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GMO学術サポート&テクノロジー、「富岳」で開発した脳MRI解析環境を「Fujitsu CaaS」上で提供

 GMO学術サポート&テクノロジー株式会社は12日、富士通株式会社のクラウドサービス群「Fujitsu Computing as a Service(以下、CaaS)」上で、スーパーコンピューター「富岳」の研究成果を実用化するサービスを、3月1日に提供開始したと発表した。

 サービスでは、GMO学術サポート&テクノロジーが富岳で研究開発したソフトやデータをCaaS上に実装し、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を活用した膨大な脳MRIデータの解析環境を、研究者に対して提供する。

 近年、MRIで得られた脳画像ビッグデータの解析と臨床応用を推進する研究プロジェクトが世界各国や国際共同研究で進められており、文部科学省は2024年3月から研究期間6年をかけて認知症治療薬などの開発に取り組む「脳神経科学統合プログラム」を創設した。

 このプログラムを通じて、病態の予測を行えるデジタル空間上の脳モデルの開発や、研究基盤としての「デジタル脳」の整備などが期待されているが、MRIで取得された生データ(磁気共鳴信号)を、さまざまな解析目的に合わせた画像データに変換するには膨大な前処理解析が必要で、これが大規模解析のネックになっているという。

 こうした中、AIやビッグデータを用いた医療分野の研究開発支援や、富岳などのHPCを用いた医療ビッグデータの大規模解析に関する研究開発に取り組んできたGMO学術サポート&テクノロジーが、富士通のパートナープログラム「Fujitsu Accelerator Program for CaaS」に参画し、両社の持つ技術を組み合わせたサービス提供の実現に至った。

 GMO学術サポート&テクノロジーは、研究者が容易かつ高速に脳MRI解析AIの開発を行うために、前処理を事前に施したオープンデータならびにクローズドデータに前処理を施す解析環境を提供する。

 前処理機能は、解析目的に合わせて、動きや歪みの補正、ノイズ低減などの加工を行うもので、従来2年かかるとされていた数千人の患者の脳MRIのデータ処理時間を2日間に短縮した富岳の研究成果を活用。サービスの利用者はCaaS上で富岳と同様に現実的な時間でデータ処理を完了でき、その後のAI開発にスムーズに着手できる。

 この取り組みは、富岳で研究開発したソフトウェアやデータをCaaS上に実装し、サービス利用者に提供する初事例になるという。従来は富岳の成果をサービスとして提供する環境がなかったため、富岳の成果が社会実装されるまでには多くの期間や工数を必要としていたが、CaaSは富岳と同じCPU「A64FX」を採用しているため、富岳で利用していたソフトウェアやデータをそのまま利用できるとしている。

 今回提供開始した脳MRIデータの前処理については、事前に前処理済みのデータや利用環境を整備した上で提供するため、利用者はGMO学術サポート&テクノロジーがCaaS上に構築する解析環境にアクセスすれば、即座に利用できる。

 サービスは、2023年10月から2024年2月に国立研究開発法人理化学研究所の生命機能科学研究センター脳コネクトミクスイメージングチームによる実証実験でも利用され、今後、脳MRIを用いた精神神経疾患の自動診断の実現などに貢献することが期待されているという。

 両社は今後、それぞれが持つ専門的な技術力を組み合わせることで、誰もが高度なコンピューティング技術やその上で動作するソフトウェアを活用でき、研究成果が迅速に還元される社会の実現を目指すとしている。

「CaaS」を基盤とした「富岳」の成果、脳MRI解析環境の社会還元イメージ