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富士通の2021年度第1四半期連結業績、営業利益は約5割増の337億円
各セグメントやサブセグメントの採算性改善は着実に進行
2021年7月29日 21:00
富士通株式会社は29日、2021年度第1四半期(2021年4月~6月)連結業績を発表した。
それによると、売上収益が前年同期比0.1%減の8019億円、営業利益が同51.5%増の337億円、税引前利益が同52.6%増の395億円、当期純利益が同33.0%増の241億円となった。
富士通 取締役執行役員専務兼CFOの磯部武司氏は、「テクノロジーソリューションおよびデバイスソリューションは増収となったものの、ユビキタスソリューションは前年同期のテレワーク需要の反動、事業再編の影響などで減収となり、全体では前年並みの水準。営業利益は、すべてのセグメントで採算性の改善を進め、前年から大きく増益。成長に向けた投資は、計画通りに進捗している」とした。
また、「第1四半期の実績の進捗は計画プラスアルファであり、各セグメントやサブセグメントも採算性改善は着実に進んでいる。全体感としては力強い回復とはいえなかったが、2021年度は、大口商談が下期に集中し、特に第4四半期偏重の計画となっている。商談パイプラインとしても具体的な案件が出てきている。先行きの景況感には不透明なところもあるが、パイプラインをしっかりフォローして、ビジネスの拡大につなげたい」とした。2021年度下期以降は、デジタル庁創設をきっかけにした商談も増加しそうだ。
売上総利益率は30.7%となり、2.4ポイントの改善。ソリューション・サービスでは、アジャイル開発などのシステム開発のほか、デリバリー、サポート業務の変革が進んだのに加えて、システムプラットフォームでは、コストダウンに加えて、プロダクトミックスの影響により好転。デバイスソリューションにおいては、所要の増加による操業改善が進み、大きく好転したという。
その一方で、営業費用は2110億円と前年同期から119億円の増加。ジャパン・グローバルゲートウェイなどによるサービスビジネスの強化への投資、データドリブン経営を目指す社内DX投資、働き方改革への投資などが要因としている。
「生産性の向上に向けて徹底した標準化を進め、オフショア活用を拡大するジャパン・グローバルゲートウェイと、グローバルに通用するサービスを生み出し、ビジネス拡大を目指すグローバルオファリングの2つを中心に投資をしていく」と述べた。
セグメント別の業績
セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比0.5%増の6870億円、営業利益は同27.2%増の170億円、営業利益率は2.5%となった。
テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービス事業の売上収益が前年同期比1.1%増の3986億円、営業利益が同8.0%増の201億円。システムプラットフォーム事業の売上収益は同4.2%減の1408億円、営業利益は同60.3%増の79億円。そのうち、システムプロダクトが同16.9%減の907億円、ネットワークプロダクトが同32.8%増の500億円となった。また、海外リージョンの売上収益は同3.6%増の1772億円、営業利益は前年同期の37億円の赤字から、22億円の黒字に転換した。
「ソリューション・サービスは、金融やキャリア向けを中心に増収。システム開発やデリバリーの変革を進めることで、採算性は大きく改善した。また、サービスビジネス強化に向けた成長投資にアクセルを踏んでいる。システムプロダクトは、前年同期の富岳の出荷の反動があった。これを除くと増収。ネットワークプロダクトは5G基地局を中心に国内外ともに増収となった。海外リージョンは、事業再編の影響や、為替の増収効果を除くとほぼ前年並み。英国で採算性の高い大型商談を獲得できたことに加えて、ビジネスモデル変革の進展によって、低採算ビジネスが縮小した。北米のパイプラインが回復するなど、明るい兆しが出てきている」という。
なお、2021年度第1四半期のFor Growthの売上収益は前年同期比2%減の2177億円となり、構成比は32%。For Stabilityは、前年同期比2%増の4696億円、構成比は68%となった。
For Growthは、顧客の事業の変革と成長に貢献する事業領域として、DXやモダナイゼーションといったデジタルで構成。For Stabilityは、顧客のIT基盤の安定稼働への貢献と、品質向上に取り組む領域とし、システムの保守や運用、プロダクトの提供などの従来型ITで構成する。
「For Stabilityでは、前年同期がコロナの影響で低調であったが、事業継続に不可欠な投資にはしっかり回復傾向が出てきている。DXに対する商談パイプラインは出てきているが、本格的な立ち上がりはこれからと見ている」とした。
ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比25.9%減の538億円、営業利益は同53.7%減の16億円。デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比18.7%増の810億円、営業利益は同180.9%増の151億円となった。
なお、第1四半期の受注状況は、エンタープライズ(産業、流通)が前年比9%減(パソコンを除くと8%減)。ファイナンス&リテール(金融・小売)が9%増(同12%増)、JAPANリージョン(官公庁、社会基盤など)が10%減(同7%減)、富士通Japan(自治体、ヘルスケア、文教、中堅民需など)が7%減(同7%減)となっている。
「エンタープライズの回復感が弱い。業種ごとにまだら模様であるが、流通系が低調である。ファイナンス&リテールでは、第1四半期は金融系を中心にいくつかの大口案件を獲得した。金融系のDXへの積極的な投資が出てきたが、小売りは厳しい。Japanリージョンでは、官公庁が大きなマイナスとなり、キャリアが5G基地局を中心にプラスとなった。官公庁は大型プロジェクトの端境期にあり、下期偏重を想定している。これからである。富士通Japanは、ヘルスケア、中堅民需、文教はいずれも厳しい状況が継続している。コロナの影響を最も直接的に受けている領域である」とした。
2021通期の連結業績見通しは?
2021年度通期の業績見通しは据え置き、売上収益が前年比1.1%増の3兆6300億円、営業利益は同3.3%増の2750億円、当期純利益は同1.1%増の2050億円としている。
「不透明感がぬぐえない状況が続いているが、業績目標の確実な達成に向けて事業運営を進める。新型コロナウイルスよるマイナスインパクトも拡大はしていない。下期に向けて回復すると見ている」とした。
また、半導体不足の影響については、「サーバーや5G基地局などにおいては、調達上の影響はあるが、半導体メーカーとの交渉、代替品への切り替え、納期の調整、先に出せるハードウェアから出していくといったことにより、顧客への影響を最小化することに取り組んでいる。影響は抑え込めるという想定で進めている」と述べた。
なお、ProjectWEBに対する第三者からの不正アクセスにより、情報の一部が不正に窃取された件については、「迷惑をかけている関係者におわびしたい。影響を受けた関係者に対しては全力で支援をしたい」と陳謝。「徹底的な調査を進めているが、具体的な顧客名、利用プロジェクトの数は回答を控えたい。影響の範囲や原因については、セキュリティ事案の特性を理解してもらいたい」と明言を避けた。