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富士通の2022年度第1四半期連結業績は増収減益、部材供給の遅延が響く

 富士通株式会社は29日、2022年度第1四半期(2022年4月~6月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比2.1%増の8188億円、営業利益が同24.1%減の256億円、税引前利益が同3.2%減の383億円、当期純利益が同28.5%減の172億円となった。特殊要因を除いた本業での営業利益は同24.1%減の256億円となった。

2022年度第1四半期の連結業績概要

 富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏は、「年初計画に対しては、ほぼ計画通りのスタートとなった。受注や商談パイプラインの拡大も予定通りの進捗。これを下期に刈り取っていく。DXに向けたデマンドをしっかりととらえ、第2四半期もビジネス拡大を図る。また、為替が計画よりも円安に振れた影響は、富士通全体ではプラスに働いた。輸出が多いデバイスソリューションはプラスだが、テクノロジーソリューションやユビキタスソリューションは、輸入部材のコストアップによりマイナスになった」とした。

富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏

 第1四半期における部材供給遅延の影響は、売上収益でマイナス278億円、営業利益ではマイナス129億円となった。計画からは若干のマイナス影響になっているという。

 「IAサーバーや、5G基地局などのネットワーク機器を中心に、前年度下期並みの影響が続いている。だが、不足している対象部品の範囲が絞り込まれてきた。少しずつコントロールができてきた印象がある。前年度下期は、部品ベンダーから納入予定のものが入ってこないという状況が幅広い部材で発生していたが、足元では不意に部品が無くなるということは起きず、どの部品がどの程度足りないかが、あらかじめわかっている状況にある。サプライチェーンの見直しや部品の変更も進んできた」と説明。

 「第1四半期に部品供給遅延によりスリップしたものについても、第2四半期でリカバリーできる。部材コストの上昇についても、IAサーバーやネットワーク機器は、前年度第4四半期以降、リストプライスの見直しを実施しており、新規受注分から価格転嫁している。切り替えが進むにつれ、損益面でのリカバリーが拡大する」とした。

 なお、部材の逼迫状況については、緩和しながらも当面は継続すると見ており、「需要と供給のバランスが取れている状況ではない。年末までは厳しい状況が続き、前年比では上期はネガティブ、下期はプラスに転じると見ている」と語った。

部材供給遅延の影響

セグメント別の業績

セグメント別 売上収益の状況

 セグメント別業績は、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比0.7%減の6822億円、営業利益は同86.5%減の220億円となった。

 テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービス事業の売上収益が前年同期比2.6%減の3884億円、営業利益が同48.7%増の299億円。システムプラットフォーム事業の売上収益は同5.7%減の1327億円、営業利益は同93.4%減の5億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益が同3.8%減の873億円、ネットワークプロダクトが同9.3%減の454億円となった。また、海外リージョンの売上収益は同4.5%増の1851億円、営業利益は前年同期の22億円の黒字から、マイナス61億円の赤字となった。

テクノロジーソリューション事業の概況
ソリューション・サービスの概況
システムプラットフォームの概況

 テクノロジーソリューションにおけるFor Growthの売上収益は前年同期比2%減の2309億円となり、構成比は34%。For Stabilityは、前年並みの4513億円、構成比は66%となった。

 「ソリューション・サービスは、エンタープライズ向けが若干の増収となっており、受注の積み上がりも堅調である。システムプラットフォームは、前年度のアカデミア向けスパコンにおける大口商談の反動や、部材供給遅延の影響があったが、部品供給影響を除くと、システムプロダクト、ネットワークプロダクトともに増収になっている。海外リージョンは、為替変動がプラスに効いているが、英国を中心に公共セクターでの大口商談の終息時期が重なった。次の案件のスタートが控えているが、第1四半期は端境期となっている。欧州では第2四半期以降に、公共セクターでの大口商談案件が控えている」とした。

