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エンタープライズiPaaSを提供する米Workatoが日本法人を設立、ノーコードでアプリをつないでワークフローを自動化

 エンタープライズオートメーションの米Workato(ワーカート)は18日、日本法人のWorkato株式会社を設立したことを発表した。

 Workatoは、SaaSやオンプレミスなどのアプリケーションを連携させて自動化する、iPaaS(Integration Platform as a Service)の一種。Workato自身もクラウドで提供される。国内でも、すでにNECネッツエスアイや日立ソリューションズなどが販売代理店となっている。

 Workato株式会社の登記は9月。組織が固まったことと、米WorkatoがシリーズEの資金調達(11月)によりグローバル展開を加速することから、今回の発表になったという。

 カントリーマネージャーには中川誠一氏が就任した。Workatoの日本事業を2018年に立ち上げた鈴木浩之氏が、オートメーションエバンジェリストとなる。また、元UiPathの桐生孝憲氏がVP of Salesに就く。

Workato株式会社のリーダーシップメンバー
Workato株式会社 カントリーマネージャー 中川誠一氏
Workato株式会社 ジャパンファウンダー/オートメーションエバンジェリスト 鈴木浩之氏
Workato株式会社 VP of Sales 桐生孝憲氏

日本語化や日本のデータセンターの開設を予定

 11月18日にオンラインで開かれた記者発表では、Workatoの共同創業者者兼CEOのVijay Tella氏がWorkatoについて説明した。

 Tella氏によると、Workatoの顧客数は1万1000社を超え、著名な企業もさまざまな業種で採用しているという。日本でも、LIXILや横河電機、DeNA、メルカリなどが利用していると氏は紹介した。

Workato 共同創業者者兼CEO Vijay Tella氏
Workatoの顧客などの実績

 Workatoは11月に2億ドルのシリーズEの資金調達をして57億ドルの評価となった。「この資金を活用してさらにお客さまの成長に貢献したい。グローバル展開を加速したい」とTella氏は語った。

 その中で日本に投資する理由としてTella氏は、日本は品質管理や信頼性がコアバリューであり、エンタープライズソフトウェアの世界でもその価値が重要であることと、RPAなどオートメーションの導入が進んだ市場の1つであることを挙げた。

 「日本の顧客ベースは順調に伸びている。このタイミングこそ日本に大きく投資すべきであると考えた」とTella氏。今回の日本法人設立により、3年間で1億ドルを日本に投資すると語った。

 日本戦略については、日本のカントリーマネージャーの中川氏が説明し、以下の内容を掲げた。

・1億ドルの投資
・Workatoの製品、技術ドキュメント、Webサイトの日本語化(2022年春予定)
・日本のデータセンターの開設(2022年秋予定)、ISMAP認証の取得
・日本をサポートするメンバーを100人体制に
・パートナーエコシステムを拡大
・マーケティング活動をより強化

日本市場戦略

インテグレーションとオートメーションを1つに

 Workatoが必要な背景となる課題としてTella氏は、現在企業がさまざまなSaaSのアプリケーションを利用しており、ワークフローやデータがアプリケーションごとに分散していることを挙げた。そして、「Workatoはこうしたアプリケーションを統合して、ワークフローを1つのプラットフォームに統合し自動化する」と語った。

 こうした自動化のソリューションとして、これまで大きく分けて、iPaaSなどのインテグレーションツールと、RPAなどのオートメーションツールの2種類があるとTella氏は言う。

 インテグレーションツールはIT部門の人が使うもの、RPAはビジネス部門の人がUIを自動化するものとなっている。Tella氏は、DXにおいては、課題を理解しているビジネス部門と、セキュリティやパフォーマンスなどを理解したIT部門が共通で使えるプラットフォームが必要だという。

 これに対して「Workatoはインテグレーションとオートメーションを1つのプラットフォームにまとめ、誰でも使えるようにしたもの」とTella氏は説明した。

 基礎はインテグレーションプラットフォームのiPaaSであり、クラウドアプリケーションからオンプレミスまでつなげることができる。この基盤の上でオートメーションの機能も備える。これをノーコード/ローコードで自動化できるため、ビジネス部門とIT部門の両方に使いやすいとTella氏は主張した。

インテグレーションツールとオートメーションツール
Workatoはインテグレーションツールの上にオートメーションツールがある

 中川氏も同様に、Workatoを“インテグレーションとオートメーションの統合”として説明した。

 従来の方法では、いくつものアプリケーションを企業の中でワークフローとしてつなげる場合、例えばiPaaSによってアプリケーションを1つ1つつなげていくことになる。そしてデータを加工して統合するのにETLが、APIを利用するためにIT部門や外注によるアプリケーション開発が、従業員が利用するPCの中の自動化ではRPAが、ビジネスプロセスを管理するのにBPMが、チャットに情報を返すのにチャットボットが使われる。こうして多くの製品・サービスを利用する結果、スパゲティ化してしまうと中川氏は言う。

 これは部分最適化の結果であり、DXの大規模の変革には、部署などの部分最適よりも、会社全体などの全体最適が必要だと中川氏は語った。

社内でさまざまなアプリケーション連携がスパゲティ化

エコシステムによりレシピやコネクターを共有

 鈴木氏は、同じくビジネス部門が使う自動化ツールとして、RPAとWorkatoの違いから説明した。RPAは個人がPCの画面上で行う操作を代行するツールといえる。それに対してWorkatoは、API主導のインテグレーションによりmエンドツーエンドのプロセスを短縮する、付加価値創出の道具だと氏は言う。

 「例えばSalesforceはたくさんのAPIを持っているのに、それを知らずにRPAを使って自動化している、ということもよくある」(鈴木氏)

 Workatoでは、鈴木氏いわく「Scratchのように」直感的にブロックを並べてワークフローを定義した「レシピ」を作る。これにより、コーディング開発に比べて10倍、従来のiPaaSに比べても生産性が5倍で、TCOは従来のiPaaSの1/3だと氏は主張した。

 これを実現しているのがWorkatoエコシステムだ。50万以上の公開レシピがあり、無償で利用できる。また、アプリケーションとWorkatoをつなぐ接続部品となるコネクターも、1000以上のものが公開されている。コネクターを開発するためのSDKも提供している。

 コネクターで対応するアプリケーションは、SaaSからオンプレミスまで、APIが提供されているもの。日本のアプリケーションでは、SansanやCloudSign、Chatwork、サイボウズGaroon、freeeなど、さまざまなコネクターがある。

 また、日本市場での代理店パートナー7社を紹介。これらのパートナー自身もWorkatoを活用しており、NECネッツエスアイでは社内で300以上のレシピがあると紹介した。

RPAとWorkatoの違い
Workatoのレシピ
Workatoのエコシステム
日本のアプリケーションの実績
日本の販売代理店パートナー