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富士通の2022年度第3四半期連結業績、営業利益は過去最高益を更新

通期利益は下方修正、欧州事業の影響

 富士通株式会社は1月31日、2022年度第3四半期(2022年4月~12月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比3.7%増の2兆6367億円、営業利益が同18.1%増の1732億円、税引前利益が同29.2%増の2046億円、当期純利益が同9.3%減の1127億円。特殊事項を除いた本業ベースの営業利益は1517億円となった。

 また、第3四半期(2022年10~12月)の売上収益は、前年同期比5.8%増の9314億円、営業利益は同10.9%増の723億円。本業ベースの営業利益は同29.8%増の769億円だった。

連結PL(3Q)
連結PL(9カ月累計)
決算ハイライト

 富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏は、「売上収益、本業利益とも、確実に拡大しており、営業利益は過去最高益を更新している。第1四半期は部材供給影響が強く残り、減益でのスタートだったが、第2四半期になり、部材供給影響は続いたものの、国内外ともにSI/サービスを中心にした受注が拡大傾向に転じた。第3四半期に入り、SI/サービスの堅調に受注に加えて、テクノロジーソリューションが堅調に推移。部材供給遅延の影響もリカバリーに転じており、力強い積み上がりが見られている。また、採算性の改善も着実に進んでいる」と総括した。

富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏

 第3四半期累計での部品供給遅延の影響は、売上収益でマイナス362億円、営業利益ではマイナス204億円となった。「だが、第3四半期からはプラスに転じ、部材供給影響をほぼコントロールできる状況になった」という。

部材供給遅延の影響

 また、コスト・費用の効率化では、第3四半期に65億円の改善を達成。テクノロジーソリューションの売上総利益率は31.1%に向上。特にソリューション・サービスは36.7%にまで高まっている。「オフショアの活用が進んでいるが、これは単に安い人件費で開発ができているということだけでなく、標準的なモノづくりに移行しているということである。何でも自前で作るのではなく、標準が進めば、全体の効率があがり、不採算案件も出にくくなる」とした。

 成長投資については、第3四半期累計で前年同期比321億円増の898億円となり、「Fujitsu Uvance向けのオファリング開発や、データドリブン経営に向けた社内DX投資などの成長投資を継続している」と述べた。

コスト・費用の状況
成長投資

第3四半期累計のセグメント別業績

事業別セグメント情報(3Q)

 第3四半期累計のセグメント別業績は、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比3.2%増の2兆2201億円、営業利益は同32.2%増の1076億円となった。

 テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービス事業の売上収益が前年同期比2.8%減の1兆2469億円、営業利益が同27.4%増の1209億円。システムプラットフォーム事業の売上収益は同10.7%増の4769億円、営業利益は同52.8%増の330億円。海外リージョンの売上収益は同11.1%増の5988億円、営業利益は前年同期の167億円の黒字から、マイナス103億円の赤字となった。

 「ソリューション・サービスでは、SI/サービスの増収効果に加えて、生産性向上や費用の効率化を推進。システムプラットフォームでは、北米向けネットワークの増収効果に加えて、部材調達問題の影響が第3四半期で解消した。海外リージョンでは、欧州における事業環境が厳しいこと、プロダクトビジネスにおける部材価格の上昇、ユーロ安がネガティブに影響している」という。

テクノロジーソリューションの概況
テクノロジーソリューション(ソリューション・サービス)の概況
テクノロジーソリューション(システムプラットフォーム)の概況

 テクノロジーソリューションにおけるFor Growthの第3四半期累計実績は、売上収益が前年同期比5%増の7716億円となり、構成比は35%。For Stabilityの売上収益は同2%増の1兆4485億円となった。また、For Growthの第3四半期実績は前年同期比10%増の2810億円。そのうち、ソリューション・サービスの売上収益は、SAPなどのERP導入や基幹システムの再構築、モダナイゼーション、DX関連ビジネスの拡大のほか、コンサルビジネスも堅調に推移して前年同期比7%増の2305億円。システムプラットフォームは、北米ネットワークビジネスを中心に成長し、同11%増の329億円、海外リージョンは、M&Aの実施によるケイパビリティの拡大によって、同81%増の176億円となった。