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比7.0%減の501億円、営業利益は前年同期の16億円から、マイナス31億円の赤字。デバイスソリューションは、売上収益は前年比28.5%増の1041億円、営業利益は同74.9%増の264億円となった。

 「ユビキタスソリューションは円安による調達コストの増加により減益となった。デバイスソリューションは、半導体パッケージへの強いデマンドが継続しており、好調に推移している」と説明した。

ユビキタスソリューション事業の概況

 2022年度第1四半期の国内の受注状況は、全体では6%増。そのうち、SI/サービスは7%増。また、分野別では、エンタープライズ(産業、流通)が前年同期比10%増、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同1%増、Japanリージョン(官公庁、ミッションクリティカルなど)が同14%増、富士通Japan(自治体、ヘルスケア、文教、中堅民需など)が同7%増、ネットワークが同26%減となっている。

 「DXや効率化に向けたデマンドが強くなっている。エンタープライズでは、製造、モビリティ向けの基幹システムの商談を獲得。ファイナンスは前年度の金融システム更改の反動があったが、保険での大口商談獲得があり、前年度の高い水準を上回ることができた。Japanリージョンは官公庁向け、スパコン商談、システム更新商談を獲得している。富士通Japanでは、自治体で、システム標準化に向けた動きが第1四半期から活発化しており、関連商談を獲得した。ヘルスケアでも延伸していたシステム更新商談を受注した。中堅民需においては、コロナ影響による停滞していた商談が復調し、大型商談を受注している。ネットワークは前年度の一括受注の反動もあり、低調なスタートになっている」とした。

 海外の受注状況は、Europeが前年同期比1%減(そのうちサービスが同5%増、プロダクトが同6%減)、Americasが同2%減、Asia Pacificが同17%減となっている。

受注の状況(国内)
受注の状況(海外)

2022年度通期の業績見通しは据え置き

 一方、2022年度通期の業績見通しは据え置き、売上収益は前年比3.7%増の3兆7200億円、営業利益は同82.5%増の4000億円、当期純利益は同53.3%増の2800億円。本業ベースの営業利益は3900億円を計画している。

 また、テクノロジーソリューションの売上収益が前年比4.7%増の3兆2000億円、営業利益は同144.4%増の3300億円、本業ベースでの営業利益は3200億円、営業利益率は10%を目指している。セグメント別業績見通しに変更はない。

連結業績の見通し

 2022年度は中期経営計画の最終年度となり、テクノロジーソリューション事業で営業利益率10%、売上収益で3兆2000億円を目指している。

 富士通の磯部CFOは、「2022年度は、年間で大きな利益拡大を計画している。いまは計画通りの進捗ではあるが、第1四半期は減益でのスタートとなった。減益スタートなので、勢いが弱いと感じるのも事実だろう」としながら、「もともと下期偏重の傾向があり、毎年冷や汗をかきながらやっている。しかも、2022年度は、受注拡大に対応した売り上げの拡大時期、部材供給問題への対応の進展といったことを考えると、例年にも増して、利益バランスが下期に偏重したプランになっている。計画通りにしっかりとビジネスを進め、リスクを極小化しながら、ゴールに向けて着実に数字を積み上げていく」と述べた。

 さらに、「今年度は、2020年度、2021年度にやってきたさまざまな取り組みの成果を、実績につなげる年に位置づけている。ひやひやしながらやっているところもあるが、受注や商談パイプラインが広い範囲で増えてきていることは安心材料である。これを継続し、受注獲得を一段増やすことも必要であり、同時に年度内に刈り取っていく必要がある。気を引き締めて進めなくてはならない」とした。

 また、「部材遅延は想定していたものであり、想定していた規模である。コストや費用の効率化効果も含めて、計画していた内容で進捗している。いくらできるといっても、最後の結果は数字である。これまで取り組んできた施策の効果を実現できれば、届く水準であると考えている」とし、2022年度に最終年度を迎える中期経営計画の目標達成に意欲をみせた。