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富士通の2022年度上期連結業績は増収増益、営業利益は23.9%増
PFUのカーブアウトによる一時利益が大きく影響
2022年10月28日 00:00
富士通株式会社は27日、2022年度上期(2022年4月~9月)の連結業績を発表した。
売上収益は前年同期比2.5%増の1兆7053億円、営業利益が同23.9%増の1009億円、税引前利益が同46.0%増の1306億円、当期純利益が同36.0%増の719億円となった。
PFUをカーブアウトしたことによる一時利益もあり、営業利益は過去最高を達成。営業利益率は5.9%。だが、特殊要因を除いた本業での営業利益は是年同期比2.2%減の747億円となった。
富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏は、「国内、海外ともに、SI/サービスを中心に受注が拡大。英国では大型の更新商談も獲得し、採算性改善や成長投資の拡大は計画通りに進捗している。本業の営業利益は、ビジネス成長に向けた投資を拡大したことに加えて、部材供給遅延に伴うマイナス影響があったために前年割れになった」と説明。「P/L(損益計算書)は予定通り。商談パイプラインの拡大や受注獲得については計画通りの進捗である。業種ごと、地域ごとに若干のバラツキはあるが、SI/サービスではDX、モダナイゼーション関連を中心にデマンドが拡大している」と述べた。
だがその一方で、「上期の実績は、まったく満足がいくものではない」とコメント。「プロセスや先行指標を見ると、上期に取り組んできたことや方向性に間違ったものはないと確信している。第3四半期に売り上げを増やすことが、通期計画の達成に向けて超えなくてならないハードルになる」と厳しい見方もした。
上期における部品供給遅延の影響は、売上収益でマイナス411億円、営業利益ではマイナス205億円となった。
「部材供給遅延のネガティブな影響は2021年度上期後半から継続している。だが、2022年度は第1四半期から第2四半期にかけて、次第に影響が緩和する方向が見えてきた。不足部品への対応のめども立ちつつあり、売価への転嫁も対象製品が増加している。第3四半期は、部材供給遅延の影響は若干残るが、下期全体では挽回でき、前年同期のマイナス影響をゼロにするだけでなく、プラスにできるだろう」と述べた。
為替の影響については、「全体ではほぼオフセットしている。連結全体ではバランスを取る構造となっている」としながらも、「セグメントごとでは悩ましい状況がある。システムプラットフォームでは、円安の影響で部材の購入価格が高騰したほか、海外リージョンではドルユーロ安により部材購入価格が高騰している。円安、ユーロ安は、テクノロジーソリューション全体とユビキタスソリューションではマイナス、デバイスソリューションでは大きなプラスになる。マイナスが出ているビジネスでは、影響を打ち消すべく、追加のコストダウンや価格転嫁を進めているが、上期は十分カバーしきれなかった」と振り返った。
なお、上期の成長投資は595億円(前年同期実績は370億円)となり、そのうち、Fujitsu Uvanceの立ち上げをはじめとした価値創造に向けた投資が279億円、社内DXやOne Fujitsuプロジェクトなどの自らの変革に向けた投資が316億円。「豪州ではデジタル領域にケーパビリティを持つ企業のM&Aを実行した。また、大規模なオフィス再配置は山を越えたが、新たな働き方にマッチするように進化を続けている。持続的成長に向けた投資は、引き続き積極的に実施する」と語った。
セグメント別業績
セグメント別業績は、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比0.9%増の1兆4253億円、営業利益は同27.3%増の524億円となった。
テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービス事業の売上収益が前年同期比3.5%減の8156億円、営業利益が12.3%増の636億円。システムプラットフォーム事業の売上収益は同5.0%増の3010億円、営業利益は43.7%減の89億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益が同2.4%増の1891億円、ネットワークプロダクトが同9.7%増の1119億円となった。また、海外リージョンの売上収益は同6.8%増の3703億円、営業利益は前年同期の51億円の黒字から、マイナス90億円の赤字となった。
「ソリューション・サービスでは、DXビジネス拡大に向けた成長投資を拡大したが、SIでの増収効果、採算性改善を進めたことで増益になった。システムプラットフォームは部材供給遅延のリカバリーにより、物量増はあったが、供給問題に、円安の影響が加わり部品価格が高騰したため減益になっている。海外リージョンは、サービスビジネスの大型案件が終息したこと、プロダクト調達価格の増加が影響して厳しい内容になった。下期は売上拡大を図り、黒字化する」と述べた。
テクノロジーソリューションにおけるFor Growthの売上収益は前年同期比2%増の4906億円となり、構成比は34%。For Stabilityは、前年並みの9347億円、構成比は66%となった。
「国内では、エンタープライズ、公共、社会システムなどの幅広い分野で、DXやモダナイゼーションにつながる基幹系SIサービスが拡大している。これらの業種では市場成長を上回わる2桁の成長を遂げている。また、Ridgelinezの売上高は前年同期比47%増となるなど、伸ばすべき分野の成長は着実に進展している」と語った。
ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比5.5%減の1102億円、営業利益は前年同期の50億円の黒字から、マイナス42億円の赤字になった。デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比18.5%増の2076億円、営業利益は同49.4%増の528億円となった。
「ユビキタスソリューションは、国内外で円安、ユーロ安の影響を受け、調達価格が上昇し損益を圧迫した。デバイスソリューションは、高水準のデマンドが継続しているのに加えて、為替の好転影響があり、採算が大きく改善している」。
2022年度上期の受注状況
2022年度上期の国内の受注状況は、全体では前年同期並み。そのうち、SI/サービスは前年同期比8%増、システムプロダクトは同10%増、ネットワークは同38%減、PCが同25%減。また、分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比8%増、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同4%増、Japanリージョン(官公庁、ミッションクリティカルなど)が同7%増、富士通Japan(自治体、ヘルスケア、文教、中堅民需など)が前年同期並み、ネットワークが同38%減となっている。
「製造業や小売業で基幹システムの更新案件などを受注し、エンタープライズは好調を維持した。また、第2四半期にはメガバンクや損保において、基幹システム更新の大型案件を獲得し、受注が拡大。公共向けの受注も前年並みの高い水準を維持している。自治体分野ではシステム標準化、デジタル化関連の商談が堅調に推移したが、文教や中堅民需は部材供給遅延の影響もあり、一部商談が下期に移行している。ネットワークは前年同期に大型商談を獲得した反動で大きくマイナスとなっている」という。第1四半期にはスパコンの商談を獲得したものの、PCやネットワーク機器の需要は低調だった。
海外の受注状況は、Europeが20%増(そのうちサービスが56%増、プロダクトが13%減)、Americasが7%減、Asia Pacificが14%減となっている。
「英国で複数年に渡る大型案件の更新を獲得したが、米国では前年度の政府系大口商談の反動と商談延伸でマイナス。アジアパシフィックは低調だったが、第2四半期には公共系の大型商談を獲得している」と述べた。だが、「海外ビジネスは稼ぐ力がない状況にある。ここに景気減速感が加わり、厳しい状況になっている。しかし、デジタル化、DX、モダナイゼーションは景気後退局面や変革が求められる局面においては強いデマンドがある。世界経済のリセッションを乗り越えるために必要なものを提供し、投資に対するリターンを確実に届けたい」などと述べた。
2022年度通期の業績見通しは据え置き
一方、2022年度通期の業績見通しは据え置き、売上収益は前年比3.7%増の3兆7200億円、営業利益は同82.5%増の4000億円、当期純利益は同53.3%増の2800億円。本業ベースの営業利益は3900億円を計画している。2022年度は、富士通が打ち出している中期経営計画の最終年度となり、テクノロジーソリューション事業では営業利益率10%、売上収益で3兆2000億円を公表数字としている。今回の決算発表でも、その目標数値は維持している。
磯部SEVP/CFOは、「目標達成に100%の自信があるのかというと、心配事も、リスクもたくさんある。だが、できないことを約束するわけにはいかない。達成できる手段はあり、あきらめるほどのネガティブな材料は出ていない」と語る。
「上期全体ではほぼ計画通りの進捗であり、下期はさらに大きな利益成長を計画している。下期の売り上げ拡大に向けた注残が積み上がっており、その刈り取りを進める。各プロジェクトを確実に遂行し、売り上げにつなげること、部材調達問題も緩和傾向が見えており、部材供給遅延のリカバリーをしっかりと進めることが増益に向けた大きな要素となる。採算向上施策の継続や品質確保による不採算プロジェクトの抑制も油断なく進めることも計画達成への絶対条件となる。不採算損失が出ればそれで計画が壊れてしまうが、現状では、下期に大きな不採算案件はない。まだやるべきことはたくさんある。なにを言っても結果を出さないといけない。リスクを極小化しながら、ゴールに向けて着実に積み上げていく」と力強く語った。
なお、事業ポートフォリオの再編に向けた進捗状況についても説明した。
非注力領域のカーブアウトとしては、2022年度上期にPFUおよび富士通セミコンダクターメモリソリューションのカーブアウトを実施したほか、第3四半期にソシオネクストが東証プライムに上場。新光電気、富士通ゼネラル、FDKといったノンコア事業についても企業価値向上につながるカーブアウトに向けて資本業務提携などを具体的に検討しているという。
注力領域におけるケーパビリティの増強では、2021年度に、業種アプリのペルテ、データアナリティクスのVersor、Azureなどを得意とするoobeを買収。2022年度に入ってからは、ServiceNow で実績を持つEnable Professional Services、セキュリティのInPhySecを買収。「IPやケーパビリティ、成長性、収益性などを見極め、戦略的に資本、業務提携やM&Aを進める」とした。
さらに、政策保有株式については、保有の合理性を見極め、継続的に圧縮。2022年度上期に約150億円を売却したという。