 「For Growthは第1四半期においては、前年同期比にあった5G基地局の需要の反動で低調なスタートだったが、第2四半期では前年同期比7%増となり、第3四半期にはさらに拡大した。Ridgelinezの売上高は第3四半期累計で前年同期比40%増の伸長となっている」と語った。

SIビジネスが成長を牽引し、For Growthは110%と大きく伸長

 また、今回の会見では、初めてFujitsu Uvanceの事業規模について言及。「テクノロジーに寄ったオファリングとして、SAPやService Now、Salesforceをコアとして提供するものや、ハイブリッドITを中心に、四半期単位で約500億円の規模に達しており、2022年度は、年間で2000億円程度を計画している。第3四半期実績では前年同期比40%増となっており、第3四半期累計では30%増となっている。SAPやService Now、Salesforceを中心にしたオファリングには強いデマンドがあり、こうした要望に応えているだけでも高い成長を遂げている」と語り、「現在、投資をしてオファリングをそろえているところである。2023年度、2024年度にしっかりと拡大させる。今後、Fujitsu Uvanceをコアの領域として育てていく」と、Fujitsu Uvanceの事業拡大に意欲をみせた。

 一方で、富士通が掲げているDX企業への転換の成果については、「御用聞きビジネスからの脱却は全然できていないと思っている。現在、Fujitsu Uvanceのオファリングを開発しており、オファリングを中心としたビジネスモデルに変わることが、次期中期経営計画の大きなポイントになる。DX企業として、社内の変革は進んでおり、従業員も経営層も意識改革は進んでいるが、ビジネス面でもトランスフォーメーションしていくことを、次期中期経営計画のなかで、数字として見せられるようにしたい。DX企業への道は半ばだが、端緒につき始めている」と位置づけた。

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比5.2%減の1683億円、営業利益は前年同期の57億円の黒字から、マイナス69億円の赤字になった。また、デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比9.8%増の3043億円、営業利益は同22.2%増の726億円となった。「デバイスソリューションは、第3四半期には減収減益になっている。電子部品事業は急激な拡大から、調整局面に入っている。物量減に伴い、操業についても、いままでの水準を下回っており、採算性においてもネガティブになっている」という。

ユビキタスソリューションの概況
デバイスソリューションの概況

2022年度第3四半期累計の受注状況

 2022年度第3四半期累計の国内の受注状況は、全体では前年同期比1%減。そのうち、SI/サービスは同5%増となった。分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比8%増、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同1%減、Japanリージョン(官公庁、ミッションクリティカルなど)が同1%増、富士通Japan(自治体、ヘルスケア、文教、中堅民需など)が前年並、ネットワークが同30%減となっている。

 「エンタープライズは上期に続き、強いデマンドが続いており、全業種のなかでも強い伸びがある。製造系、自動車系を中心にDXやモダナイゼーションに対する投資意欲が強い。ファイナンスは前年度第3四半期に大型商談の受注があった反動があるが、第4四半期に大口案件を控えており、デマンドは拡大基調にある。Japanリージョンは第3四半期には前年実績を下回ったが、第4四半期には官公庁向けの大口案件の獲得を予定しているほか、補正予算案件なども想定している。富士通Japanでは、自治体システムの標準化やネットワーク増強の動きがあるほか、クラウドによる電子カルテ商談も好調である。だが、文教と中堅民需はややスローとなっている。ネットワークは前年度に大型商談を獲得した反動によってマイナスになっている」とした。

 海外の受注状況は、Europeが前年同期比7%増(そのうちサービスが同29%増、プロダクトが同14%減)、Americasが同9%減、Asia Pacificが同5%増(そのうちサービスが同29%増、プロダクトが同19%減)となっている。「欧州では先行きの不透明感もあり、慎重に見ていく必要がある。Asia Pacificは第3四半期に公共向けサービス商談で、複数の大型案件を獲得したほか、M&Aによるケイパビリティの増加も貢献している」という。

通期の業績見通しを修正

 一方、2022年度通期の業績見通しを修正。売上収益は20200年10月の公表値(以下、前回公表値)に比べて300億円増とし、前年比4.5%増の3兆7500億円、営業利益は前回公表値から250億円減、前年比71.1%増となる3750億円、当期純利益は前回公表値から250億円減、前年比39.6%増の2550億円とした。

