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富士通、「富岳」の技術を適用したスパコンをクラウドサービスとして提供

高度なコンピューティング技術をクラウド型で提供するサービス群「CaaS」の第1弾

 富士通株式会社は6日、スーパーコンピュータ(HPC)や、量子インスパイアー(デジタルアニーラ)コンピューティング、AIなどの高度なコンピューティング技術をクラウド型で提供するサービス群「Fujitsu Computing as a Service(CaaS)」を発表した。

 第1弾として、富岳のテクノロジーを用いて開発されたスーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000」をクラウド型で提供する「FujitsuクラウドサービスHPC」を、4月6日より一般企業や団体向けに販売開始した。

 PRIMEHPC FX1000のコンピューティングのほか、HPCの導入で課題となるソフトウェアやライブラリを標準搭載。性能チューニングやアプリ分析のサポートサービスも提供する。

 Fujitsu CaaS全体は2022年10月より提供開始。HPCに加えて、デジタルアニーラやAIなどのサービスもワンサービスとしてシームレスに提供する予定という。

Fujitsu Computing as a Service(CaaS)の概要
FujitsuクラウドサービスHPCの概要

 4月6日に開催された記者説明会で、Fujitsu CaaSのビジョンとして、富士通の富士通のヴィヴェック・マハジャン氏(執行役員SEVP CTO)は「今後の世界はデータ中心になる。それを支えるコンピューティングとして、HPC、DA(デジタルアニーラ)、量子コンピューティングなどを使って、できるだけ早く課題を解決したい。しかしお客さまはそのための資産は持ちたくない。そこで、すべてクラウドの“as a Service”で提供し、最適なコンピューティングを自動的に判断する」と語った。

富士通の富士通のヴィヴェック・マハジャン氏(執行役員SEVP CTO、左)と高橋美波氏(執行役員EVP、右)

富岳の技術をオンデマンドで提供、プロフェッショナルサポートも

 FujitsuクラウドサービスHPCの特長として、富士通の高橋美波氏(執行役員EVP)は、「富岳のテクノロジーによる高速処理」「オンデマンドHPCサービス」「プロフェッショナルサポート」の3つを挙げた。

 「富岳のテクノロジーによる高速処理」としては、富岳の技術による高速処理を誰でも利用できると説明。また互換性のある環境として、富岳で実績のあるアプリケーションや、将来的に富岳を利用するアプリケーションの実行環境になると語った。

 「オンデマンドHPCサービス」としては、HPCのジョブ実行に必要な環境をすべて、サービスに申し込むだけで、初期投資なしでオンデマンドに利用できると説明した。発表においては、必要最小限の構成で月額10万円からという数字が挙げられており、これについては、HPCバジェットの最小額5万円に、ストレージやログインノードなどを最小限とした構成時の試算ということだった。

 「プロフェッショナルサポート」としては、HPCの専門知識を持たない顧客も使えるよう、大規模HPCの知見を持つ技術者が、HPCの性能を最大化するためのチューニングを支援すると説明した。

特長① 「富岳」のテクノロジーによる高速処理
特長② オンデマンドHPCサービス
特長③ プロフェッショナルサポート

HPC・DA・AIを組み合わせて創薬などに活用

 Fujitsu CaaS全体としては、HPCクラウドのほか、DA(デジタルアニーラ)クラウドやAIクラウドを内部に用意し、目的に合った技術を利用できるようにする。コンサルティングサービスやチューニングサービス、API基盤なども用意し、金融、製造、物流、創薬、防災など幅広い分野への適用を狙う。

 ロードマップとしては、4月にFujitsu CaaSを発表して、FujitsuクラウドサービスHPCを開始。10月にFujitsu CaaSの国内提供を開始する。以後は、ソフトウェアやサービスの順次拡充や、グローバルへの展開、量子コンピューティングの提供を予定している。

Fujitsu CaaSのロードマップ

 高橋氏はFujitsu CaaSのユースケースとして、創薬の例を挙げた。新型コロナ感染症治療薬に特化した合弁会社、ペプチエイド株式会社を2020年11月に設立。不可能であった中分子創薬の計算を高精度で実現するという。Fujitsu CaaSを活用したプロセスとしては、「DAによる粗い絞り込みや、HPCによる精細な構造計算、AIによる、欲しい構造からの材料の算出などを組み合わせてアウトプットを出していく」と高橋氏は説明した。

創薬の事例