだ」という。

2021年度通期の連結業績見通し
2021年度通期のセグメント別業績見通し

 富士通では2022年度に、テクノロジーソリューション事業で営業利益率10%、売上収益3兆5000億円を目指している。

 これに対して磯部CFOは、「営業利益率10%は、なんとしても達成したいと考えている。ハードルは高いが必ず達成できると考えている」とし、「オミクロン株の影響や、部材供給遅延の拡大といった要素は、ネガティブな影響ではあるが、中長期的な根本障害にはとらえていない。アフターコロナではなく、ウィズコロナを前提とした事業に頭を切り替える必要はあるが、足元のマイナスは消していける。成長に向けてやるべきことはできている。グローパルビジネス戦略の再構築、日本国内での課題解決力強化に向けた取り組み、顧客のDXパートナーになるためのフロント機能の強化、DX推進組織の立ち上げ、Work Life Shiftやジョブ型人事制度の導入をはじめとした自らのDX化の推進や、新事業ブランドであるFujitsu Uvanceの取り組みなどを進めている」と説明。

 さらに、「これらの過程では、生みの苦しみや新たな課題も生まれているが、それらに対してもスピード感を持って対処が進んでいる。足元での厳しい環境要因もあり、成果が数字では見えにくいが、サービスビジネスの成長、採算性改善が表れていると実感している」と述べた。

 その一方で、テクノロジーソリューションの売上収益3兆5000億円の目標については、「正直にいうと、新型コロナや部材供給遅延の影響で、よりハードルが高くなっている。パートナーシップ、アライアンスの強化などにより、高い目線をしっかりと持って進めたい」と述べるにとどまった。