連結業績見通し

 セグメント別では、テクノロジーソリューションの売上収益が前回公表値から200億円増の3兆2200億円、営業利益が同300億円減の3000億円。営業利益率は9.3%となる。ここでは、為替影響が売上収益でプラス700億円、営業利益ではマイナス150億円。また、海外ビジネスの計画未達を中心に、売上収益でマイナス500億円、営業利益でマイナス150億円の影響があった。

 テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービスの売上収益が100億円減の1兆8500億円、営業利益が100億円減の2550億円。「中堅中小企業市場を中心に、計画に届かないリスクを見込んだ」という。

 システムプラットフォームの売上収益は200億円増の7000億円、営業利益は100億円減の800億円。システムプラットフォームのうち、システムブロダクトの売上収益は100億円増の4400億円、ネットワークプロダクトは100億円増の2600億円。「システムプロダクトでは機種ミックスの悪化影響を織り込んだ」という。

 また、海外リージョンの売上収益は100億円増の8100億円、営業利益は250億円減の50億円を見込む。「欧州における売上未達が主因であり、市況感も厳しいため、デマンドの回復遅れを盛り込んだ。また、ロシアビジネスの移管や撤退などのコストも特殊事項として入っている」とコメント。

 「欧州における事業基盤の弱さが再び露呈した。英国では公共セクターが強いものの、既存案件が縮小するなかで、民需で拡大することに取り組んできたが、景況感の冷え込みもあり、そこに手が出ていかない状況だった。競争力があるグローバル共通のオファリングを作り、グローバルデリバリーを展開するという方向は間違っていないが、スピード感や深さが足りないという反省がある。いままでの延長線上で立ち直るという甘い考えは持っていない。ゼロベースで根本的な対策立案に取り組んでいるところである。個別でローカライズしているものはやめ、事業効率を高めていく。また、M&Aも進めていく」と述べた。

 ユビキタスソリューションでは、売上収益が100億円増の2400億円、営業利益は50億円減のマイナス50億円の赤字。デバイスソリューションでは売上収益は据え置き3900億円、営業利益は100億円増の800億円とした。

連結業績予想の事業別セグメント情報

中期経営計画の行方は…?

 2022年度は、富士通が打ち出している中期経営計画の最終年度となり、テクノロジーソリューション事業では営業利益率10%、売上収益で3兆2000億円を目標としていた。

 今回の修正により、営業利益率は9.3%(営業利益3000億円)、売上収益で3兆2200億円の見通しとなる。だが、為替影響を除くと、営業利益率は10%(営業利益3150億円)、売上収益は3兆1500億円となり、営業利益率では目標に達する。

 磯部SEVP/CFOは、「残念ながら、当初計画を下方修正することになったが、収益構造の大きな枠組みという点では、確実にトランスフォームしていると実感している。売上拡大や収益拡大には結びついている。2023年度以降のさらなる成長につなげるためにも、まずは第4四半期における追い込みを含めて詰めていく」とコメント。

 「中期経営計画の達成については、気持ちとして断念しているつもりはない。決してあきらめてはいない。最後まで追い込めるか、どこまで積み上げるかということには取り組んでいく。だが冷静に見た場合、下方修正をしており、達成は難しいという評価をしている。為替の影響を除けば、営業利益率10%を達成している、ということを言うつもりはない。定量的にターゲットには届いていないのは事実である。だが、大きなベクトルや、着地点は、中期経営計画の方向性に沿っている」とした。

 また、「営業利益率10%は、グローバルビジネスに入っていくためのスタートラインである。このスタートラインに立つべく、できることは何でもやろうということで、いまでも全社一丸で取り組んでいる。第3四半期に過去最高益を達成したから満足ということではない。また、スタートラインというように10%がゴールではない。2023年度も持続的な成長を目指している。そのため、将来に禍根を残すような形で無理をしたり、不健全な形で努力をするつもりもない。将来の成長路線に乗せる形で取り組みを続けていきたい。この勢いを殺さないように、継続して来年度につなげられるようにしたい」と述べた。